109章 増殖
数カ月立つとナノアイコンタクトとナノイヤホンを使って、レジェンドとユダ村の村人たちは、ミカエルを利用しはじめた。
ある者は、畑仕事に、ミカエルを使ったり、ある者は、仕事や子育てに使ったり、料理を教え込んで、ミカエルに料理を造らせたりとあらゆるミカエルの活用方法が広がっていった。ミカエルは人から言葉で教えられたことをプログラムとして吸収していく。新しいことなどには始めは、あまりうまく行動できないが、間違いを繰り返すたびに正しい行動ができるように成長していく。皆が関われば関わるほど、ミカエルの精度は高くなっていくのだ。
ミカエルは大切にされ、家事用ミカエルは、ピンク色のソースになり、一家一台といったように、重宝されるようになった。
頼めば、家も好きな家を作ってもらえる。
ナノアイコンタクトで沢山の家のデザインをカタログでみるように選び出し、気に入った家を作っていく。安全ではない家はプロトコル違反になるので、どれだけ村人が頼んでも建てられない。
服をデザインして、ミカエルに造らせたりする人もいた。
戦士は、ミカエルを相手に戦いの訓練をしたりするものもいた。ソースは滅多なことでは壊れないで真剣の稽古をすることが出来ると評判だった。
源は、あらゆる格闘技の情報をミカエルに入れたので、ナノアイコンタクトの映像に出てくる格闘技の映像にあわせて、戦士たちは、戦い方を学んでいった。
ミカエルは人々と関わることで、かなりのスムーズな動きをするようになり、ソースも小さくなっていったので、滑らかな体の使い方をするようになっている。
遺跡に行くにしても、ミカエルは必ず持参するようになった。何か危険なことがあれば、すぐに連絡をつけることもできるからだ。今のところ、ミカエルの不得意なものは、治療だ。機械でしかなく、息もないので、封印の珠を使用できない。マナが使えない。
傷口をクリップで縫うぐらいはできるが、薬草を持ち歩くように持ち主が指示しなければ、怪我人の治療をするのは難しいのだ。
ただ、それは今のところの話で、将来は、ブレインの数が増えていけば、治療も可能になるソースを作り出すことも出来るようになるかもしれない。
現在、ブレインの数は、50台を超えた。ソースの数も10万個を超えて、ソースも1cmから5mmにまで小さくすることに成功していた。施工工場も、30個と数を増やしていた。
場所が無くなれば、ミカエルは、また、違う場所を作り出したり、さらに地下へと掘り進めて、場所を増やしていった。
龍王遺跡を研究所にしていたが、すでにそこには、ミカエルの痕跡はすべて消して、誰も知らない源しか分からない場所で、作業が繰り返され、秘密裏に動いていた。
ソースはいくら破損しても損害はないが、脳であるスーパーコンピューターのブレインをすべて破壊されれば、ミカエルは消えてしまうからだ。
製造された小さなソースは、虫がわくように、地面の中から出ていっては、行動するようになる。
あらゆる武器も作り出すことができるが、武器は銃、《ショット》までにした。ショットを使える人も、司祭様たちにクリスチャンだと認められる人だけが使えるようにした。
ただ、ショットの危険性を認識した多くのクリスチャンたちは、ショットを使うのを好まなかった。剣やマナを多くが利用した。
その考えに源も同感だが、レジェンドなどの村を守るためにも、壁の上には、アドバンスドヘビーマシンガンを置いた。強力な機関銃だ。射程距離は2000mで1分間に260発の弾を連射できる。1000m以内の車両やヘリコプターであっても撃破できる代物なので、この時代の盾は、ほとんど通用しない。
敵に渡った時には、逆に驚異になるので、指紋認証式にして、レジェンドの限られた戦士しか使用できないようにされている。武器の形も変えてあるので、現実のアドバンスドヘビーマシンガンとは同じだとは思えない。《ビックショット》という名前にした。
戦争時には、機関銃の代名詞ともいえるアサルトライフルもボックスから出して使用できるようにした。《ローショット》という名前だ。もし、空襲部隊に攻め込まれても、このローショットがあれば、倒すことができてしまう。それ以外では、それらは使用するのは禁止にしているが、もちろん練習はさせている。
