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113章 英雄たちの台頭2

なんだろう・・・この能力は・・・マーレ様から、こんな能力を与えられるなんて・・・




―――2000年前、世界は乱世が広がっていた。ドラゴネル帝国が設立するまで世界は境もなく広い地域に様々な思想を繰り広げて、私利私欲が乱立して争いが続いていた。

小国が大量にそれぞれの主義主張を唱えていたのだ。その中に、国の貿易、経済という大義を持ちだしたのが、大魔法使いエジプタスだった。

様々な主義主張はありながらも、利益という共通点によって争いを防いだ。しかし、それですべてが解決したわけではなかった。小国から400ほどの国にまとめ上げ、経済圏でまとめあげたが、それぞれの国の争いは絶えず、戦争は続いていた。その1000年後、偉大な王であった龍王ヒデキアは、ドラゴネル王国という国を作り上げた。それまでの常識を覆し、あらゆる国々を従えて、ドラゴネル王国は、帝国へと力を付けていった。


龍王には、莫大な富が帝国が設立される前からあったという。その膨大な富を背景に、あらゆる生き物が多様な形態で、生活できる経済圏を確立し、どの国よりも栄えた。

大勢の人々が、ドラゴネルの領土へと集まりはじめ、そのドラゴネルを襲ってくる国などと戦いながら、その勢力はおのずと拡大していったのだ。

龍王の力は、絶大だったが、龍王の凄さは、政治力にもあったと言われている。

経済もさることながら、あらゆる情報をすべての民に与え続ける龍王に、多くの知識人たちが、ドラゴネル領土に集まり、文化を広げていった。


龍王ヒデキアが即位していたドラゴネル帝国では、各国の力を削ぐことさえしなかった。それほどに龍王が強すぎた。どれだけお金や武器を持って反乱を起こしたとしても、龍王の圧倒的な力の前では、無力だったからだ。

龍王が不在だったとしても、龍王の従う戦士たちの強さも、群を抜いていた。龍王には、10人の戦士長たちがその背後にいて、武力・知力・戦略・戦術・政治などあらゆる分野を受け持っていた。ケイト・ピューマ・モーゼスも戦士長のうちのひとりだった。


恐ろしいほどの世界が混沌と存在していた時代に、1つの基準を権力によって世界にもたらしたのが、龍王ヒデキアだったのだ。

奪う必要もないので、奪おうとはしないドラゴネル帝国は、世界中の国から指示され、共に発展を続け、あらゆる偉業を世に残したが、龍王は、ある時を境にして、龍王の意思を託して、姿を消してしまう。


戦士長たちがいたことで、ドラゴネル帝国は、維持することが出来ていたが、絶対的な王であった龍王がいなくなると、少しずつ帝国も腐敗していき、戦士長たちも、それぞれ国を持ったり、帝国に留まることをしなくなると、他国の力を削ぎ落す帝国へと変わっていった。


多額の請求をしてくる帝国に、逆らい始める国も現れ、反乱が起きるたびに、大きな戦が起こってはそれを圧倒的な兵力で抑え込んできた。


必要以上に、他国から富を奪い続ける帝国は、途方もない国家財産を持って潤っているようにみえるが、反乱は増えるばかりで、戦いのない帝国の時代はないとさえ言われ、国家財産も維持費だけで実のところ一杯一杯だった。


しかし、それらの反乱分子を恐れるあまり悪を生み出し、悪環境のサイクルがぐるぐるとまわるものにも、原因があった。


それは、遥か昔からいて、エジプタスの時代に形となり、ドラゴネル帝国も例外ではなく、彼らの手によって悪のサイクルとなったとも言える。


原因である彼らの力は、帝国だけではなく、ドラゴネル帝国から西5000km離れた場所にあったトリアティ師団国にも、それ以外の世界中の国々にも及んでいた。


1万km×2万kmという広大な土地であるドラゴネル帝国領は、長方形の四角い領土になっていたが、その領土の中心にあったのは、巨大な森林シャウアであった。


そのシャウア森林の南2000km付近に、人間至上主義のワグワナ法国が存在していた。その1000km南下には、巨大河のルミール河が横に流れ、そのルミール河のさらに1000km南下に、トリアティ師団国が設立されていた。


トリアティ師団国を治めていたのは、獣人族のゴルバフ・ダレーシアという女王だった。


トリアティ師団国は、代々獣人族の女王が国を治めていた。それは大魔法使いだったエジプタスの力によって助けられた獣人族がいつしか国になり、エジプタスが女神の象徴として、祭られていたことが要因となる。

大魔法使いエジプタスは、この世界ではじめての悪魔族として生まれた者だと言われている。獣人族は、エジプタスの莫大な財産によって守られ、エジプタス亡き後に、国にまで育て上げられた。獣人族の女性たちが、エジプタスに仕えていたことで、彼女たちが、女王として、選ばれるようになった。


