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102章 祝賀パーティ

ドラゴネル帝国連合軍は、待機して勢力を呼び寄せるということもできなかった。それは源たちが奪った兵量が関係していた。兵量もさることながら、その中にはドラゴネル帝国軍への軍資金も積まれていたのだ。一度撤退して、再度準備を整えるための軍備ができず、完全なる撤退を行ってくれた。


世界戦力を牛耳るドラゴネル帝国連合軍との戦いは、結果的には、勝利したが、それは結果論にすぎなかった。


もし、はじめからレジェンドへの脅威を理解して、ドラゴネル帝国連合軍が動いていたとしたら、各国の1軍クラスの精鋭部隊が、出兵していた可能性がある。


本来のドラゴネル帝国連合軍の威力としては、半分にもみたない力だったはずだ。


それは、特に兵力が優れているわけでもないボルフ王国を屈服させるためだということで、結成された連合軍だったからだ。一番警戒されていたのは、軍事国家であったペルマゼ獣王国だったことだろう。


レジェンドは戦争をするための口実として、少し使われた程度の認識でいてくれたことが、今回の勝因だったはずだ。


それほど舐められていたにもかかわらず、その戦いはギリギリだった。1度目はドラゴネル帝国連合軍を撤退させることが出来たが、2度目はとてもじゃないが、防ぎきれない。


何といってもサムエル・ダニョル・クライシスは、強すぎた。サムエルと一騎打ちしていたとしたら、完全に負けていた。俺の命はなかっただろう。敵の兵を人質にして、無理やり撤退させたというのが、本当のところだ。


サムエル・ダニョル・クライシスに至っては、俺は完全なる敗北を味わったのだ。


まったく手も足もでなかった。愛が俺にかわって戦闘モードになったが、それでも、サムエル・ダニョル・クライシスには、勝てなかった。


このままでは、レジェンドは追い詰められていく可能性がある。今回の戦争でその力をみせつけ、天使の姿も見せてしまったからだ。各国が本気で動くかどうかは分からないが、次にまたドラゴネル帝国が攻めてくるとしたら出し惜しみの無い勢力を出してくるだろう。


サムエル・ダニョル・クライシスは、言っていた。俺は経験値をあげていないただのスキルに頼った戦い方だと・・・。


その通りだ。経験値もそうだが、熟練度もお粗末で、せっかくリトシスを持っていても、それを使いこなせないのなら、また同じ目に合うだけだ。F-1のマシンを初心者マークの者が使い続ければ、事故になるのは時間の問題なのだ。


だからといって、今から熟練度や経験値を積む時間を彼らが与えてくれるとは思えない・・・。


だからこそ、第三の力を生み出そうと源は考えた。


この世界は、戦闘という格闘技の戦闘能力スキルとマナという不思議な力によるものが前提で動かされているようだ。しかし、この2つ以外の3つめの考え方があったとしたらどうだ?


そして、それをレジェンドだけが保持できたとしたら、レジェンドは、次に攻撃されても、そこそこ戦えるようになるかもしれない。


この3つ目に早く手をつけなければいけない。


―――源が気を失ってから三日後に、目を覚ました、その夜の次の日、レジェンドでは、お祝いが行われた。


壮大なパーティだ。レジェンドで戦った16000人と援軍として駆けつけてくれた20万も含めて、パーティが執り行われた。


倉庫に保管しておいた食料を全部使い果たす勢いで、食事は出されていった。


リリスによって、ドラゴネル帝国連合軍と三国同盟軍は、確実に撤退となった確認をされ、本当の勝利を祝うためのお祝い会だった。


ユダ村で心配して待っていてくれているレジェンドの村人には悪いが、お祝い会は、行われた。ユダ村にはリリスが連絡をしてくれていた。


あらゆる音楽が鳴り響き、歌を歌う者もいれば、お酒に酔う者もいて、踊っては楽しむ者もいた。


みんなが、俺のために場を用意してくれていた。


大勢の人盛りの中で、マイクもなしで話さなければいけなかったが、源は、リトシスの応用を愛からみせられたので、それを使うようにした。愛ほどではないが、範囲を広げて、空間を作り出し、そこからまた、空気を振動させて、声を拡張させた。


何十万の人たちにこれで声が届く。


源が、現れると、もの凄い大歓声が沸き起こった。


「うわああああ」


万単位の人たちの声は、圧倒的だ・・・。


源は、心から嬉しかった。貧民地の人たちももちろん、参加してくれて、みんなで集まって、仲良くできる喜びをかみしめる。


源は、普通に話しかけるように語り始めた。


「みなさん、奇跡が起こりました」


源の声に反応して、また大歓声が起きた。


「俺たち、レジェンド、貧民地、妖精族の連合軍が、ドラゴネル帝国連合軍と三国同盟軍から勝利を得たのです」


「「「うおおおおおお!!」」」という声が鳴り響く。


「わたしたちは、力が強いわけではありません。その点、ドラゴネル帝国連合軍はとても強かった。そして、三国同盟軍は俺たちを裏切った。そんな絶望的な中でも、皆が集まれば、それに勝利できることを証明しました」