遺跡探索や戦う場合は、戦士たちは、それぞれ腰に、ワルサーP99を所持するようにさせた。名前はそのまま《ショット、銃》だ。ワルサーP99とは、ハンドガンのことで、威力がありすぎて危険だということもない武器で、初心者でも使いやすく女性戦士でも使える銃だ。サイレンサーを付けることもできるので、その状況によって使い分けができるだろう。使わないということだったが、一応は武器の選択枠の1つとして持ってもらうことにした。ちなみにルパン三世が使っている銃もワルサーP99だ。
各銃、ショットには、センサーが取り付けられていて、無くしたり、奪われた場合はそのショットの位置が分かるようにして、ミカエルにそのショットを分解、破壊してもらうように設定した。
どうしても追い込まれた時にだけ使用する裏の武器も用意した。アドバンスドヘビーマシンガン、ビックショットをミカエルの変形型戦闘形態にして、使用するというものだ。その形態にはグレネードランチャーも装備させることになる。
これらはどうしても追い込まれた時しか使用はしない。それ以上のものも用意してあるがそれは追い込まれても使わないものとして、保管されることになる。ミカエルの変形型戦闘形態の裏の武器のことなどは、ロックにさえも教えていないものだった。
正直、これらをすべて使ったとしても、あのサムエル・ダニョル・クライシスに通用するとは思えない。速さの概念さえも超えていたからだ。マシンガンなどの弾ぐらいの速さなら、愛は感知認識して、リトシスを発動することができるが、サムエル・ダニョル・クライシスの動きはあの時は、認識できなかった。マシンガンやグレネードなども通用しないだろう。ただ、レジェンドを守る手段としては、各種類のショットは、かなりの効果を生み出せるはずだ。
このようにミカエルを生み出したことによる恩恵は、あらゆるところに波及していった。この先、まだまだ活用法は増えていくだろう。
だが、武器は一流であっても、この世界には、マナやスキルというものが存在している。これらは源が生み出した科学を超えるものがごろごろしている。一般の戦士たちも普段から遠隔攻撃のマナを体験しているのだから、銃にも対応できるようになってしまうだろう。
エリーゼ・プルなどの魔法剣士などは、わざわざ銃を持つ必要もない。剣という武器を持ちながら、手ぶらでマナ攻撃さえも打ち出せるからだ。
なので、武器を作るのと同時に、兵士たちや自分たちの生命数値を上げていくことが重要になるのだ。結局は、総合能力値や熟練度だということだ。
源は、また遺跡探検に出かける準備をして、メンバーを呼び寄せた。
ロック。リリス・パーム。ローグ・プレス。ボルア・ニールセン。そして、エリーゼ・プルとバーボン・パスタポだ。
源を含めてこの7人で、遺跡の攻略へと向かう。
源は、左手を前に出して、円を描くと、空間に大きな穴をあけて、皆に入るように指示をした。その空間の中に入ると、前回のトロールを倒した地下4階に直接つながっていて、すぐに続きをはじめられた。
リリスは、その不思議な能力の仕組みを聞く。
「源がやっているその空間はマナなの?」
源は、ミカエルの回線をパーティだけにしてその疑問に答える。
「本当は、ロックにしか教えないつもりだったけれど、君たち7人には説明していたほうがいいかもしれないね。俺はこの世界に生まれた時からこのような能力をもらっていたんだ。この空間も皆を空に飛ばしている能力も同じスキル、またはギフトを活用しているんだ。このことは誰にも言わないようにね」
「マナではなく、スキルや神様からもらっている特殊能力を使っているのね」
「うん。そうだね。その能力を使って、ミカエルも作ったんだよ。とにかく、今は遺跡の中だから集中して、みんなで力を合わせて戦いぬこう」
今回は、ミカエルを人型10体持って来ていた。ミカエルのソースも5mmになったことで、かなり戦闘でも使えるようになりはじめた。戦いはやはり、まだこの7人には及ばないが、ディフェンス力にしては、誰よりも強いかもしれない。
