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110章 新たなる力の製造

源たちは、地下5階でハイイグシオンを倒した後、地下9階まで進んで、生命数値レベルをあげて、ユダ村へと戻って来た。


ボルフ王国でも、地下7階ほどに行った冒険者アドベンチャーしかいないと聞くと、かなりのハイペースで、遺跡探索は進められている。


封印の珠も4つ手に入れ、各階のボス級モンスターの遺体も、ハイイグシオンと一緒に、龍王広間へと保管していた。


『愛。お前が言っていた役立つ効力の可能性って何なんだ?』


『はい。源。源はリトシスで仮想世界の生き物たちのプログラムを解析し、作り直すことが出来ています。ロック様とミカエルのプログラムも組み合わせてしまいました』


『うん。それとボス級の遺体と何か関係しているの?』


『倒されたモンスターをリトシスによって分析し、わたしが解析、改良したプログラムを源自身に還元できないかと考えたのです。源』


『還元・・・?』


『まずは、モンスターを解析してみましょう。源』


源は、愛が何を狙っているのか分からなかったが、ハイイグシオンの体の前に、手をやって解析をはじめた。


しかし、1つの生命のプログラムは、細胞レベルであり、ナノレベルの解析が必要で、かなりの時間を使った。


数時間を使ってやっとハイイグシオンの解析を終わらせた。


『源。ハイイグシオンの解析情報をロック様の鑑定スキルに合わせて表示させます


《ハイイグシオン》

生命数値64

力:3350

体力:4100

熟練:1540

早さ:755

魔力:3010

魅了:1200


マナ:

瞬間移動テレポーテーション

放電サンダーボルト

雷雨サンダーレイン

異空間バキュームスペース

体力段階減少レスディレイ


属性:緑


種族ギフト:強靭な脚力、各種抵抗力です』


『俺のリトシスと愛を使えば、鑑定スキルはいらないな』


時間はかかるが精度が上がれば、時間も短縮できるようになるだろう。


『ロック様の鑑定スキル情報欄にあわせて、数値にしてみたものですが正確ではありません。そしてハイイグシオンが使っていたマナの名前は、エリーゼ・プル様やリリス様が申していた名前で表しました。ここで目につくのは、各種抵抗力です。源』


瞬間移動テレポーテーションとかじゃないの?』


『身体能力に至っては、源はそれほど高いものではありません。属性は強いですが、毒耐性などを持っているわけでもないからです。源』


『そうか・・・身体的なものが、俺の弱点というわけだな』


リトシスがあれば敵の攻撃を無効化はできるが、その対処の仕方は、サムエル・ダニョル・クライシスの時に痛い目にあわされている。


『はい。その通りです。源。ですから、このハイイグシオンのプログラムを源の存在であるプログラムに組み合わせてみればどうかと考えたのです』


『そういうことか!遺体であるプログラムは存在しているから、身体能力を俺の体に組み込めるということか』


『はい。ロック様とミカエルとを融合させたように、ハイイグシオンの使えるプログラムを源と融合させる新しいプログラムを作成するわけです。源の体も、ハイイグシオンの体も、解析はすでにできていますから、あとは融合させるだけです。源』


