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108章 ミカエルの活躍

「ミカエル。頼んでおいた、ものは製作できたのか?」


「はい。セルフィ様。赤外線探知。空気流動探知。超音波探知。レーザー探知。どれも正常にソースの中に組み込むことができました」


赤外線探知は、熱による探知だ。絶対零度以外の温度を生じさせる物体には、それ固有の熱エネルギーを発しているので、そのエネルギーを感知できるのが、赤外線だ。サーモグラフィとも言われる。


空気流動探知は、源のリトシスは例外だが、すべての生き物、あらゆる物が動くと、空気が揺れ動く。世界は、空気という水の中で生きているようなもので、水の中を動けば水がどうしても動いてしまうように、空気もどうしても動いてしまうので、その空気の流動によって探知する機能だ。


超音波探知は、2種類あって、こちらからコオモリのように超音波を出して、その超音波の跳ね返り具合で、対象の形や位置を把握するものと、蜘蛛のように体毛によって、超音波を把握して、ものを見る方法だ。蜘蛛はその方法で人の300倍の知覚を持つことができていると言われている。まだ蜘蛛やコオモリほどの高い探知能力では開発できてはいないが、ソースの数が増えれば数の力で補い使える。


レーザー探知は、人には見えないレーザーの線を飛ばして、そのレーザーに触れられることで探知できる機能だ。森の中にグラファイロープを張り巡らせていたが、それのレーザー版といったようなものだ。ただの一本線のレーザーではなく、四方に網状にしたレーザーを照射して探知できる。そのレーザーは肉眼ではみることができない。


これら5種類のものを新たに把握できる知覚として取り入れることによって、源は対象の動きを認識しようとした。今までも聴覚などを利用して、愛の計算によって修正し、探知機能を増幅させて利用してきたが、そのどれにもサムエル・ダニョル・クライシスの動きは捉えることはできなかった。


リトシスは源がその対象を認識してはじめて発動する能力なので、探知できなければ、効果を発動させることが間に合わない。源は、ミカエルを獲ることで、探知機能を大幅にあげたのだ。

ミカエルから得た新しい探知機能の種類は今のところ5つだが、ミカエルのソースの数は数万を超える。目を数万手に入れたようなものなのだ。源にとってユダ村に来た本当の理由は、この膨大な探知機能を手に入れるためだったのだ。


新しい5つの探知を持ったからといってサムエル・ダニョル・クライシスの動きを認識することが出来るとは思わないが、探知を増やすことは、源のリトシスの効果をあげてくれる。


だが、問題は、ミカエルは、源の脳とは切り離された存在だということだった。愛は、現実の世界の脳にプラグインされているので、その能力をフルに利用できているが、ミカエルは、そうではない。

リトシスは、自分の体さえも修復できるものなので、リトシスを使ってまたミカエルを脳にプラグインして、利用しようかと思った。源は人工知能チップをどこの脳の場所にさせばいいのかの研究をしていたので、出来ないことではない。


しかし、今の源の体は、プログラムのようなもので、もちろん、ミカエルも、ミカエルのソースもプログラムの中の1つでしかない。仮想空間の中の産物でしかないということだ。


わざわざ、プログラムをリトシスで打ち直し、脳にいれるということをする必要もないのではないかと考えたのだ。


目の前の空間と離れた場所の空間をつなげたように、離れたプログラム同士をつなげてしまうという発想だった。


源は、それに気づいて、ミカエルの脳であるブレインに手を置いて、自分という存在のプログラムと同調させて、ミカエルを補助機能として、脳で認識できるように組み替えた。


『ミカエル。聴こえるか?』


『はい。セルフィ様。聴こえています』


「よし!」と源は、拳を握った。


手術などをする必要もなく、プログラム同士をつなげることに成功した。


ただ、愛とは別種のものだ。愛はリアルの体の脳に埋め込まれたAIチップであって、この世界では、霊的な存在のようなものである。なので、ミカエルは、プログラムの体の源とつながっていて、愛は、リアルの源の体とつながっているので、この両者は、繋げることはできないのだ。


ミカエルのほうは、源の声は聴こえるが、愛の声は聴こえない。しかし、愛は、源と一心同体のようになっているので、ミカエルの声まで聴こえる。源が認識した時点で、愛には伝わっているのだ。


愛の存在は、ミカエルにも測ることはできないということだ。


ただ、源は、ミカエルも愛のように利用できるようになった。


愛は皆には利用させることはできないが、ミカエルなら皆も利用することが出来るようになるかもしれない。しかし、プログラム同士をつなげてしまうのは、リトシスを持っている源ならいいが、他の人には勧められない。


