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クズなりの生き方  作者: みなと
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仕事風景

自分の大切な人が幸せなら、自分は不幸になってもいいのだろうか。

特に深く考えたことは無いけれど、多分俺はそれに納得はいかないだろうな。

他人の幸せが自分の幸せなことなんて絶対にあり得ない。

それはただの綺麗事。あるいはそう思えるほど本気にしていなかった、と思う。

だから俺は、どれだけ周りに迷惑をかけようと、どれだけ全てを犠牲にしてでも、自分が幸せだと感じられるのなら、あとは何もいらない。いらないものなんて、いつも蹴っ飛ばしてきたのだから。


ビルや街灯の灯りや車のライトがイルミネーションみたく、とても輝いており、とても眩しく、とても目に痛かった。

そろそろかと白スーツの袖をめくり上げると、腕時計を見るとちょうど短針が0時を回った。

無線を繋げてとりあえず、マイクテスト。

『あー、あー。マイテスマイテスー、こちら黒咲、応答せよ』

『・・・・』『・・・・』『・・・・』

いつも通り返事をしてくれないが、全ての接続先から風の音が聞こえる。上手く接続できてるみたいだ。にしても一応俺、仕切ってる立場なんだけどなぁ。

もうすでにこれはお約束へと化しているので今更つべこべ言う必要はないんだけれど。

『はぁ、まあいいや・・・・・・んじゃみなさん、Let’s 』

「Go」

合図とともに無線を切ると、鉄柱から飛び降りた。脚に術式をかけると鉄柱を横に蹴った。勢いよく街並み上空に突っ込むと、全身をくねらせ宙を蹴りながら器用に減速。そして地上に着地すると捜索範囲内の方向へ歩き始める。

着地地点は世間的「裏の街」と言われている無法地帯。普通の街からは10キロ離れている。

ビルの裏路という裏路を通り今回のターゲットを捜索する。

今回の依頼は、国の最高神石研究所で厳重保管されていた神石の「悪石」が盗まれたのでそれを取り返してこい、とのこと。

神石とは地球規模で災いを起こしたり、地球規模で恵をもたらす無限のエネルギーがこもった石。自然界で生成されるのもあれば生命が宿したまま誕生することもある。わずかなものには、神器のように昔から存在していたものもある、らしい。

今回の依頼の付属でそんな説明書きがされていたんだけど、神石の誕生なんて全く知らなかったな。効力と使い方さえ知っとけばいいだけだし。

ちなみに「悪石」は所持した人間の異常心理性と凶暴性の強さにより石の効果が変わる、らしい。そうとも書いていた。

サイコ系犯罪者の手に渡るのはヤバそうだよなぁ。

『たしかに、お前とかが1番危なそうだよな』

急に無線が繋がり意地の悪い、そして楽しそうな声が聞こえた。

『月詠、なに人のプライバシー侵害してんの?』

『いや退屈だったからついね笑』

退屈しのぎに勝手にひとの頭覗くのやめて欲しいなぁ。

『ついじゃねーよ。あー、なんかあったら現状報告よろしく』

まぁ、こいつの予預言のおかげで今まで生死に関わること無かったからいいんだけどさ。

すると月詠は思い出したかのように告げた。

『あ、そうだったそうだった。もうちょっとしたら爆発するような感じだから気をつけてね〜』

大雑把すぎる警告を残して無線が切れた。

いやもうちょっとヒント欲しいですわ。

あいつには連携を上手く取るための中心的な役割を担ってもらってるのだが、あの様子だと他のみんなは特に問題無いみたいだな。説明力には問題あるみたいだけど。

しばらく歩くと少し広がった場所に出た。

真ん中には変わった像が置かれた噴水と、それを囲むように灯篭が祀られている。

少し気になって近付こうと1歩踏み込もうとしたが、やめた。

男の加齢臭、タバコの臭い、世界禁止指定魔薬の匂いがしたからだ。

まぁ、こんなとこにこんなものがある自体不自然だもんな。

「はぁ・・・・いるんだろ。さっさと出てこい」

ため息混じりに言うと数名近く、フード付きコートの集団が陰から現れ、俺を囲っていた。途中から気付かれていたらしい。

「ヘェー、ニイちゃんよくわかったな。あともう少しでニイちゃんの下半身を吹き飛ばせたのにヨォ」

俺が踏み込もうとしていた地面には、触れた対象を爆発する術式が施されているらしい。連中が全く近付かないことを考えると、俺の足元から半径7メートル範囲にはその術式を施してるようだ。