源は、リトシスを使って、愛の新たに融合させて作り出したプログラムへと組み合わせていった。


『ハイイグシオンの各種抵抗力プログラムを手に入れました。源』


イグシオンの体の一部は新しいプログラムを源に加えるためにリトシスによって削り取られていた。


源は、考えた。身体的能力だけではなく、そのモンスターが持っている能力も解析できたはずだ。


『愛。瞬間移動テレポーテーションなどのプログラムも解析したんだよな?』


『はい。解析しました。源』


『これらも俺にプログラミングを施すことが出来るんじゃないのか?』


『目には見えないものですが、確かにスキルやマナはこの世界に存在するプログラムですので、それは可能です。源』


『それらスキルとマナのプログラムも取り入れるぞ!』


源は、愛の解析されたプログラムを自分のプログラムに入れ込んだ。


瞬間移動テレポーテーション

放電サンダーボルト

雷雨サンダーレイン

異空間バキュームスペース

体力段階減少レスディレイのプログラムを取り入れました。源』


イグシオンの体は、さらに削られた。


源は、本当にそれらの能力を手に入れることができたのか試してみた。


目の前の空間を開けることなく、源は、龍王遺跡の外に瞬間移動テレポーテーションすることができた。


「すごい・・・本当に使えるようになったぞ・・・」


ユダ村が見えなくなるほどの距離に瞬時に移動することができた。なるべく、生き物がいない場所に瞬間移動テレポーテーションして、放電サンダーボルトを使ってみた。


巨大なカミナリのような電流が、真横に現れ、拡散した。源の目の前の空間一体を丸い範囲に渡って放電するように、電気が弾けた。


雷雨サンダーレインは、全体にカミナリを落とすようなハイイグシオンがやっていたやつだろう・・・。


源は、次に雷雨サンダーレインを唱えた。


辺り一面、巨大なカミナリが、次から次へと上から下へと落ちていった。


ズゴン!ズゴン!という巨大なカミナリが大量に落ちた音が鳴り響く。


その数、数千。5kmに渡って効果出てしまったその攻撃は、範囲攻撃だ。一般のキャスターが使えば、効果的なマナだが、源が使えばまるで別物になってしまう。


このマナは、危険すぎる。敵はもちろん、味方さえも攻撃しかねない・・・。


そして、異空間バキュームスペースを唱えると、源の目の前に巨大な黒い空間が開いたと思うと大量にまわりの空気を吸い込んで、閉じ込めてしまった。術者には、その効果の属性が強化されるので、源はその中に吸い込まれることはない。


バキュームとは、真空のことだ。空間を真空状態にして、すべてを呑み込んでしまう。ただの真空ではなく、異空間バキュームスペースは、まるでブラックホールのような穴で、光りさえも、その穴の中に吸い込んでしまうようで、黒色の巨大な穴が出現した。


開いている時間帯は、マナを消費していくようだが、開いている時間を長く続けたり、穴をさらに巨大にするのは、危険だと思われる。


最後の体力段階減少レスディレイも行たが、特に何の変化も無かった。


『源。この体力段階減少レスディレイというマナは、どうやら詠唱者には効果を及ぼさないようですが、範囲攻撃で、まわりの生き物の体力を減少させていくようです』


『なるほど、確かにハイイグシオンと戦っている時に、皆が少し苦しみだしていたけど、あれはこのマナだったのか』


『そのようですね。源』


この体力段階減少レスディレイも、俺が生き物に使えば一体どんな効果になるのだろうと少し心配になる。


何はともあれ、凄いのは・・・封印の珠がなくても、プログラムを解析できれば、自分の力に出来てしまうということだ。


これはリトシスが無くては絶対にできないことだが、リトシスだけあっても不可能なことだった。読み取るリトシスがあっても、それを解析できる頭脳、果てしない知能がなければ、不可能だからだ。そして、源は、この世界を作った者たちでさえも、知らない存在、人工知能AIの愛を持っていることで、これを可能にしたのだ。


リトシスを与えたのは、あいつらだが、そのリトシスをここまで使いこなすとは、開発者としても、予想できなかったことだろう。


リトシスと愛の相性は、良すぎるのだ。


どれだけ能力を持っていても、それに気づかなければ、一生使わずに人生が終わってしまうようなもので、リトシスという賜物ギフトをこれほど効果的に使えるのは、源にしかできない芸当だった。


愛のことについては、絶対に知られてはいけないだろう。ミカエルを作ったことで誤魔化すこともできるかもしれないが、愛のことは誰にも話してはいけない。


そして、予想される、さらに凄いことは、プログラムを解析できたのなら、それを他人にも与えることができるかもしれないということだ。


ロックのプログラムを変えられたように、ロックに今持っているマナのプログラムを与えることもできるだろう。


自分がマナを持てば持つほど、レジェンドの人たちは、その恩恵を受けることができるというわけだ。


『源。ロック様にミカエルのソースを組み入れた時も、今、源がハイイグシオンのプログラムを組み入れた時も、その能力を持った個体が、あったことなので出来たことです。リトシスは、無から何かを生み出すのではなく、もともとあるプログラムを改変する能力だからです』