なので、皆には、ナノで造られたナノアイコンタクトと骨格に振動を送り、ミカエルの言葉などを伝えられるナノイヤホンをほしいひとは与えようと考えた。


愛と比べれば、まだまだミカエルは、赤子同然の機能で、計算速度などは、遅すぎるが、無いよりはましで、使えば、性能は極端に劣るが、愛と同じような効果を得ることができる。


『ミカエル。今の施工工場での生産結果を教えてくれ』


『はい。セルフィ様。現在、ブレインは、25台造られつなげられています。ソースは2万5千を超えました。施工工場は10個と増えています。5cmだったソースは、1cmの大きさにまで縮小することに成功しています』


ミカエルの体であるソースは、1つ1つがあらゆる知覚探知機能がある。まだ精度は低いが、源にとってはそれほど問題はない。なぜなら、精度が低い探知された情報も、愛によって修正され明確化できるようになるからだ。ミカエルの性能がよくなればなるほど、さらに愛がその情報を強化して瞬時に源に送り返してくれるようになるだろう。


『ミカエル。設計図を渡すからナノアイコンタクトとナノイヤホンの製造もしてくれ』


源は、愛にそれらの設計図を作らせ、その設計図の情報をリトシスによって、ミカエルに伝達した。


数日後、3つのナノアイコンタクトと3つのナノイヤホンが造られた。



源は、ロックとリリス。そして、ニーナを呼んで説明する。


「みんなを呼んだのは、皆に俺が今研究しているミカエルという道具のチェックをしてほしいと頼むためだ」


リリスは、聞く。


「ミカエルとは一緒に、遺跡などにも行っているけど、それほど邪魔だとは思わなかったわ。大丈夫よ」


「あー。それは今までのことだね。今回は、またミカエルの新しい機能をみんなに試してほしいと思ってるんだ」


「新しい機能?」


「ミカエル。ソースを10個ぐらい持って来てくれ」


ミカエルは、源の体をよじのぼって、10個のソースが源の掌に乗った。


「以前は、5cmほどだったけれど、今は1cmのソースも作ることが出来るようになった。この1つ1つがミカエルの体であり、目であり、耳なんだ。新しく発明したのは、このナノアイコンタクトとナノイヤホンだ」


リリスは、まったくみたこともない小さな物をみて、頭をかしげる。

「何それ?そんな小さなものが役に立つというの?」


「役に立つのかどうかをチェックしてほしいんだ。簡単に説明すると、すべてのミカエルがみている映像や聞いている音などをこのナノアイコンタクトとナノイヤホンをつければ、リリスやロック、ニーナが、まるで自分が見聞きしているかのように知ることが出来るようになるんだ。まずは試しにつけてみてくれ。ナノアイコンタクトは、両目につけるんだ」


「目に!?そんな大きなものを目にいれるなんて、出来るの?」


さっきは小さいとか言ってたのに・・・と思いながら説明する。


「最初は慣れないかもしれないけれど、以外とつけると気にならないよ。つけてみてくれ」


3人は、源の言われるまま、目にナノアイコンタクトをつけて、耳の穴にナノイヤホンを付けた。

付けていなかった時には見えなかったあらゆる表示がまわりに現れる。ミカエルによって蓄積された情報を分かりやすく視覚で表していた。仲間の頭の上には、名前などが表示されていた。


「例えば、ナノイヤホンをつけていれば、離れた場所にいても、付けている者同士は、連絡のやり取りができる。そして、いつでもミカエルと話すこともできるようになる。骨格の振動で、相手の声が聞こえるし、逆に骨格から伝わる振動で、相手に話かけることもできるようになるんだ」


リリスは、驚きながら聞く。

「離れていても、マナ力をつかわずに、通信マインドシグナルが使えるということ!?」


「そういうことだね」


源は説明を続ける。

「目に入れたナノアイコンタクトは、あらゆる情報を視覚で教えてくれるんだ。例えば、ミカエル。みんなにお前がニーナと作った家の映像をみせてあげてくれ」


3人の視覚には、30戸もの家の映像が並んだ。目の前の何もない空間に映像が突然現れたのをみて、3人とも驚く。


「これらの映像は、ミカエルが記憶しているものだけれど、今現在、ミカエルのソースがみている映像もみれるんだ。ミカエル。ランダムに100個の今見ている映像を映し出してくれ」


リアルタイムで100個のソースがみている映像が視覚で確認することができた。


「例えば、ミカエルに外の見張りを頼んでいれば、家の中にいながら、僕たちは、みはりの映像をチェックできるというわけだね。何か異変があれば、その映像を赤く点滅させ分かりやすくすることも可能だ」