多分俺の真後ろ辺りにいる奴が術者だろう。なんとなく神石の気配がする。

「ニイちゃんも神石を持ってるのか? できればそいつもいただきたいんだがネェ」

ぱっと見中年くらいのオッサンが不敵に笑った。多分、こいつも神石を所持している。

神石所持者にしか見えないのだが、神石からはモヤというかオーラというか、そういう感じのものが出ている。

こいつらの中にいる神石持ちは2人だけみたいだ。

そして多分だが、俺の後ろにいる術者が使用している神石が今回のターゲット「悪石」だろう。鎮静剤の臭いがする、嫌な予感。

「俺さぁ、ちょうど『悪石』ってのを探してるんだけど、知らない?」

よいしょと屈んでたまたま下にあった小石を拾う。

「それは・・・・こいつのことかい?」

オッサンが手招きすると術者は俺の正面に立ち、右掌に埋め込んである「悪石」を見せた。

「あー、そうそうそれだよ。どこで拾ったか教えてもらえる?」

言うとオッサンは下品な笑い声をあげると、なぜか術者以外とともに闇雲に消えいった。

「それならさっき、ゴミ箱で拾ったぜ。あんなとこに捨てとくなんて、もったいネェ」

不快な声が耳に残り集団の気配は消えた。おそらくだけど、最高神石研究所で悪石を盗んだ後、追っ手が来ることを想定し、この広場で悪石をお試しついでに迎撃、不要な戦力は撤退する予定だったんだろう。

