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123章 印

マーレ・ソーシャスが行った不可思議な行為によって体の内側から痛みを感じたが、それと同時に、力がみなぎることもスミスは、感じていた。


何かを打たれた後、床に倒れ込んだが、体全体がしびれて、触った箇所は、さらに痺れが増したので、無暗に動くこともできないジレンマの中、ただ耐えることしかできなかった。


その状態が、数分間、続いたと同時に、痺れは血液が全身にまわりきったあとのように、消え去った。


しかし、体からほとばしる力のようなものは、止まることなく増大し続けていることも感じた。


その力が何なのかは、まったく分からなかったが、もっと分からなかったのは、先ほどのモンスターからのダメージがすべて消え去っていたことで、朦朧もうろうとしていた意識は、正常に戻るどころか、鋭さを増して、世界を感じることが出来るようになっていた。


マーレ・ソーシャスの姿は、すでに無くなっていた。


スミスは、胸元の服を広げて、自分の胸をみると、大きな丸くて黒い刻印が付けられていることに気づいた。


「これは・・・」


すぐに、スミスは、外に意識が向いた。少し離れた場所の屋外に、あの奇妙なモンスターたちの気配を感じ取ったからだ。9匹のモンスターが、未だに広場で、動き回っていることをなぜか認識できていた。


ソロ・・・お母様・・・メリンダ・・・


外に出て、広場の方角へと移動をはじめるが、自分の動きが速いことに驚く。


なんだ・・・これ・・・


普通の状態の2倍、もしくは3倍の速さで動けていて、体が軽いというよりは、何か乗り物に乗っているような感覚を味わう。


スミスは、ソロたちが心配だったのか、それとも力がみなぎっていたからか、水気ウォーターで全身を包むことをせずに近づいてしまっていた。


しかし、モンスターたちは、スミスをすぐには、認識することが出来なかった。


護衛の騎士の死体を一匹のモンスターが、殴り続けていた。


スミスは、腰に装備していた剣を抜き取り、ジャンプをすると、4mはあるかというモンスターの頭から下まで、一撃で、切裂いた。


ズドンッという音と共に、他のモンスターも振り向くが、モンスターが、こちらを認識する前に、スミスは、もう一匹の体を横から胸一線で、斬りつけた。


スミスの剣は、モンスターの血すらついていないほど、鋭く早かった。


異変を察知したモンスターは、素早く動く何かを匂いや音で把握しようとするが、その生き物がハヤブサのように早すぎて、追いきれない。なんとか、匂いが残った線上に向けて、拳を振り回すが、空ぶりに終わる。


スミスは、翻弄されるモンスターたちの後ろを簡単に取って、強靭で巨大な体を持つモンスターの体を切裂いていった。


この力の使い方になれていないせいか、息をきらしながら立ち止まると、広場の端から歩いてくる人に気づいた。


「はぁ・・・はぁ・・・お母様!・・・無事・・・だったのですね!?」


「スミス・・・わたしの息子スミス・・・」


ルイーズは、手を前に伸ばしてゆっくりとスミスの方へと歩いて来ていた。


スミスの動きが止まったところをモンスターが逃すはずもなく、後ろから分厚い腕を振りかぶる。


スミスは、その腕を左手で掴み、静止させた。


太い木を簡単に薙ぎ払うモンスターの攻撃を左腕一本で止められたことに、スミス本人も驚く。

それよりも、まだまだ、体からパワーが噴き出してくるようで、むしろ、暴走してしまうのではないかと思えるほどだった。


なんだろう・・・この能力は・・・マーレ様から、こんな能力を与えられるなんて・・・


胸の刻印などをみると魔法による身体強化を超えた術式かもしれないとスミスは、思った。



「ギャー」という声が鳴り響いた。


ルイーズが、地面に倒れ、苦しみ悶えはじめた。


何が起こっているのか分からないが、無防備にモンスターの近くで倒れ込んでしまっている母にモンスターが、手を出さないわけがないと心配したが、モンスターたちは、スミスの方へと向かってきた。


母の様子を横目で見ながら、襲い掛かって来るモンスターを次々と切り払っていく。


母ルイーズの体が、膨張しはじめた。


「だ・・・だすげて・・・」


ボキボキボキという骨が折れているような鈍い音をたてながら、ルイーズは、腕や足、体が膨張して、着ていた服も破れた。


何が起こっているのか、まったく分からないが、スミスを襲うモンスターを倒して、ルイーズの下へとすぐに駆け寄ったが、母の姿は、もうすでになく、その姿は、まさしく、目のない奇妙なモンスターのものだった。


広場の奥で、リューイを羽交い絞めにした最後のモンスターの一匹が、リューイの首元に、口らしきものを吸いつけているをスミスは、見た。


瀕死のリューイは、なすすべもなく、モンスターに吸われているのか、何かを注入されているのか、攻撃されていた。


「人・・・・だったのか・・・?」


あの奇妙なみたこともないモンスターは、人が変わったもので、あの200匹は、ここの村人!?


スミスは、すぐに、リューイを捕まえているモンスターに走り寄り、リューイを傷つけないように、モンスターの首だけを斬り落とした。


そのままモンスターは、リューイを抱えたまま地面に倒れた。


そして、リューイの首に吸いついているようなモンスターの顔を取り除くが、リューイの首からは血も吹き出てはなく、特に目立った外傷がなかった。


しかし、数分絶つと、リューイの体は、動きだし、バキバキバキという骨が変形するような音をたてながら、ルイーズのように体が膨張しはじめた。


その間にも、化け物となったルイーズが、動きだして、スミスに敵意を向けて、ゆっくりと近づいてきた。


「はぁ・・・はぁ・・・お母様・・・わたしが分からないのですか・・・・?わたしです。スミスです!」


しかし、他のモンスターとまったく変わらない体と行動のまま、スミスに攻撃していた。


どうすればいい・・・?人からモンスターになったのなら、また人にも戻せるのではないのか?


ルイーズの攻撃をスミスは、躱すことは簡単だったが、攻撃をしかけられないで、どうすればいいのか、思い悩んだ。そうしている間にも、リューイまでも、モンスターへと変貌しはじめていた。


マーレ様なら、僕にこの力を与えられたマーレ様なら何か解決できる方法を知っているかもしれない・・・


スミスは、村の納屋を見つけ、そこから、鉄輪をふたつ手に取り、水気ウォーターを全身に施して、匂いのカモフラージュをしてから、近づき、モンスターとなってしまったルイーズの足に、その鉄輪を付けた。


その後、これから変貌するだろうリューイにも、同じように、鉄輪を足に付けた。


見た目はほぼ、変わらないモンスターだけに、どれがルイーズで、どれがリューイなのか、後からでも分かるように目印として、付けて、その場を離れた。


スミスには、ふたりに手を出すことは、出来なかった。


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