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5話

 瞬時に飛び出し、イトヲカシは蹴りを、ランドは手に持つ剣にて首を飛ばした。


 だが、その鳴き声は聞こえていた様で、フゴフゴと広場で盛っていたオーク達は武器を持ちながら集まりだし、こちらへ突撃してきている。


「ち、バレたか」

「よっし、ばれちゃあ仕方ない! 真正面から行くよ!」

「……これが狙いだったわけじゃ無いだろうな?」

「なんの事かアタイには分からないね!」


 不敵な笑みを見せると、すばやい動きでオーク達へと飛びかかるイトヲカシ、ランドはイトヲカシの後ろから攻撃を仕掛けようとするオークの処理をする。


「オラオラァ! もっと骨のある奴はいないのかい!」


 拳につけたガントレットにてオークの骨をイトヲカシは次々と砕いていく、流石に頑丈なオークも脛椎などをへし折られると死んでいくのだが、その他の骨を折られた程度では動きが鈍くはならない。


 目を血走らせ、涎を垂らしているオーク達は次々とイトヲカシへと殺到する。

 その凶気に満ちた行動は、発情期故の見境無い欲求をぶつけるためのものだ。


「はっ、アタイとヤりたいってんなら生まれ変わって強くなって出直しな!」


 だが、悉くイトヲカシに吹き飛ばされ攻撃をかすらせることすら出来ない。


 その光景を見ていたランドは、こそこそと移動しつつ、吹き飛ばされてきたオークに止めを指していた。


「さすがは暴れん坊。Aランクってつくづく化け物だな……マスターしか見たこと無いけど」


 初めてイトヲカシの戦闘を見たランドは、驚きを通り越し、呆れた顔で見ていた。

 まるで災害の様な理不尽を見せるイトヲカシはあまり怒らせないようにしようと胸に誓う。


「てことは本当に訓練の時は手加減だったのか……勝つ気はないけど、敵わないな」


 ランドはまた飛んできたオークの首を跳ねてため息を吐く。


 オークの止めをさすのも、ランドは選定していた。

 イトヲカシへと突っ込み、吹き飛ばされるオーク達であるが、タフゆえに、何度もぶつかりに行くのだ。

 

