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131章 皇帝陛下の真意

さすがは、帝国の首都。規模が圧倒的だ。人の手で、これほどの高くて長い壁を作るのだから、相当な財源を確保しているのだろう。壁の外にいるというのに、人が下にも、上にも、移動して、交流が続けられている。


本当なら帝国をまわって見学をしてみたいところだけれど、帝国皇帝陛下の一言で、俺もレジェンドの運命も変わって来るのだから、想定できることは、みんなに聞いておきたい。


源は、ミカエルを通じて、遠距離からの通信を主要メンバーに試みた。


「セルフィだけど、みんな聞こえるかな?」


ボルア・ニールセンが、大きな声で、返答をしてきた。


「セルフィ様!大丈夫でしょうか!!」


「うわ!!ちょっとちょっと!声でかすぎ!その声で耳がどうにかなっちゃいそうだよ・・・今、帝国まで、転移石というもので、移動してきたんだけど、帝国の首都の壁の外で、ひとりで待機している状態だね。だから、今のところ、無事だよ」


「そうですか。安心しました」


「わたし、リリスだけど、何?帝国にいるの??」


「うん。いきなり、サムエル・ダニョル・クライシスが、レジェンドに来てね・・・。皇帝陛下が、お忍びで、俺に話があるといって連れてかれちゃった」


「連れてかれちゃったって・・・無理やり??」


「うーん。こっちは、断れるわけもないから無理やりとも言えるけど、今のところ武力は行使されてはいないね。ボルアが、少し首を掴まれてはいたか・・・」


「わたしは大丈夫です。セルフィ様」


「ああ。うん。でも、あんな化け物相手に、無茶しないほうがいいよ?俺のためにありがとう」


すると、リタが、話しに入って来た。


「皇帝陛下は、隠れて、セルフィに会いに来たと言ってたけど、どんな話をされるのか、心当たりはあるの?」


「そうなんですよ。リタさん。皆さんに、それを予測してほしいなと今通信で呼びかけてるんです。何を目的にしていると思いますか?」


「「「うーん・・・」」」とみんなは、考え込んでいるようだった。その声などを聞いて、主要メンバーには、長距離通信は、しっかりとつながっているんだなと思った。


「やはり、賠償請求ではないでしょうか?セルフィ様」


司祭様が、戦争を終えた相手に対して、要求してくるとすれば、そういうものだろうと考え、述べてくれた。


「でも、司祭様。それをお忍びで、要求するものでしょうか?帝国なら、堂々と、請求してきてもおかしくないとわたしは思うんですけど・・・」


「そうですのぉー。賠償請求ではないということですか」


「リタだけど、セルフィの立場、レジェンドの今の立場は、帝国騎士たちを大勢手にかけて、追い返した敵という認識でいいのよね?」


源は、それを聞いて、落ち込んだように、答える。

「そうですよね・・・。帝国からすれば、ゆるせない相手ですよね・・・」


「いや、それはどうかは、分かりませんぞ。セルフィ様」


「え!?どうしてですか?司祭様」


「わたしは、帝国連合軍との戦いをレジェンドの壁の上からずっと見ておりました

セルフィ様が死ぬ時は、わたしも一緒だと危険を承知で、全体を見渡していたのですじゃ

そして、セルフィ様が、あのサムエル・ダニョル・クライシスと戦いはじめると、そのマントの中から羽があらわになりました。その時の帝国騎士やあそこにいた多くの者たちが、「天使だ!」といって叫んでいたのを見たのですじゃ

帝国では、天使は、伝説の存在で、龍王が残した予言のことを知らぬ者などおりません。であるのなら、セルフィ様が天使であれば、帝国の民たち、兵士たちは、むしろ、セルフィ様に義があると考える者も少なからずおるはずですじゃ」


「えっと・・・あれだけ帝国兵士を倒した俺に対しても、恨みではなく、正当性がこちらにあるなんて、思うものでしょうか?」


「では、セルフィ様は、神様がレジェンドの民を罰したとすると、神様が悪いと考えられますかの?」


「罰したのが、あきらかに神様であるなら、確かに、こちらが悪いと考えますね・・・」


「そういうことですじゃ。龍王を失い1000年経った今では、龍王の予言の天使は、神様のような存在にみえる者もいるでしょう。であるのなら、自分たちが、悪いと自国を疑う者も出てくる。まともな者ほど、色々な観方、立場で考えるものですじゃ」