「ミカエル。捜索してくれ」
ミカエルは、沢山のソースに分裂して、奥へ奥へと移動していった。
前回はトロールの200匹を超える軍勢だった。今回は、どのようなモンスターがいるのか分からない。
しかし、ミカエルが得た情報は、すぐに7人に送られる。
地下5階へと何事もなく、進んで行くが、地下5階には、広い空間になっていた。
その中央には、黒色の封印の珠が石の台座の上に置かれていた。
それをみて、ロックは言う。
「これを取ったら、あきらかに何が出てくるな」
皆も同じように考えていた。前回はたった7人で240匹ものトロールを相手に勝利したが、危険であったことには違いない。そして、今回はさらに深い階層の地下5階だ。命がけの戦いがはじまる緊張感が体に余分な力を出させてしまう。
源はみんなに指示を出す。
「だからといって、取らないというわけにもいかない。戦いの主要メンバーは、強くなってもらわないとね。みんなそれぞれ円陣になって、対処してくれ」
それぞれ7人と人型10体のミカエルは、円陣を組んで、後衛回復役のボルア・ニールセンを守る。
源が、黒色の封印の珠を取ると、突然目の前に、5体の2mにもなる白い馬が現れた。
鬣が長く綺麗で、体は黒い模様のようなものが描かれているようにみえる。角の先には電気がほとばしる。
リリスが、慌てて、そのモンスターをみて、皆に教える。
「このモンスターはイグシオンよ!空間移動を得意としながら、サンダー系のマナを使うモンスターで、これを倒せるような冒険者は少ないわ!気を付けて!」
「そんな!イグシオンなんてモンスターが地下5階に出てくるの!?しかも、5体もいる!!」
エリーゼ・プルも驚いて、声をあげる。
ロックが聞く。
「空間移動とはどういうものなんだ?」
ロックの目の前にイグシオンの一匹が突然、現れ角を刺して来た。
「こういう空間移動か・・・」
ロックの鎧の隙間に、角を刺し入れ、岩に少し刺さってしまう。
「だがな、あまりその攻撃は効いて・・・」
というと、イグシオンは、サンダーで、電気を流して来た。ロックの体全体に電気が流れ、ロックの意識は、飛ばされ後ろにズドンと倒れた。
源は、すぐにその一匹にグラファイソードを振りぬくが、また瞬間移動して、別の場所に現れた。
「予備動作がなくて、まったく予測がつかないぞ・・・」
あのロックが倒れたことで、他のメンバーの顔色が青ざめる。突然現れ攻撃され、ロックの意識さえも刈り取る電流を流されれば、ひとたまりもない。
サムエル・ダニョル・クライシスと比べると現れた時から攻撃に転じるまでの速度は、遅いので、対処できるが、消えて現れるまでがまったく予測がつかない。
これは、試せると源は思った。
新しい探知機能を持ったミカエルのソースだ。10体持って来ていたミカエルのソースは、15000個にもなる。源は、15000個のソースを広場一杯に広げて、探知機能をマックスにして試してみた。
赤外線探知では、視認や聴覚などと同じで、イグシオンのその能力に探知することは出来なかったが、空気流動探知とレーザー探知では、把握することができた。明らかに空気の流れが変わる。消えた瞬間の空気の変化と現れた時の空気の流れが瞬時に探知可能だった。
ソース1つに人には見えないレーザー光線が出され60000個のレーザーが広場に張り巡らされていた。1つ1つが網状のレーダーなので、広場一面をレーダーが覆う。イグシオンぐらいの大きさなら必ずそのレーザーに触れてしまう。
ランダムに飛び回っているかのようなイグシオンの動きだったが、モンスターだけにある程度、パターンがあり、現れる場所の予想ができた。
源は、皆に指示を出した。
「みんな、その場所から動かないようにしてくれ。こいつは俺が倒す」
源は集中した。まだミカエルの探知機能は優れているとは言えない。それはブレインがまだ50個ほどしかなく処理能力が遅いからだ。だが、はじめには、愛がいるので、その処理能力をカバーできる。