エジプタスの時代から関わりのあった商人たちとの貿易を繰り返し、トリアティ師団国は、国を大きくしていたのだが、近隣諸国とのいざこざが絶えなかった。


トリアティ師団国とワグワナ法国は、共に他種族協定を結んでいたが、トリアティ師団国の獣人が突如として、ワグワナ法国で暴れ出した。獣人族は、変異して、意思疎通は皆無となり、ワグワナ法国を恐怖に陥らせた。


ワグワナ法国は、モンスターに恨みを持ちはじめ、その責任をトリアティ師団国に押し付けるようになった。ワグワナ法国は、証拠があるとあらゆる書類や契約書などを持ちだして来たが、トリアティ師団国は、身に覚えがなく、逆にそれらの証拠は、ワグワナ法国が作り上げた偽造書だといって、お互いに反発を繰り返した。


ワグワナ法国での獣人暴徒化事件は、どちらの国でも謎とされているが、ワグワナ法国からすれば、トリアティ師団国の誤魔化しだと強く責任を追及した。

ドラゴネル帝国が両国の間に入ったが、ドラゴネル帝国は、トリアティ師団国には責任はないと決定すると、ワグワナ法国は、トリアティ師団国に戦争をしかけた。証拠もあげて追及したにも関わらず、帝国がトリアティ師団国側についたからだ。


そして、今でも巨大河ルミールを挟んだ両国の争いは続き、ワグワナ法国は、ドラゴネル帝国にも、敵意を向け、人間至上主義を掲げて、なんとか、ドラゴネル帝国も、人間至上主義になるように政治家やあらゆる方面から働きかけていた。


トリアティ師団国は、ドラゴネル帝国に加盟して、帝国を指示している国だったが、すべてを認めているわけではなかった。人間至上主義を掲げ始めたワグワナ法国を帝国連盟から追放するようにうながしたり、トリアティ師団国のレジスタンスが、帝国の村を襲ったこともあった。


それら戦争などの争いの裏で喜ぶものがいた。



―――様々な国の争いが永遠と続けられる中、ドラゴネル帝国の市街地に、子供が生まれた。源がミステリアスバースとして生まれる14年前のことだ。


その子の名は、ソロモン・ライ・スミスと言った。


2歳になるとソロモン・ライ・スミスは、普通の2歳児とは思えないほどの言葉をしゃべる子として、育った。父親に内緒で保管していたウォーター系の魔法の封印を解いて、水系魔法を手に入れたソロモン・ライ・スミスは、水をまるで手足のように操作したことで、神童しんどうと呼ばれるようになった。


5歳になると、剣術を父親から学び始めるが、その剣術も筋がよく、これもまたこどもだとは思えない動きをみせて、人を驚かした。


ソロモン・ライ・スミスの父親、ソロモン・ライ・リアムは、帝国の特殊騎士団、プリオタークの隊長を務めていた。その過酷な任務は、他の騎士団とは比べ物にならないと言われていただけに騎士団の中でも、特別視され、プリオターク騎士団が通りすぎると、精強な騎士たちでさえも無言になってしまうほどだった。


プリオターク騎士団は、任務以外の期間は、遺跡深くに入り込んで、能力を高めていたので、他の騎士と比べるとスキルや魔法を多く所持していた。


ソロモン・ライ・リアムは、プリオターク特殊騎士団の長を務めていたがために、我が子が神童であることを喜び、スミスをとても可愛がった。何をやらせても、すぐに人並み以上にこなしてしまう息子を跡継ぎとして、有望視していたのだ。


ソロモン・ライ・スミスは、本を読むことが好きで、あらゆる知識を身に付けていった。そして、父親に頼んで、魔法をさらに手に入れて、ファイア系魔法も使えるようになった。


スミスは、とても毎日が楽しかった。色々な知識を手に入れることが好きで、新しい知識を獲るとまるで魔法を1つ手に入れたかのように喜んだ。


『エジプタス目録』という魔法書を5歳の時に読んで、魔法の操作や魔法の知識をさらに増やしていった。


2000年も前の伝説上のひとりとされている偉大な魔法使いエジプタスが書いた書物だった。魔法やスキル、剣術などの探求心を強く持っていた。


「お母様。魔法の珠。封印の珠は、一体だれが用意しているのでしょうか」


スミスの母親ルイーズは、答える。


「それはメーゼの神々が用意されているのよ」


「メーゼの神々の一体どの神が用意されているのでしょうか?」


「そこまではわたしにも解らないわ。ですが、遺跡では、人もモンスターもあらゆる生き物が生まれます。そのようなことが出来るのは、神様だけでしょう」


「神様は、あらゆる物。あらゆる生き物さえも作り出してしまうのですね。お母様」


「そうね。ですから、スミスもメーゼの神々にしっかりと祈りを捧げるのですよ」


「はい。お母様。あと、わたしも父上と一緒に遺跡に封印の珠を取りに行きたいです」


ルイーズは困惑した顔で止めた。


「何を言っているのですか!遺跡はとても危険なところです

毎年、何人の騎士や冒険者アドベンチャーが亡くなっていると思っているのです!?