「もし、司祭様の言うように、レジェンドへの恩情のような考え方があったとしたら、確かに、皇帝陛下は、わたしたちの待遇には、気を使っていてもおかしくありませんね。そして、表で大っぴらに、宣言する前に、お忍びでまずは、わたしと話しをしたいと思うかもしれませんね」


「そうですじゃろ」


「さすがは、司祭様です。その可能性ありますね。そうであるなら、意外と対等な立場のまま、平和裏に、帝国との付き合いをしていけるかもしれませんね」


「そうかもしれませんのー」


「まーそれは、良い流れとしての予想ですが、悪い流れ、悪いことで、お忍びで、何か考えられませんか?最低を想定して、謁見に臨みたいんです」


「「「うーん」」」と、またみんなは、考えだした。


「隠れて、話すとしたら、脅しじゃないのか?」


ロックが、めずらしく意見する。


「脅しというと?」


「だから、ホラ。あれだよ。表だって脅すのは、はずかしいからさ。裏で脅せみたいなものかな」


「なんか、いじめっ子みたいな考え方だな。でも、それあるかもね。俺はジャイアンだ。言うこと聞いとけ!みたいな?」


「ん?ジャイアン?」


「あー。えーっと、帝国の皇帝陛下であるぞ。俺の言うことを聞けば、少し罪を軽くしてやるぞ?というようなことだろ?」


「まー。そうだな。そんなところだ」


「そんな風に、脅されたら、ロックならどう返答する?」


「ふざけるな!俺と一騎打ちだ!と戦う」


「皇帝陛下が自ら戦ってくれないけどね・・・戦うのは、サムエルさんになりますよ。ロックさん・・・」


「他の皆さんなら、どう返答しますか?」


「従うしかないかもしれませんね。ですが、戦っていた時よりは、あきらかに条件はいいはずですよ」


ボルア・ニールセンが、答えた。


「条件がいいっていうのは、どういうこと?」


「わたしたちが、帝国連合軍と戦った場所は、わたしたちの土地でした

帝国は、条件をレジェンドが呑まなければ、レジェンドの村人の命を奪ったかもしれません。略奪もあったことでしょう

レジェンドもそうですし、ボルフ王国の貧民地の民たちの命も失われたでしょう

ですが、帝国軍は、もう居ません。どんな条件を出されたとしても、民を処刑しろなんて、条件を出すでしょうか

普通は出しません。条件を出してきたとしても、多額の賠償請求が来るぐらいではないでしょうか」


「なるほどね。あの時と比べたら、そんなのどうでもいいとさえ、思るね。ボルアの言う通りだ」


「はい。それに、例え、多額の賠償金を要求されたとしても、そんなものは、わたしたちには、関係ないと思いませんか?」


「どういうこと?」


「レジェンドには、ミカエルがいるんですよ?セルフィ様。あのミカエルは、宝の山です。世界を変える魔法の箱ではありませんか」


「確かに・・・・賠償金もすぐに返せそうだ・・・」


「むしろ、賠償請求が来たら、喜んでOKしたいぐらいで、もし、帝国が、レジェンドのすべての権利、ミカエルのすべてを望んできたとしたら、それこそ、問題です」


「それは、絶対に、許可できないね。ミカエルを悪用され兼ねない。レジェンドを守るために、制作したのに、逆にレジェンドを追い詰めることに使われる可能性が出てくるからね。もし、そんなことになるのなら、ミカエルは、破壊するしかなくなるね」


「はい。その通りですね。ミカエルのような常軌を逸したものを利用するのは、クリスチャンでなければ、世の中が終わってしまいます

今のレジェンドにとって、最悪なのは、それかもしれませんね。また、戦争だと言われるほうが、マシかもしれません。戦争をすると攻めて来られるのなら、レジェンドは次こそは、違う土地に移動すればいいんですからね」


「いない敵とは、戦えないからね。確かに、ミカエルがいれば、レジェンドは、どこにでも生きていける。新しい土地も、開拓しては、畑もすぐに作れると思うよ」


「ですが、レジェンドは移動できても、その時は、ウオウルフたちとは、別れることになるのではないのですかの?」


「・・・。そうだったね・・・。司祭様の言う通りだ・・・ウオウルフは、残る可能性あるね・・・。そうしたら、ウオウルフを人質にされ兼ねない・・・」


平然とした声で、リタが応える。


「帝国は、そんなことしないんじゃないかしら?」


「どうしてですか?リタさん」


「一度、レジェンドは、その土地を離れたでしょ。その時も、ウオウルフは、土地を離れずシンダラード森林にいたのよ。戦争でもウオウルフは大活躍してたわけだし、もし、帝国がウオウルフを人質にするのなら、もうやっていてもいいんじゃないかしら」