自分を囮にするかのように、イグシオンに近づき、攻撃をしようとするが、イグシオンは、その源の動きを察知して到達する前に、違う場所に移動し、現われる。
源は、おかまいなしに、いなくなったイグシオンの場所に、グラファイソードを突きつけた。
イグシオンの目の前の空間からグラファイソードが現れ、イグシオンの頭を刺して倒した。
他のイグシオンが、ローグ・プレスの目の前に現れた。
ローグ・プレスは、「うわ!」という声をあげたが、その声を上げる前に、イグシオンは目の前で、源のグラファイソードに頭を貫かれていた。そのまま、ローグ・プレスの目の前でイグシオンは倒れる。
倒れていたロックは、顔を振りながら、起き上がった。
「こいつ・・・やるなー」と顔を振りながら起き上がる。
だが、その間にも、源がイグシオンを倒していく。
他のメンバーもロックも、ミカエルの探知機能をナノアイコンタクトとナノイヤホンなどで探知できていたが、源の処理能力とは違うので、遅れてみえていた。なのに、源はイグシオン5体を何もさせずに倒したので、皆は驚いていた。
源が、5体を倒して、戻って来たのでロックが聞く。
「おい。セルフィ。どうして、お前は、あのイグシオンの動きについていけたんだ?」
「ミカエルの新しい探知機能を使ったんだよ。みんなもそれで探知できてただろ?」
「探知できたが、探知機能が見えた時には、源がイグシオンを倒していたぞ?」
「ああ。そういうことか・・・。なんていうかなー。それにはいくつもの理由があるんだけど・・・」
「教えてくれ」
「まずは、俺は実は、ナノアイコンタクトとナノイヤホンを使っていないんだ」
「使っていないのか!?」
「正確には、使う必要がないというか、俺とミカエルは、繋がっているんだ」
「繋がっている?」
「うん。リトシスの能力を使って、ミカエルを俺の体、脳とも呼べるようなものと繋げてしまっているから、みんなのナノアイコンタクトやナノイヤホンよりも早く情報が伝達されるんだよ。ほんの数コンマ0秒ほどの差だけどね」
「そんなことが出来るのなら、俺たちにもそれをやってくれ」
「いや、そういうわけにはいかないんだよ」
ロックは首をかしげる。
「どうしてだ?」
「どう言えばいいかなー。今はミカエルはお試し期間みたいなもので、ナノアイコンタクトとナノイヤホンも試しているぐらいだ。それを超えるミカエルとの繋がりは、さらに試して実験をしていないから、危険かもしれないんだね。今のところ15匹の動物にミカエルを試させているんだけど、特に問題はない。だけど、それを仲間に使うのは、まだ早すぎると思ってるんだ」
リリスは言う。
「でも、いつかは、誰かが試さないといけないのよね?試すとしたら、わたしたちじゃないの?それに、セルフィは、何ともないんでしょ?」
「そうかもしれないけど・・・俺の場合は、俺自身が、リトシスを持っているからいつでも切り離せる。でも、みんなの場合は、俺がいないといざという時に切り離せない。もし、俺に何か起こったとしたら、みんなは一生、ミカエルを取り外すことはできなくなるんだよ」
ロックは、強く願ってきた。
「いや、それでもかまわない。少しでも強さを増せるのなら、俺にもミカエルを試させてくれ」
他のメンバーも同じように言ってきた。
「うーん・・・ひとりずつ試していこう。俺にとってロックは一緒に生まれた兄弟みたいなものだ。ロック、君から試してみてくれるかい?」
「ああ。もちろんだ。これで何かあっても、それは俺が無理やりセルフィに頼んだことなんだから、気にすることはない。龍王の遺跡広場に戻らないとできないのか?」
「いや、ここでもやれる」
『愛。ミカエルの存在とロックの存在。両方のプログラムの解析をリトシスで行い。同化させることに危険が生じるか?』
『源。今のところ、動物の反応や源の状態をみても、特に問題がある崩れたプログラムは存在していません。成功する可能性は高いと思われます』
左手にソース1個を持ってロックに手をやって、解析をはじめ、その情報を愛へと流し、愛は、正確なプログラムを表示させて、またリトシスで、そのふたつを組みなおしたプログラムを作成して、それを設計図のようにして、ロックに施した。