3人は口を揃えて言う。

「すごい・・・」


こういう使い方もある。


「ミカエル。ここの明かりを消してくれ」


そう言うと、龍王の遺跡広場は地下なので、真っ暗になった。


「どうだい。みんなこの暗闇で物がみえるかい?」


「何もみえない」


「こんな暗闇でも、ミカエルに言えば、見えるようになるんだ。ミカエル。暗視映像を頼む」


3人の視覚は、突然、まわりがハッキリとみえるようになった。


リリスは質問した。

「電気をつけたわけじゃないわよね?」


「ああ。電気は切れたままだよ。試しに、目をつぶってみたり、ナノアイコンタクトを取ってみるとわかる」


まぶたをつぶっても、映像はみえた。そして、ナノアイコンタクトを取ると、真っ暗で何もみえない。


「暗闇でも物がみえるようになるのね・・・」


「うん。これは1例にすぎない。分かりやすく言えば、このナノアイコンタクトとナノイヤホンをつければ、ミカエルと同化したようなものだということだね。ちなみに、ミカエルに「メイルインストール」と言ってごらん」


3人は、「メイルインストール」と声をかけた。


カーボンナノチューブで出来たソースが、集まり、3人の体にあった黒い鎧が、体に装着された。


「勝手に・・・・鎧が・・・」


「1つ1つがカーボン製で出来たミカエルの体ソースだから、みんなを守る鎧にもなってくれるんだ」


リリスは、源に聞いた。


「一体、何ができて、何ができないの?」


「うーん・・・それは、みんな次第なんだよ。例えばニーナには、やってもらったけれど、みんなが思い描いたアイディアをミカエルに伝えれば、ミカエルがそれを形にしてくれる。ミカエル。斧の武器をソースで作ってくれ」


ソースがまた集まり、黒いカーボン製の斧が源の手に収まった。


「みんながしたいこと、例えば、髪を切ってくれとか、そういった要望も聞いてくれるし、みんなのアイディア次第で、出来ることも増えていくんだ。だから、3人に試してもらいたいと思ったんだ」


リリスは、聞く。

「これは誰にでも使えるの?」


「そうだね。視力や聴覚があれば、誰にでも使える。でも、今のところ聖書の神様を信じる人にしか、ミカエルは使用できないようにする予定だよ」


「これは確かに凄いわ。セルフィ・・・新しい力と言っていた意味が少し分かった気がする・・・」


「今は、ニーナにミカエルを育ててもらっているけれど、時間が経つにつれて、ミカエルは賢くなっていく。将来的には、ミカエルは敵の動きを先読みして、俺たちに教えてくれることさえできるようになる」


「未来のことが分かるというの?」


「未来といっても、少し後の未来だけどね。その相手の動きを分かりやすく映像にしてくれるんだ」


「セルフィ。ミカエルのソースをわたしの操る動物たちすべてに1つでもつけたら、わたしの動物操作も飛躍的に強化できると思うわ」


「それはいいアイディアだね。ナノアイコンタクトとナノイヤホンを付けていれば、そうミカエルに命令すれば、動物たちにソースがついて、その情報をリリスに渡してくれるはずだよ」


「ミカエルは、わたしたちを鎧で守ったり、わたしたちの目や耳になったり、わたしたちの代わりに何かを造ったりもできて、さらに兵士として戦ってもくれるのね?」


「そういうことだよ。リリス。呑み込みが早いね」


ニーナは手をあげた。


「何だい?ニーナ」


「えとですね・・・もし、ミカエルに同時に命令してしまったとしたら、どうなるのですか?ロックさんとわたしが、別々の違う命令をミカエルに同時にしてしまったら、ミカエルは困ってしまいますよね?」


源は笑顔で答える。

「良い質問だね。大丈夫だよ。ニーナ。ミカエルは生き物ではなく、機械、道具だから、同時にロックとも関わり、同時にニーナとも関われるから、100人同時でも、個別に対応をすることができる。もちろん、ソースなどの数によるけれど、聞き逃すということはないから安心して。もし、そういった不具合があったら俺に教えてくれると助かるよ」


「わたし・・・ミカエルは話ができるからどうしても、道具とか機械と思えないの・・・だから、ミカエルが困るかなって思ったの・・・大丈夫なのね」


「その気持ち分かるよ。みんなもミカエルを利用するようになったら、ニーナと同じように、物質モンスターのように思えてしまうようになるかもね。まーすこし、能力が高い物質モンスターとでも思ってくれればいいかな。その他、ナノアイコンタクトとナノイヤホンを使って何か違和感があったら、ナノイヤホンで、俺に連絡してくれ」


3人はうなずいた。

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