ひとまず、ここからどこへにも動けないのはよろしくないな。

すると術者が口を開いた。

「コレってさ〜どれだけスゴイか知ってる〜?」

突風が吹き抜け術者の被っていたフードがめくれる。

あー、これヤバいヤツだわ。

術者の首には異常心理犯罪者、つまりサイコパス特定の首輪が着いていた。

「さぁ・・・・あんまり、知らないな」

俺は言うと同時に後方へ思いっきり跳び、持ってた小石を術者に向かって地面にバウンドするように投げた。

小石で術式を発動し大爆発、俺は爆風に吹き飛ばされ壁にぶつかった。なんとか術式の範囲外に抜け出し、土煙で目くらましにすることもできた。

後方へ跳ぶタイミングがズレてたら重症だったな。頭ぶつけたけど。

『ねぇちょっと、生きてる? 生きていてもらわなきゃ報酬貰えないんだけど』

ぶつけた時の鈍痛で頭を押さえていると、無線が入り報酬の心配をする声が聞こえた。あの警告はコレのことかよ。

『あのさ、お前人の命をなんだと思って−』

突然銃弾が飛んで、ギリギリ外れた。術者はまだ土煙で明確な場所が見えてないようだ。とんだ副産物をもたらしてくれたようだな、ちょうど小石があってよかった。

「あっぶねぇ。おい月詠、応援呼んで欲しいんだけど・・・・無線切れてやがる」

とりあえず立ち上がり応援を要請しようとしたが、ふと壁にめり込んだ銃弾を見ると術式がかけられていて−爆発した。

「アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

狂ったような笑い声が響く。

「ずいぶんキツそうじゃね〜か。寝ぼけてるみてぇ〜けど、目が覚めたか〜?」

術者は土煙から姿を現した。どうやら触れた物質ならなんでも爆発させることが出来るらしい。

「飛ぶ爆弾か・・・・厄介だな」

反射的に急所は防いだが、破裂した銃弾の破片が全身に刺さりまくってしまった。

額から流れる血を拭うと術者方へ対峙した。

最悪、お気に入りの白スーツが血だらけになっちまったわ。コレあとで捨てよ。

「お? どうした〜、なんかまた眠りそうになってんぞ〜」

若干、頭がフラつく。さっきのダーメジも重なり、結構危ない状況になっている。

「まだちょっと眠たいかもしんないなぁ」

足の術式は、すでに解けている。

風が吹き土煙は完全に消えた。

首の骨を左右に鳴らしながら歩み寄り、銃口を向けた。

「んじゃ、二度寝でもしときな!」

「硬化・瞬脚!」

銃声が響いた。

銃弾は見事に命中した。至近距離で外すなんてありえない。

悲痛な呻き声が響きが耳に入る。

「ウアアァァァァァァアアアァァァァァアアァァアアアア?!」

とても痛々しい声だ。興奮状態に陥り正気を保てない。地面に寝転び、被弾した場所を抑え、呻き、這いつくばることしかできないようだ。

そんな惨めな姿に一声かかる。

「なぁ、お前サッカーって知ってる? タマを蹴る簡単な遊びなんだけど」

狙い通り銃弾は見事に命中した、俺でなく術者に。というより、俺が飛んでくる銃弾を弾いた。

至近距離がためにどこを狙って撃ってくるかわかっていたので弾道を予測し、神石で人体ではありえないぐらいに脚を硬化させ、普通ではありえない速さで蹴ったのだ。

「キッ、キッサッマァ‼︎」

頭に血が上りきった狂犬のように叫び、震えながらもゆっくりと立ち上がった。

これ以上は術者が神石に飲まれる、さっさと終わらせよう。

「悪いけど、その神石は返してもらうわ」

身体を前かがみにし、左脚を後ろへ引くと思いっきり蹴り上げた。

脚を浸してた血で斬撃を生成、飛刃となり悪石が埋め込まれている右腕と利き足であろう右腿を切断。

あまりの鋭さに中央にあった噴水の像を切り落としてしまった。割れてしまったものは仕方ない、無視だ。

術者は一瞬何が起こったかわからないようだったが、切り落とされた自分の腕と腿の激痛ですぐ理解できたようだ。

さすがに酷過ぎるとはわかっているけど、身体に埋まっている以上殺す覚悟でやらなければならないし、変にごたつかれるのもめんどう。

あまりの痛さで声が出ないようだ。死にかけの魚みたいだな。

切った右腕を拾い悪石をえぐり取った。こういうことは慣れてるとは言え、やはり可哀想だとは思う。神石はハンカチで包みポッケにしまった。

「オイ! お前は人を殺めてもなんとも思わね〜のカァ?!」

顔を歪めながら憎々しく、痛々しく、俺を睨む。

俺は憐れさを微塵も感じず、無関心な目で見た。

「残念だけど、お前に対してはこれっぽちも思わねーよ」

異常心理者の考えてることなんてよくわからない。ましてやサイコパスなんてもってのほかだ。異常心理者犯罪者指定の首輪が付いてんのは、あまりの異常さと凶悪性のためだ。前にニュースで小学生が家族を皆殺しした事件があった。その少年は異常心理者と判明していた記憶がある。

