105章 新しい力を求めて3
ニーナのおかげで、ミカエルは、次々と言語や論理的思考を構築していった。源は、ミカエルを教育する時間を節約できたので、その間に、ミカエルの体やブレインを増やしていった。
源は、さらに、木材だけでつくることが出来る家の設計図をブレインに入れ込んで、20個のパターンの家をパソコン内で映像化して、好きな家をニーナに選ばした。その家の形も若干、愛が変更を加えている。
そして、その家のカラーなどをニーナに選ばせ、パソコンで、色々なパターンの色の製作をニーナにまかせた。
その家をミカエルに造るように指示させた。
ニーナは、モニターをみながら、マウスを使い、ブレインを利用できるようになった。そして、ミカエルと相談しながら、家を選び、ミカエルに家を製作させていった。
源は、大工道具をグラファイトで作ってミカエルに渡し、必要なだけの丸太をいくつも置いただけで、あとはニーナとミカエルにやらせた。
ふたりは、一緒に思考錯誤しながら、家を建てていった。
源は、ミカエルの個体である体のことをソースと呼ぶことにした。ソースとは、源の名前と同じ意味、源のことで、そのミカエルの体であるソースからこれから色々なものを製造していこうと考えていたからだ。
あとは、ミカエルの体であるソースも、コードを無くして身軽にしたいところだ。無線にできれば、移動距離も広げられる。しかし、電波を出すことはできても、あらゆる場所にその電波を送ることは難しい。電波を中継する子機も設置していなければ、外では使えない。その子機を動かすエネルギーも問題だ。
そこで考えたのは、外にある太陽を使えないかということだ。太陽はすでにエネルギーとして何千年も成立して、この世界で動いているわけだから、それを利用したい。
現世の太陽に近づくのは、不可能だが、この世界のダイヤ型の太陽は、現世の太陽とは違う。地球の内部なのか、この世界の内部なのかの中に太陽があるので、現世の太陽のような強烈すぎる熱量があるわけではない。
だから、近づくことは可能だろう。それに源は火耐性もあるので、大丈夫だ。あの太陽につないでおけるコアエンジンのハートさえ作ることができ、子機もそこに固定できれば、いいわけだ。
源は、コアエンジン、ハートを熱量からまもるための工夫を愛に考えさせて、それを元に製造した。その内部に、子機もいれて、太陽のエネルギーを使って両方動かし続けるのだ。
試しに、小型太陽でやってみたところ成功した。エネルギーさえ得れば、小型太陽なら問題なかった。
源は、1週間かけて、太陽に向かい、空を飛んで、太陽に近づく。ドラゴネル帝国内の太陽は1つで、その太陽に子機を取りつけようとしている。やはり、近づくたびに熱量は増えていく。リトシスで熱量を無効化して、太陽に辿り着いた。そして、リトシスで、その太陽にハートと子機の入った球型の熱遮断壁を太陽の下にぶらさげた。
その後、リトシスの効果から切り離して、数分待った。
動いているのかを確認した。ハートも子機も正常に動いていた。子機と言っても中型中継で、かなりの範囲にまで電波を飛ばすことができる優れたパワーを持つものだ。地下や建物内に入れば、電波が届かなくなり、ミカエルの体であるソースは動かなくなってしまう。
そういった場合は、5時間だけ、ミカエルの意識を断ち切り、また電波を流すところまで、移動するように個別にプログラミングした。ミカエルとの連絡は取れなくなるが、電波を求めて、ソースは5時間だけ動くことができるわけだ。
5時間以上、電波が届かなければ、そのソースは完全に動かなくなり、自己崩壊するようにした。
ブレインであり、ミカエルの電波を太陽の子機に届かせる電波塔は、木の中に上手く隠した。外に出したままだとあきらかに不審だからだ。
ユダ村は、村人のマナによってマインドレスで消され視覚では見えないようにされているので、電波塔も見られることはないのだが、用心するのにこしたことはない。