『そうか・・・だから、ハイイグシオンの能力を俺が獲るとハイイグシオンの体の一部が必要だったわけだな。ということは、手に入れた敵の能力は、一体につきひとりだけに与えることは出来るが、複数人には、与えられないということか・・・』


『はい。そうだと予想されます。源』


源は、少し考えて、思いついた。

『でも、ちょっと待てよ。愛は、その能力などのプログラムは正確に記憶しているんだよな?』


『はい。その情報は、蓄積されています。源』


『じゃー。例えば、木をグラファイトにしたように、他のものをまずは、その能力だか、プログラムだかにリトシスで変えて、本人と組み合わせれば可能なんじゃないのか?』


『確かに、リトシスで存在している物質のプログラムを改変してからであれば、その能力を与えることは可能だと思われます。源が封印の珠を作り出すようなものだからです。ですが、それもナノレベルの精密な操作が必要になりますから、これもまた時間がかかってしまいます。源』


時間がかかるのは、しょうがないにしても、他人にも能力を与えることが出来るのは大きなことだ。グラファイトの装備を造るように、木を放電サンダーボルトの能力として、プログラム改変して、持っていない人に組み入れれば、その人も放電サンダーボルトを使えるようになる。サムエル・ダニョル・クライシスと愛の戦いでも、俺の体に、サムエルのマナで穴を開けられたが、その胸の穴を木という物質を改変して、自分の体としたようにだ。


これはとても凄いことだ。



でも、そんなことをしたら、噂が広まり、また問題が出てくるだろう。

封印の珠のようなものを作り出す存在は、インパクトがありすぎる。

それにプログラムの改変を少しでも間違えれば、プログラムはバグを起こしてしまう。

愛がいるから出来ているが、愛がいたとしても人に使うのは、やはり危険すぎるので、動物などで試していかなければいけない。


人には、マナやスキルなどを与えることは、簡単には出来ないというわけだ。


また、いくらミカエルの通話機能を使って、内緒にしようとしても、常識をひっくりかえしてしまうこのことが広まらないわけがない。


人には出来ないのなら、ミカエルならどうだろうか。ミカエルだけに、能力を与えるというものだ。ミカエルがマナを保持するということは、ミカエルを操るレジェンドの村人がその能力を保持しているようなものになる。


ミカエルは生き物ではないので、封印の珠が使えなかったが、プログラムを打ち込むことが出来る俺ならミカエルにマナやスキルを与えることはできるかもしれない。物質モンスターであるロックもマナを使おうと思えば使えるのだから、物質であるミカエルもマナを使えるように出来るかもしれないのだ。


源は、龍王の遺跡に戻って、ミカエルにマナのプログラムを打ち込もうとしたが、ミカエル自体に、マナエネルギーが存在していなかった。生き物ではないからだろう。マナを使うためのエネルギーが必要になる。確か、この世界の生き物には、マナを蓄えているコアが埋め込まれていた。そのコアがないミカエルは、マナを使うだけのエネルギーを持っていなかったのだ。


そこで源のコアをリトシスを使って木で改変させて、ミカエルに埋め込もうと考えた。源は、自分自身を解析した時、他の者たちと細胞そのもののエネルギーの違いに気づいていた。普通の人たちが保持しているマナ量とは比べ物にならないほどの高密度のマナを源のコアは宿していたのだ。これが天使族の特長の1つなのだろう。


このプログラム通りに、ミカエルの体、ソースも融合させようとしたが、愛が止めた。


『源。ミカエルは、わたしが制御しているわけではありません。そのミカエルに源と同じだけのマナ量を与えることは危険です。発動した時、犠牲者が出る可能性が高いです』


『確かにそうだな・・・だけど、一般の人たちと同じプログラムを打ち込むのなら、マナもあまり役には立たないんじゃないか?』


『源ほどのエネルギーではありませんが、ソース1つ1つには、太陽エネルギーが使われています。それを消費するようにしてみてはどうでしょうか。源』


生き物は、何かを食べて、それをエネルギーにして、動く。それと同じように自分の体にマナエネルギーも宿していくのかもしれない。もともと生まれ持った素質で、そのマナエネルギーの量も変わって来るのだが、ミカエルは、ソースの内部に入れ込んだ太陽を原動力として、動いている。この大量のエネルギーをマナへと変換させればいいわけだ。