歓声が起こる。


「ひとりひとりの力は弱くても、これだけの誠実な想いが集まれば、奇跡も起こるのです」


「「「うおおおお!」」」


「ですが、この勝利には、犠牲者の尊いいのちに支えられたのです。命を懸けて今生きているわたしたちを彼らは守ってくれたのです。神様のお導き、そして、彼らが勝利を与えてくれたのです。彼らとは天国でまた出会ってお礼を言いたい」


皆も同じ想いだったのだろう。源は意識が無く寝ていた三日間だったが、戦争終了の次の日には、皆は犠牲者を丁寧に埋葬していた。今も悲しみをかみしめる。


「またいつドラゴネル帝国が、わたしたちレジェンドに攻撃をしかけてくるのか分かりません。もしかすれば、数年もしないうちに、再度攻めてくる可能性だってある。正直、今のままでは、本気になったドラゴネル帝国連合軍を追い帰すことはできないでしょう。ですから、わたしは、少し旅に出ます。皆さんに力を与えられるものを何とか手に入れるために、旅に出ようと思います。そして、みなさんが、安心して暮らせるためのものを出来れば、数カ月で持ち帰りたいと思っています」


「それは何ですか!!?」


という声があがった。


「今は、ハッキリとは言えません。それが可能なのかも正直わかりませんが、やらなければ、未来に何が起こるのか分からないまま生きていかなければいけなくなるので、それをわたしは、1%でも克服したいですし、そのアイディアがあるのです。ですが、今は、第一次ドラゴネル帝国連合軍との戦争に、わたしたちが勝利したことを祝いましょう!そして、これからも皆で力をあわせて、難題に挑みましょう。


今回、レジェンドに援軍としてくれた方達には、レジェンドから報奨金を出させてもらいます。何も報奨を出さないことはしません。亡くなった方達の家族には、保証を手厚くしようと考えています。そして、援軍に来てくれた方達には、次、もし、危機が迫ったのなら、レジェンドが援軍として向かうことを約束します。今日は、みんな楽しんで行ってください!」



源の話で場が盛り上がり、また宴会がはじまった。


貧民地の人たちは、報酬は受け取らなかった。それはレジェンドがもともと貧民地の援軍として出たものだという理由だったからだ。本当なら貧民地からレジェンドに報奨金を渡さなければいけないとまで言ってくれた。


妖精族には、金貨1000枚を渡した。


狼王の金貨の価値は、今の金貨の10倍の価値がある。


レジェンドの村人たちをかくまってくれた、ユダ村にも、金貨50枚を贈ることにした。


最初に1万で援軍に来てくれたウオウルウたちにも報酬をあげようとしたが、お金は使うことがないのでいらないと断られた。なので、このお祝い会で食事を振舞う報酬にした。また、戦争のために作った武具をそのままあげることにした。武具なら今後も役立てることもできるだろう。



ロックやリリスが、何か心配そうな顔で話しかけてきた。


「セルフィ。大丈夫か?あの戦いで何かあったんだろ?」


「ああ。そうだな。俺はサムエル・ダニョル・クライシスに完全に負けた。そして、奴には絶対に勝てないと思って、帝国連合軍の兵士を人質にして撤退させたんだ。だから、俺の完全なる負けさ・・・」


ロックは、反論することはなかった。

「あいつは異常すぎた。俺もまったく手も足も出なかった。だから、セルフィ。お前は、自分を鍛えようと旅に出ようとしてるんだろ?」


「うーん・・・確かに鍛えなければいけない。でも、鍛える前に試したいことがあるんだ。そのために旅に出ようと思う。旅といってもユダ村にだけどな」


「ユダ村に?あそこには砂のようなものしかなかったじゃないか?」


「まー君からみればそうなんだけどね。説明はしにくい・・・とにかく、一カ月、もしくは二カ月、俺だけで旅をさせてくれ」


「そうか・・・セルフィ・・・いや、源がそういうのなら、それが正しいはずだ。俺もお前が伝説の天使だと信じ始めてるんだ。俺は最初とはまた違う想いで、お前についていくからな。そして、一緒にレジェンドのためにも強くなろう」


「ああ。また戻ったら、ロックがいうように、俺たちの訓練もしよう。その時は、リリス。君も一緒にどうだい?」


源は、隣で聞いていたリリスにも質問した。


「もちろんよ。セルフィ。わたしも強くならなければいけないと思ったわ。あのサムエル・ダニョル・クライシスは、わたしのコンタクトさえも通じなかった。それはやっぱりわたしの経験値が少ないせいだと思ってるの。セルフィたちとなら、強くなれると思ってる。あなたの帰りを待つわ」