もちろん、龍王遺跡の内部には、すべて電波を飛ばしてあるので、ミカエルのソースは、龍王遺跡の中でも、外でも自由に動くことができるようになっている。
源は、なんとなくダイヤ型であるこの世界の太陽に手を伸ばして、リトシスで少し削り取ってみた。すると小さい太陽を手に入れることができた。手にした太陽の一部は、それ自体だけでも光輝いている。驚いたのは、削り取ったはずの大きな太陽の場所が、まるで修復されるように元通りになったことだった。どうやら龍王は、この太陽から太陽の欠片を手に入れたと思われる。無限に太陽が修復されるのなら、エネルギー問題は無くなるだろう。これもいい発見をしたと源は思いながら、ユダ村へと戻っていった。
――――夜の間に、ソースを連れて行って、ニーナに外でも、ミカエルの体が動くのかを試させたが、まったく問題なく動いた。
夜の太陽は月の光りとなってエネルギーの放出が激減するので、どうなるかと思ったが、大丈夫だった。
月のエネルギーでも十分すぎるほどだった。
ミカエルのソースからは、コードは無くなった。ソース自体も子機にして自分の体で電波を中継させるようにした。これで例え地下で活動したとしても、電波が滞ることはなくなるはずだ。
ソースには小さなスピーカー、サウンドボックスを付けた。
あとの問題は、太陽エネルギーによって蓄積されるバッテリーだった。ソースの体全体で、太陽エネルギーを集めるようにしているが、バッテリーが大きすぎる。
このバッテリー問題さえ解決できれば、もっとソースは小さくできる。
表示させるだけなら小さなバッテリーでもいいのだが、物を動かし続けるというのはエネルギーがいるので、どうしてもバッテリーが大きくなってしまうのだ。
悩んでいたが、源は考えた。あの小さな太陽は、なぜ小さいのかということだ。
たぶん、龍王は空に浮かんでいる太陽の一部を削ったものだと思われる。
試しに、小さい太陽をさらに小さく削ってみると、さらに小さな太陽のようになり、それも光りと熱量を出した。
太陽の光りでエネルギーを蓄えるのではなく、太陽そのものを内蔵させてしまうことができるようになり、一気に、ソースは、小型化できた。
5cm四方の四角いソースが作れるようになった。
太陽の光りが遮断されても個別に動くことができる。
源がそれらを作っている間に、ニーナはミカエルと一緒に、1つめの家を龍王遺跡第二の間で、完成させた。
「セルフィ。みて、ミカエルが家を作り終えたのよ!」
ニーナは源になれて敬語を使わないようになってくれていた。
「おめでとう。素晴らしい家だよ。ニーナが考えた色のデザインもいいね。ところで、ミカエルと接していて違和感とか何かないかな?」
「うーん・・・。ミカエルは、分からないことが沢山あるから、質問を良くしてくるわ。でも、生まれたばかりの子どもなら質問をするのは当たり前よね?」
「そうだね。そこは問題ない。むしろ質問できることが素晴らしい」
「あとは、よく許可を求めてくるわ。これはしていいでしょうか?とか聞いてくるの」
「そこもいいことだね。していいことと、してはいけないことをニーナから学んでるんだよ」
「今のところ気になったのは、それぐらいかな」
「そうか。じゃーニーナとミカエルには、次の仕事を頼もうと思ってる」
「何?」
「ユダ村の司祭様のところにいって、家の建造の許可をもらって、ユダ村に、ニーナたちの素晴らしい家を提供してきてほしいんだ」
「それはいいわね。こんなに素晴らしい家ならユダ村の方達も喜ぶと思うわ。ミカエルも外に出してもいいのね?」
「問題がないようだから、いいよ。でも、何か問題があったら、すぐに連絡して、連絡方法はもう分かるね?」
「うん。ミカエルを通して、セルフィに報告すればいいのね?」
「そうだね。じゃ―早速、仕事に取り組んでくれ」
源は、ニーナたちが、家を作っている間に、あらゆるものを製造できる加工工場を愛と一緒に練って、設計図にした。その設計図に沿って、リトシスで、施設を作り始めた。