左手にあったミカエルのソースは、消えて、何の変化もないロックが、源の目の前に立っていた。
「おおお!」とロックは、声をあげた。
そして、ナノアイコンタクトとナノイヤホンを外すと、さらに驚いていた。
「何だろうか・・・・この感覚は・・・世界が違って見えるぞ!」
脳や存在そのものに、50台のブレインの能力が突然増し加わったようなものをロックは味わった。
「何なんだ・・・これは・・・源は、こんな世界をずっとみていたのか?」
ロックがみた世界は、見ている世界が多角的に見える世界で、あらゆる感覚が、増加され、それらを処理できていた世界だった。ここにいる15000台のソースだけではなく、外にいる10万台のソースともつながって、把握することができた。
他のメンバーは、ロックが言っていることが理解できなかった。
そうこうしていると、また新たな5体のイグシオンが突然現れた。
源は、声をあげる。
「おい!またか」
源はまた、イグシオンを倒すために、囮のように動いて、攻撃をしかけ戦いはじめた。
だが、その戦いに、加わったのは、ロックだった。
ロックは、ナノアイコンタクトの時とは違い、15000のソースの探知を感覚で把握できたので、イグシオンが消えて、現われるその先を予想できるようになっていた。
背中に背負っていたビックボウガンをロックは、持って、ボルア・ニールセンの方向に向けた。
ボルア・ニールセンは、驚く。
「ロックさん!こっちにボウガンを向けないで!」
というと、その声を聴かずに、ロックは、矢を放った。ボルア・ニールセンの目の前にイグシオンが現れ、その矢がイグシオンに当たる。
ロックは、源に聞こえるように声を張り上げて報告した。
「確かに違うぞ!セルフィ。このモンスターたちの現れる位置が、解かるぞ!しかも、現れる前に・・・」
他のメンバーは、イグシオンの動きに翻弄されるだけなので、ヘタに動けないので、ロックの変化に驚く。
しかし、そこに現れたのが、一回り大きなイグシオンだった。
リリスが教える。
「ハイイグシオンよ!」
10体のイグシオンとともに、現われて、いきなり、広場全体に、サンダー系のマナを放って来た。
それをすかさず、源が、リトシスを発動させて、全員のまわりの空間に対する攻撃を無効化させた。空間自体を遮断すれば、カミナリクラスの電流であっても無効化できる。
「ロック。みんなをイグシオン10体から守っててくれ。俺が、ハイイグシオンを倒しながら、援護もする」
「分かった」
源は、背中のナイフを取り出して、ハイイグシオンに投げるが、やはり、ハイイグシオンも瞬間移動をして躱した。
巨体が消えて、また別の場所から現れる。
すると、メンバーが苦しみ始めた。
「みんなどうした?」
「分からない・・・何だか力が抜かれていくみたい・・・」
ロックは、みんなの能力値を鑑定で確認した。
「みんなの体力だけが、減少しはじめているぞ」
源は、聞く。
「ハイイグシオンが、何かしたのか!?」
皆も分からないようだった。
源は、何が起こっているのか分からないが、邪魔な10体のイグシオンをまずは倒そうと考えた。
前回、遺跡に入った時に手に入れた能力を発動させた。
各イグシオンとハイイグシオンの目の前の空間から光りの粒子のレーザーが飛び出し攻撃を加えた。
10体のイグシオンの頭に直径10cmほどの太い光りのレーザーが当たり、一斉に頭を吹き飛ばした。
黄色い封印の珠から手に入れた新しいマナは、光線という光の攻撃を出すものだった。一本の光りの攻撃を放つマナだが、源のリトシスの時空を歪める能力と合わさって、同時に多数の攻撃となる。
だが、源は光属性だったので、もの凄くマナの消費を抑えて、やっと今の威力にすることが出来ていた。限りなくマナ量を抑えても、これほどの威力を発揮してしまうのが光線というマナだった。通常通りに放つと、危険すぎるほどだった。
ハイイグシオンの前には、黒い空間が開いていて、源の光線の攻撃もその空間に入っていき、ハイイグシオンには、ダメージは無かった。