そしてその少年の顔写真とこの術者は同一人物なんだ。

今回の依頼は盗まれた神石「悪石」の回収。でもそれは表向き話、メインは脱獄犯の処理。ちなみにみんなには言っていない。

絶対ショタコン野郎が全力で俺を殺してでもこの依頼を阻止したと思うからだ。なんで俺の所属には問題児ばっかなんだろ。

「んじゃ、あの世で家族に供養しな」

すると術者は「家族」というワードに反応した。

「なんでぇ・・・・知ってん、ダァ〜?」

呂律があまり回ってない。 切断箇所から大量な出血をしている。これではさすがに、助かりようが無い。

いや、まぁ、依頼と一緒にそういう資料が送られて来たからな。知ってて当然なんだよなぁ。

なんて言う必要はないため、この場をあとにした。

ターゲットを回収、無線をみんなに繋げて依頼達成を伝える。

俺も帰ろうと、元来た道を戻りかけてる最中に力尽きてしまった。

「いっ・・・・たぁ。遊び過ぎたなぁ、ちょー眠いんだけど」

別に死ぬってわけじゃないけど、そこそこ重症だし疲労も溜まってるせいか力が出ない。

「寝る前に、風呂入んねーと」

ため息が頭に響く。でもこれ、俺じゃないぞ。

「はぁ〜、ちょっととふざけすぎじゃないですかね。前の依頼は初っ端からアレでしたから今回はまだマシかもしれないですけど」

クルッとした白銀のクセ毛が揺れた。腕組みしながらプンスカと俺の顔を覗いてくる。カワイイなおい。

「おお、チカちゃん。いいところに来た。俺の身体を1時間前に戻してくんない?」

「し、下の名前で呼ばないでください! 時永ってちゃんと呼んでくださいっていつも言ってるじゃないですか!」

やだ照れちゃってる、カワイイな。

顔に出てしまっていたのか、時永の俺を見る目が変わった。

「1時間とも言わず、18年前の状態にしてあげてもいいんですよ?」

「なぁそれってもしかしてなんだけど、俺の存在を消すってことでいいのかな? やらないよね? やるわけないよね? おいこっち寄るな、フリじゃないぞ」

18年前って、まだ親のお腹の中にいたぐらいなんだけど。

っていうかヤバい、そろそろ危ないかもしんない。

ふざけるのはここまでにしないと本当に二度寝するハメになりそうだ。一応急所は防いだつもりだが、それでも出血量はかなり多い。スーツが血塗れになる程だから余計にだ。

「おい時永、マジでヤバいから急いでくれないか」

真面目に言うと時永は少し焦った。けれどたしかに、身体を1時間前の状態に戻してくれた。

「まさかそこまで重症だったとは思ってませんでした、本当にごめんなさい!」

回復した身体を慣らすために柔軟をしいると、律儀にもふざけたことを謝ってきた。

時永は少しイタズラっぽいところがあるが、基本真面目だしかわいいから全く憎めない。どこぞの預言者とは違って。

「いいよ、このくだりは毎度お馴染みだからな。むしろ必須事項とも言える。それに時永といっぱいお話しできるしな」

よいしょと屈伸を終えると時永は少し恥ずかしそうにも照れていた。

「何言ってるんですか、黒咲さんといたら疲れるだけです」

誤魔化しながら腕組みをした。

いや本当にかわいいな。フィギュア化しないかな、おもしろそう。

「なんでニヤニヤしてるんですか。冗談抜きで気持ち悪いですよ」

おっと勘の鋭い子はあまり好きじゃないよ時永君。

「ちげーよ、俺を名前で呼んでくれる奴があまりいないから嬉しかっただけだよ」

ほとんどのメンツは「おい」とか「お前」とかそういう呼び方しかしないから、名前で呼んでくれるととても新鮮な感じ。

「そうなんですか、なんか可哀想ですね」

本気で哀れむような眼で見ないでほしいなぁ。

一応依頼達成を伝えていたが念のために無線で連絡を取ると、俺と時永以外はもうすでに帰ったらしい。

「んじゃ、俺らも帰るか」

そういえばあの術者ほったらかしだな。あいつ、ちゃんとサボらずにやってくれたよな?

でもみんな帰ったって言ってたし、後始末はやってくれたと信じよう。

歩き出すとちょこちょこと時永は俺の斜め後ろについてくる。

「にしても、今回の相手って結構強かったんですか? 黒咲さんが危険な状態までに圧されるってなかなかないですよね」

しれっと世間話ように戦況の話題が上がる。

「あー今回な、すぐ終わったらつまんないなぁと思ってハンデ付けたら痛い目に遭っちまった。いやぁ〜それにしても銃弾が爆発するなんて、なんかカッコいいよな。そこに痺れる憧れるってヤツ?」

銃爆弾の共感を求めると時永は立ち止まった。

ついて来ないなと思い振り向くと寒気がした。

「ねぇ、黒咲さん」

あ、どーしよ。さっきの爆発魔よりよっぽど怖いんですけど。

なんとなくわかってはいるが一応、ささやかな抵抗をしてみた。

「どーした? さっきのことはもう気にしなくてもいいぞ。遊び心なんて誰にだってあるものだ。それは仕方のないことだ」

スラスラと頭に浮かび上がった御託を並べてみた。

けどやっぱりダメっぽいすわ。

「ねぇ、黒咲さん。命に関わるのでお遊びは控えましょうって前々から言ってましたよね。なのに今回もふざけて死にかけたってどういう神経してるんですか」

あらやだ美少女が迫ってくる。とうとう俺にも春が−

「そんなに遊びたいんだったら、合法的に遊びまくれるようにしてあげますよ。たしか子どもって遊ぶことが仕事って言いますもんね。さぁ、何年前がいいですかねぇ? お母さんのお腹の中で甘えるというのも悪くないかもですね・・・・」

はじめての体験に身体が後ろへ下がってしまう。いや良くない、女子から迫られるなんてみっともない。男なら男らしくいかねば。

背中が壁に当たると、覚悟を決め、目をつむりたくさん息を吸い込んだ。何事も冷静かつ大胆に。

そして溜まりに溜まった気持ちを、

「本当に調子乗ってすみませんでしたちょっとした出来心だったんですだからこれ以上身体の時間を戻すのは止めてくださいもし下手したら俺の存在まで消えることに−」

はじめての投稿です。

素人だから大してうまいことも書けるわけじゃないですし、見ててヘタクソだな、つまんないって思うでしょう。

でも素人なりに頑張ってみたんで、もしよかったら読んでみてください。

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