源は、そのプログラムも愛にまかせて、制作させ、リトシスで、そのように打ち込んでいった。


そして、源の持っているマナを木で作成していく。これを封印の珠とは言わず、『能力追加珠アペンドボール』と言うことにした。人工封印の珠だ。ミカエルの1つのソースに炎弾ファイアボール能力追加珠アペンドボールを与えて使わせてみた。


ソースは、太陽エネルギーを使えるため、一般の戦士よりも明らかに強い炎弾ファイアボールを放つことが出来た。


キャスターほどのマナの威力だ。


源の持っていた複数のマナを能力追加珠アペンドボールにして、ソースに入れようとしたが、1つしか入れることが出来なかった。壊れるということは無かったが、やはり、生き物ではない鉱物のソースにマナを入れることは難しいということだ。運よく2つのマナを入れられるソースもあったが、ほとんど1つしか入れることが出来なかった。


だが、ミカエルが、1つでもマナを使えるということは、それはレジェンドの村人がマナを習得したようなものになる。狩りには、かならずソースを連れて行くからだ。残念なのは、このプログラムを施せるのは、リトシスだけで、能力追加珠アペンドボールをリトシス以外の科学では今は作り出すことはできないし、その能力追加珠アペンドボールのプログラムとソースのプログラムを融合させることもできない。なので、ソース1つ1つにリトシスで作った能力追加珠アペンドボールを融合させて、プログラムを施さなければいけないので、これもまた時間がかかった。


すべてのソースにマナを与えられないので、マナが使えるマナソースと普通のソースとに分けることにした。


主に、マナソースは、レジェンドの戦士たちが利用して、狩りや戦いに役立ててもらう。村人には、普通のソースを利用してもらうことにした。そのほうが安全でもあった。



―――数カ月がさらに経ち、ソースの数も、100万に増えた。ブレインも、200機になり、ミカエルの処理能力も増えていった。施工工場は、100個へと広がり、それらは地下深くに隠されて造られていった。マナソースは、300個になった。


未だに、ソースの大きさは、5mmだったが、5mmでもかなりの性能を発揮していたので問題はない。


5mmで造られたソースで、ミカエルは、300体ほどの人型で確保できるようになった。


300人の倒されない兵士を手に入れたようなものだ。キャスター並みのマナを使う兵士型ミカエルなら、マナソースは1つでいいが、それ以上の強いマナを使う場合は、1体の中に、マナソースを複数繋ぎ合わせれば、マナの威力も増させることができる。


半年以上もの時間をかけて、やっとここまでの結果を生み出した。


源たちは、シンダラード森林に戻ることを決意した。


今あるすべてのソースは、シンダラード森林に持って行く。なぜなら、ここに施工工場があり、未だにソースは造られ続けているので、ユダ村には、源がいなくても、新しくソースを与えることができるからだ。


シンダラード森林に持っていく100万個のソースがあれば、向こうで新たな、地下施設を造ることも簡単だ。


ユダ村とシンダラード森林の2カ所で、ミカエルの製作は続けられることになる。




―――ユダ村の村人たちとは、半年に渡って一緒に暮して来たので、レジェンドの村人たちは、別れを惜しんだ。


源が持っている瞬間移動は、自分だけしか移動させることができない。リトシスによる空間移動も、200kmほどの距離が限界で、しかも、レジェンド全体を入れるほどの空間はさすがに開けられない。


なので、ユダ村に来た時のように、リトシスで、レジェンド全体を浮かせて、移動を試みる。源の生命数値は、遺跡探検によって飛躍的に伸ばされていたので、今では、400km/hで空を飛ぶことが可能になっていた。


ユダ村からシンダラード森林まで、丸一日かかっていたが、今は10時間ほどで、辿りつくことができる。


ウオガウたちウオウルフが待つ、シンダラード森林に源たちは、向かった。

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