「確かにそうですね。リタさんの仰る通り。さっきサムエル・ダニョル・クライシスが言っていました。数カ月前からレジェンドが消えたことは知っていたと」


「それらの情報を総合すると、帝国側は、レジェンドに対して、悪い条件は、出さない可能性が高いのかもしれないわね」


「だと、良いんですけどね・・・」


「セルフィ。これだけは覚えておいて、もし、あなたが、これから皇帝陛下と謁見したことで、大変なことが起こったとしも、あなたは、わたしたちの英雄であり、わたしたちを何度も救ってくれた人よ。あなたの決断によってどうなったとしても、わたしたちは、喜んでそれを受け入れるわ」


「わたしもよ。セルフィ!」


リリスも、他のみんなも、リタの意見に賛同してくれた。


なんだか、源は、本当に心から信頼できる家族に励まされたような気になって、心の奥から感動が溢れてきた。


「みなさん・・・ありがとうございます。物凄く勇気が出ました。ですが、僕なりに、最良の条件になるように、力を尽くして臨みます。もし、分からないことや困ったことがったら、この通信で質問します

皇帝陛下との謁見の内容は、みなさんに聞こえるようにしておきますから、聞いててください。その話の内容の中で、いいアイディアが浮かんだら、伝えてくれると助かります。謁見中は、こちらからは返答はできませんけどね。その時になったら、また通信で連絡します。ありがとうございました」


みんなは、それに賛同してくれた。帝国側は、まさかこれだけ離れた距離から大勢に聞かれているとは思わないだろう。俺ひとりとの謁見だと思いきや、実は、主要メンバーも一緒に、謁見しているとは思わず、条件を出してくるのだろう。もちろん、録音もさせてもらいますよ。日本やアメリカの法律だと録音しますと許可を得なければいけないが、録音そのものがこの世界にはありませんから。


最悪のケースのうちのひとつは、謁見の内容次第で、サムエル・ダニョル・クライシスと戦わなければいけない事態になることだ。その時のために、源は、ミカエルのソースを5つで1つのグループとしてわけて、なるべく多くの場所に移動させておくことにした。約1.7万グループだ。


源が使える移動スキルは、2つで、瞬間移動とリトシスによる空間移動だ。


そのどちらも、一度は行ったことがあり、その土地の状況を把握していないと、そこには飛べない。しかし、例外がある。それは、ミカエルの存在だ。ミカエルのソースを移動させて、向かわせれば、その場所の情報が手に入る。その土地の状況や情報が十分手に入れば、例え、自分がいったことのないところにも、瞬間移動や空間移動が可能なのだ。


そして、瞬時に、移動したいのなら、ソースが5つほど必要。それは、1つだと情報を得る速度が落ちるからだ。5つもソースがあれば、自分がいるぐらいの情報を手に入れることができる。


特に瞬間移動が、問題だ。空間移動、時空空間ゲートは、空間に窓のような穴を開けることで、向こう側の様子をうかがいながら、移動できるが、瞬間移動は、窓さえもなく、瞬時に、違う場所へと移動してしまう

これは、便利なようだけど、実は、とても危険。

飛んだ先に、何かがあれば、その何かと自分が一瞬で同化してしまうことになる。岩があれば、岩と体が同化して、死んでしまうわけだ。人がいてもいけないし、動物やモンスターがいてもいけない。たまたま、誰かが石を投げたところに、瞬間移動したら、体の内部にその石が入り込んで、同化してしまうということにも成り兼ねない。だから、瞬間移動は、自分がみえる範囲だけしか、本来は使えないということだ。イグシオンもそうしていた。


それをミカエルが先にその場所にいてくれれば、使えるようになる。サムエル・ダニョル・クライシスが目の前にいて、窓をあけて、空間移動をさせてもらえる時間など、あるわけがないので、使うとしたら瞬間移動になる。

前回、戦った時は、空間移動をはじめて見せたから通用したが、次は、通用しないだろう。瞬間移動を使い逃げるためにも、今から、ミカエルを帝国の外に移動させておく必要があるというわけだ。


ミカエルの4体のうち、1体のソースをバラして、各自、散開してもらった。


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