例え、実力があっても、低級モンスターに殺されてしまう人は後を絶ちません。戦いに必要なのは能力だけではないのですよ」


ソロモン・ライ・スミスは、下にうつむいて謝った。


「申し訳ありませんでした。浅はかな事を言ってしまいました」


「分かればいいのです。モンスターも命がけ。なりふり構わず、色々な攻撃をしかけてくるのです。それに圧倒され、死んでしまった見習い冒険者アドベンチャーは数知れずいます。なのでお父様のように魔法の種類を多用に持っている人は少ないのです。あなたは、焦らず、お父様の指示通りにまずは学びなさい」


「はい。分かりました。お母様」


―――ソロモン・ライ・スミスは、8歳になり、さらに魔法や剣術の熟練度をあげて、周りからも認められるようになった。


外でも本を開きながら歩く姿は、それがゆるされていない子供たちから嫌みのように煙たがられていた。あらゆる学問や知識を獲ることは、A級市民やB級市民にしかゆるされていなかった。

ドラゴネル帝国には、世界中の情報が入り込み、学問の中心地として、その名声が広がっていたが、それを体験できるのは、上位者だけに止まっていたのだ。


奴隷はもちろん、農民なども、文字の読み書きもできなければ、本を読むことも出来なかった。ましてや力を持つ魔法などは、下級者には、禁止されていた。


その上位者の中でも、プリオターク騎士団長の父を持つ、ソロモン・ライ・スミスは、あらゆる情報を手に入れることができる優位な人物のひとりだったのだ。


ソロモン・ライ・スミスの評判が良く、スミスは、上位者のこどもたちからも、好かれていなかった。同じ立場の家系のこども同士なら、上下関係はないのだが、スミスは神童と呼ばれているだけに、手出しされなかった。


そのスミスの代わりに、イジメられたのは、スミスの弟のソロモン・ライ・ソロだった。


ソロは、スミスの3つ年下で、生まれた時からハンディキャップを持っていた。ダウン症だったのだ。重度のダウン症ではなかったが、話をすることが苦手で、起きている時は、両手を動かしてしまう。


話をしても、かみ合わない話し方をするソロモン・ライ・ソロをこどもたちは、からかった。下級地位のこどもたちも、誰もみていないところでは、ソロをイジメていた。


こどもからすると、ソロの動きは面白くて仕方が無かったのと、スミスへの憤りからソロは集中攻撃されていた。


上級貴族の子、ディール・シェパード・クルセウスは、よくソロモン・ライ・ソロを捕まえては、仲間とともにちょっかいを出していた。


そこにスミスが割って入って、ソロを助けた。


ソロは、悲しいことに、ソロモン家の中でも、あまり相手をされていなかった。父親ソロモン・ライ・リアムは、特に奇形として生まれてきた子を自分の子だと認めていなかった。


母親のルイーズもソロには、執事などに世話をさせて、関わろうとはしなかった。食事をするにも、ソロは自分の部屋でするように言われていた。唯一家族で、ソロを守ろうとしていたのは、スミスで、ソロを弟として、守り続けていた。


ソロも、そんな兄のことを好いていた。




―――ソロは、ディール・シェパード・クルセウスとその仲間たちに囲まれ、建物の裏に連れて行かれた。


「おい。このストレンジ野郎。今日は、間違いなく俺がモンスターのお前を退治してやる!」


クルセウスは、長い棒を持って、ソロの足元の地面をその棒で叩きつけた。


「お前が俺の最初に退治したモンスターとなる!ありがたく思え!このモンスター!」


ソロは、震えながら縮こまる。そのやり取りをみて、仲間たちは笑っている。


「まずは、モンスターの足だ!」といって、ソロの足をその棒で叩こうとしたが、クルセウスの顔に、水の固まりが当たり、クルセウスは、後ろにのけぞった。


水が飛んできた方向に一斉に皆が顔を向けると、ソロモン・ライ・スミスが、塀の上に正義の味方のように腕を組んで、見下ろしていた。


「おい。また俺の弟をイジメたな?今度こそ容赦しないぞ」


「くそ!みんなあいつを塀から落とせ」


とクルセウスが言うと、こどもたちは、小石を持って、スミスの足を狙って投げようとした。


しかし、スミスは、それよりも早くウォーターの魔法で子供たちの顔にぶつけるので、皆は石を投げることもできず、地面に転がる。新しい石を持とうとすると、すぐに顔に水のかたまりが飛んでくるので、どうしようもなくなり、走り去っていった。

スミスは、逃げ出したイジメ集団に大きな声で叫んだ。


「俺が本気を出したら、そんなものでは済まないぞ!」


塀からジャンプして、スミスは、震えるソロに手を差し伸べ、立たせた。


「ソロ。お前のことは、俺が守ってやるからな。お前はソロモン家の男なんだ。いつかは、あいつらを倒せるようにならないとな」


そういうと、ソロは、笑顔で、顔を振ってうなずいた。


「それにしてもあいつらはバカだな。こんな閉鎖されたところで、こそこそソロを襲えば、俺がやりたい放題できるじゃないか。まーおれがいないと思ってたんだろうけどね。自分たちで追い込まれてるなんてな」

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