「うん。お祝いの席だけど、俺は一度、ユダ村に行って、レジェンドの村人2000人を迎えに行こうと思う。その後のレジェンドの守りは、君たちにまかせようと思う。報奨金は、みんな渡してあるし、ボルフ王国もすぐには動かないはずだ。ドラゴネル帝国連合軍を追い帰したレジェンドにすぐに攻め込むようなバカなことはしないだろう」


「分かったわ」


源は、レジェンドの村人を迎えに行こうとすると、司祭様が、源を呼び止めた。


「セルフィ様!」


「司祭様。どうかされましたか?」


「セルフィ様は、どこに旅に出ようとされているのでしょうか?」


「ユダ村です」


「そうですか、あの龍王の遺跡に眠っておった鉱物が、セルフィ様の目的でしょうか?」


「さすが、司祭様。まさにその通りです」


「では、その数カ月の間、レジェンドを引っ越ししてはどうでしょうか?」


「引っ越し?」


「セルフィ様は、レジェンド全体をひとつの母船として御造りになった作戦も用意されていました。では、この機会にあたって移動させてみてはどうでしょうか?ウオウルフの方たちとは、しばしお別れにはなりますが、レジェンドを守るのなら、それがよろしいでしょうし、ドラゴネル帝国からしても、突然レジェンドが消えたということになれば、攻め込もうとする議論も少しは遠ざけることができるのではないでしょうか?」


そうか・・・ドラゴネル帝国軍は、この高い壁をみていた。それが突然消え去ったとしたら、どうだろうか・・・滅びたと思うことも、またどこかへ消えてしまったと考えることも、相手を混乱させる良い手かもしれない。出来れば帝国とは戦いたくもないからだ。


「分かりました。では、今のこのお祝い会がおわり、援軍に来てくれた方達を送り届けて、レジェンドは、ユダ村へと移動させましょう。もちろん、レジェンドの皆さんの許可を得てからですけどね」


「分かりました。わたしたちからレジェンドの村人には伝えておきますのじゃ」


「ありがとうございます」


数日間、そのお祝い会は続き、源は、貧民地の農民をボルフ王国に送り届けた。4000人の農民兵には、ミスリルの装備は返してもらった。


10万の貧民地のひとたちは源が送り届けた。


リリスとリタのことは、心配だったが、ボルフ王国は、レジェンドを恐れてか、ふたりには何もしてこなかった。当分の間、ボルフ王国も大人しくしているだろうと思える。


大人しくしている、その間の時間を有効に使えるのかがカギになる。


そして、1万のウオウルフたちは、各地の場所へとそれぞれ帰って行った。


レジェンドの兵士たちは、みなウオウルフたちに抱き付いて涙しながら、見送っていた。相棒となった仲間だったからだ。


そして、レジェンドのウオウルフたちは、ウオガウとともに、この土地に留まってもらうことにした。何かあれば、リリスの鷲で伝えるようにということにした。


妖精族の10万の援軍は、ユダ村の近くまで、送り届けることにした。

リリスも、レジェンドに付いてきてくれることになった。


源は、レジェンドの戦士1200人と10万の妖精族の援軍をレジェンドの壁の中に、押し込んだ。さすがに10万もの生き物が入るには狭すぎるが、我慢してもらうことになる。


そして、源はリトシスを発動させると、レジェンド全体が、地下ごと浮きあがった。


レジェンドは、要塞として1つの固まりに造られていたのだ。本当なら、もう戦えないとなったら、みんなで、レジェンドごと逃げようと考える作戦もあったが、それが出来ない状態だったのだ。それを今利用する。


巨大な壁もすべて1つでつながり、巨大な要塞レジェンドが空に飛ぶと、ユダ村の方角西へと向かっていった。


そして、1日かけて、ユダ村近くまでいき、妖精族に感謝をして別れた。


1200のレジェンド兵士と炊事などを手伝ってくれた500人を連れて、待ってくれている2000人の村人たちの待つユダ村へ200km/hで向かった。


ユダ村に着くと隣に、レジェンドを置いて、固定させる。


それを待っていたレジェンドの村人が自分たちの家族と再会して、大変喜んだ。


もう二度と会えないと思って別れたからだった。なのに奇跡が起きて、こうやって、皆が再会できた。


これから数カ月は、このユダ村の土地で過ごすことになる。食料は、地下の保管庫のものを使う。シンダラード森林の畑は、そのまま野ざらしにして、野菜を育てる。一応、森の動物たちに食べられないようにウオウルフたちに、見張りだけは頼んでおいた。

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