 ランドとしては吹き飛ばされた奴らをさっさと始末したい所だったが、踏みとどまらざるを得ない。

 暴れたり無いイトヲカシの戦闘を、少しでも長引かせなければ街に戻ったあと、自分が消化に付き合わなきゃならない可能性があるからだ。


 そのため、オークたちには是非とも頑張ってもらおうと思い、10回吹き飛ばされた者に関しては、その命を断っていた。


 なお、イトヲカシに群がるのは雄で、その数は残り10匹ほどと言ったところか。

 ランドは広場を動き回りながら確実に数を減らしているのだが、それは雄のみであって雌の方はあまり減っていない。


「ブギヤァァア」

「フゴォォ!」


 ランドが動き回っているのは、此方にも絶え間なく襲いかかるオークの雌から逃げていると言うこともあったりする。


「どうにかしてマスターの方に擦り付けられないかな」


 走り回りながらも何処か余裕のあるランドは、発情中のオークに追いかけられながらどうやって楽に終わらせられるかを考えていた。


 擦り付けられれば、ランドとしては楽になり、イトヲカシにとってもストレス発散になる。win-winだと考えていた。


 倒すこと事態そこまで難しいことではないが、先日倒しまくったことにより、気が滅入る位にはオーク退治には飽きていた。


 そして走りながらも飛んできたオークの雄に止めを指す。


「ランドぉ! これは一応試験だからな、なんの成果も上げないんじゃあBランクにはあげられないよ!」

「ちっ、バレてたか」


 擦り付け様としたことはバレたらしく、舌打ちと悪態をつきながら体を反転しその場で立ち止まる。


「ブギヤァァア!!」

「フゴォォ!」


 好機! とばかりに目を血走らせ三流の敵キャラの如く飛びかかってくるオーク達。

 それを難なく横に避け、ヘッドスライディングを決めた1匹のオークの頭蓋に剣を突き立てる。


 普段のオークならば頭から突っ込むようなことはしないのだが、発情期となれば話は別だ。

 冷静さを欠き、動きがかなり雑になる。それでも一般人がまともに攻撃を食らえば確実に死ぬ寸前までは追い込まれるのだが。


 仮にもBランク目前のランドからすれば完全に舐めきっていない限りはどうとでも対処ができる。

 このように暴走状態のオークとは何度も戦ってきたのだから。


「さっさと終わらせることにするか」


 残り8匹ほど残っているオークの雌達は嘶きながら、ランドの周りに散開し、飛び掛かるタイミングを見計らっていた。流石に仲間が倒され、少しは冷静になったようだ。

 

「関係は無いけどな。むしろ丁度良かった」


 ランドはそう言うと剣を構える。そして己の体内に循環する血液の様なものを感じ取り、真価を発揮させる。


「付与──[回転]!」


 そう念じると右足を軸として勢い良く回転を始める。その勢いはどんどん増していき、殆ど竜巻となる。

 マジでただ回っているだけなのだが、その威力の高さによって周囲のオークは強風に煽られ、勢いを殺しきれずに頑丈な岩壁にぶつかり潰れていく。


 なお、広いとは言えどその猛威は広場全体に行き渡るほどで、イトヲカシも例外ではなく強風に煽られていた。


「あばばばば! あの野郎、こんなところで使うか!」


 何とか地面にへばりつき、壁に激突はしないように堪え忍ぶイトヲカシは悪態をつく。そして同時に驚いていた。


「これは……なんだ? スキルなのか? だとしたらどんなスキルなのか皆目検討つかん」


 スキルとは、生まれながらにして誰もが得る事の出来るものだ。あるものはどの様な武器も達人のように振り回せるスキルを、そしてあるものはどんな魔法をも使えるスキルを、といった風に、力を発揮することができる。


 時間にして数十秒。圧倒的な猛威を振るった竜巻の威力は減衰していき、ついにその場にはランド以外に立つものは存在しなかった。


「……酔った」


 剣を杖変わりに体を支え、口許を抑えて唸るランド、先程まであの竜巻を引き起こした人物とは誰も思えない。


 三半規管がめちゃくちゃになり、フラフラしながらもイトヲカシの方へ向かうと地面に座り込んだ。


「終わったぞ」

「アタイも終わるところだったわ! 何してくれてるんだい!」


 立ち上がったイトヲカシに拳骨をもらい、力なくランドは仰向けに倒れる。


「……今のはなんだったのか教えてくれるんだろうね」

「無理だな。そんな義務も責任もないし、何より冒険者は詮索禁止だろ? マスターが破るのか?」

「ぐっ……それを言われちゃあ仕方ないね。ならさっさと立ちな! 残党が残ってないか確認して素材を剥ぎ取る。そこからギルドへの報告までが依頼だよ!」


 ランドを叱咤しながらも立ち上がらせ、素材を剥ぎ取らせる。

 イトヲカシはぶつくさ文句を言いながらも、やるべきことはこなすランドを見ながらため息を吐いた。


「素の実力もかなりある上に良くわからないスキルを持ってるとは思いもしなかったね。アタイ以上じゃないか」


 マスターとしては期待を、だが、一冒険者としては少なからず実力として上を行かれていると言うことに嫉妬を感じるイトヲカシだが、頭を振って忘れることにした。


 その後、ギルドで報告をし、ランドは晴れてBランクへと昇格する事が出来たのだ。


 なお、敵の大半はイトヲカシがやってしまい、副ギルドマスターに怪しまれたが、向こうも諦めたようでランドの実力も分かっていたので昇格は認めたらしい。


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