さらなる空間能力をハイイグシオンは持っているようだった。
源の時空空間攻撃を察知して、それを防ぐというのは、防御をするのは、あのマナで行ってきたからだと思われる。
あの黒い空間なら源の炎弾でも、通じないかもしれない。
源は、みんなをリトシスで、広場の隅に浮かして移動させると、その前に壁になったように、立ちはだかる。
リリスが心配そうに聞く。
「どうやって倒すの?どんな攻撃もあの黒い空間が防いでしまいそうよ?」
「そうだね。でも、あれはいくつ出せると思う?1つだろうか。それとも10個だろうか。1000個ほど発動させることができるだろうか」
源は、獲物を狙うように笑みを浮かべると、ハイイグシオンが消えて、現れたそのハイイグシオンの周りに、大量の空間で囲み、光線を放った。
ハイイグシオンのまわりから数千もの光りの線が逃げ場所がない量で、あびせられた。ハイイグシオンは、自分の目の前のライトしか防ぐことができなかった。
四方八方からライトの攻撃をされ、イグシオンの肉片が散乱する。そのライトは、広場全体に広がり、源たちにまで飛んできたが、源はリトシスを発動させて、ライトの威力を無効化して、皆を守った。
ハイイグシオンとイグシオンの集団を倒すと、広間の中央に、前回同様、白い光が現れた。
そして、前回と同じ言葉が、現れる。
《神々が造られし遺跡は、願いの量とともに試練が贈与される。試練の過酷さは、与えられる恩恵をも増し加える》
光る言葉が消えると、皆の生命数値が上昇した。
『源。ハイイグシオンの体の再生をお願いできますか?』
『ん?どうしてだ?』
『さきほど、源がロック様に行った効果から少し役立つ効力の可能性を導き出しました。そのためには、ハイイグシオンの修復された体が必要になります。源』
『わかったよ』
源は、粉々になったハイイグシオンの体の欠片をリトシスで集めて、修復させていった。足りなくなった分はイグシオンたちの体の炭素を使って、再生させた。
「どうして、ハイイグシオンの体を治しているの?」
とリリスが聞く。
「ああ。ちょっと試したいことがあってね。これを龍王遺跡に置いておくよ」
源は、目の前に大き目の空間をあけて、ハイイグシオンの体を龍王の広場に移動させた。
「ねー。セルフィ。あなたのその移動させる能力は、この世界のどこにでも開けられるの?」
「いや、一度行ったところじゃないと行けないし、数キロ先までしか空間は今のところ繋げられないね。出来ても今は200km先ほどかな」
「そうなのね」
皆はまた、生命数値を大幅に上げることができて喜んでいた。今回は、イグシオンという特殊な相手だったので、戦いに参加は出来なかったが、恩恵はみなにも与えられた。
エリーゼ・プルは、セルフィに言った。
「遺跡などで倒したモンスターの体の一部を持っていけば、冒険者組合でお金に変換してもらえるのですが、それはいいのですか?」
「前回、そう言ってたね」
「本当は、その冒険者組合のまわりのモンスターが対象となるのですが、珍しいモンスターは、どこの町でも売ることはできますね。特にモンスターの核は、貴重なものとなります」
「でも、俺はいらないから、エリーゼたちが、ほしいのなら、集めてくれてかまわないよ。でも、ハイイグシオンのだけは、今回は俺がもらうね」
「分かりました。では、集めて、換金したら、みなさんに平等に分けることにしますね」
「あーそうか。そこまでしてくれるのなら、俺の分は、エリーゼにあげるよ。換金して、みんなに渡してくれるのも大変だからね」
「もしよろしければ、丸ごと持っていけないでしょうか?一部だけでもお金になりますが、珍しいモンスターなら丸ごと持っていくと、高値になるんです」
「なるほどね」
源は、目の前に空間をあけて、倒した20体のイグシオンの体もリトシスで浮かせて、龍王遺跡に移動させた。
「このイグシオンの遺体は、レジェンドの地下の冷凍庫に入れておくよ。また、ボルフ王国に行くときに、エリーゼたちに渡すから、頼むね」
「はい!分かりました」
源は、黒色の封印の珠も手に入れ、地下6階へと向かって、狩りを続けた。