ミカエルのソースがすべてを作ることが出来るわけではない。
本当なら施工工場を造ることも、ミカエルにやらせたいが、ミカエルはリトシスで作った道具がなければ、ほとんど何も作れないのだ。その道具にあたるものが、加工工場だ。
工場施設さえつくれれば、ミカエルに頼んで、あらゆるものを製造させていける。もちろん、リトシスと比べれば圧倒的に時間がかかるが、それもいつかは、量でカバーできればいいことだ。
リトシスは、早くて優秀なものだが、源しか持っていない。だけれど、加工施設はいくらでも作ろうと思えば作ることができるのだ。
ニーナたちが1つ目の家を外で建てている間に、源は加工施設のあらゆる機材を作り終えた。
ブレインに機材の使い方をインプットして、ミカエルに鉄の短剣を作るように指示をした。
すると、1時間ほどで一本の鉄の短剣を作り上げた。
「よしよし。いいぞ。」
源は、へたくそな絵の才能を使ってブレイン内に、その絵をインプットして、それを鉄の素材でミカエルに造らせると、変なブタの模型を1日で作り終えた。
「うーん。へたくそなブタだが、いいぞ」
こんなむちゃくちゃなものでも、創意工夫して作り出せることが分かった。
施工工場を使ってミカエルに、ブレインを作らせてみた。設計図通りに造られるのか、源は待った。
数日して、スーパーコンピューターのブレインが形になっていることを確認すると、次は、ソースを作るように指示をした。ソースが増えれば人手が増えるようなものだからだ。
すると、一日もかけずにソースを作り出すことに成功した。まだ、カーボンナノチューブは作り出せないが、源がカーボンナノチューブを用意すれば、それを加工してソースを作っていくことができる。
スーパーコンピューターはまだまだ時間がかかるが、ソースなら比較的簡単に作り出せる。
そうやってソースを増やしながら、施工工場も、もう1つ作るように指示をした。
施設が増えれば2倍のスピードで製造できるようになる。
源は、源で、ソースを作り続け、施工工場も作り続ける。リトシスでも作り、ミカエルのソースでも作り、加速度的に、速度を増していった。
ソースが増えれば、ニーナの家も多く作られていった。
ソースが、1万個を超えるほどになったころには、ブレインもミカエルは作り終えた。そして、そのブレインを他のものとつなげ、また計算速度を増した。
施工工場では、ナノレベルでものを作ることができるようにもなった。リトシスと比べると圧倒的に速度は遅いが作り出せることが重要だ。リトシスと比べると物凄く時間がかかるが、これでミカエルだけでカーボンナノチューブも作ることができる。
ソースや施工工場、ブレインを作り続けることを繰り返していけば、スペースに困ることになる。いくら龍王遺跡第二の間であっても、スペースがなくなってしまう。
そこで、安全な場所をミカエルに捜索させ、その場所に、地下空間を作り、龍王遺跡とまったく同じ空間を作らせてみた。
その場所で大量の施工施設とブレインを増やしていく。そこで生まれたソースは、離れた場所から外に出られるようにして、絶対にその場所がバレないようにした。
一日20時間、フル活動で、ミカエルは動き続け、生産し続ける。
ユダ村やレジェンドでは、ニーナは、有名になりはじめた。家を建てる物質モンスターを操る少女という噂が流れていた。
ニーナも機密保持のために説明できなかったので、その噂に乗っかっていた。
シンダラード森林からユダ村に移動して、もう3か月になる。しかし、その間に、次から次へとミカエルは成長し続け、生産性を上げ続けていた。
このままいけば、源のリトシスの作業量を超える生産性まで手に入ることができる。リトシスを2つ保持したようなものになる。
そうすれば、源はリトシスで製造しなければいけない時間を自分の鍛錬の時間に費やすことができるようになるのだ。