世界は廻る
世界で一番大きな空が見たくて
小さな古びたかばんに
破れた地図と
水の入った瓶をつめて
僕の汗ばんだ掌に
大事な藍玉の欠片をにぎりしめて旅にでた
途中で大きなふるい木にあった
それは僕にいった
それは総ての悲しみを背負う木だと
それは世界の悲しみの分だけ泣くのだと
でも自分の悲しみだけは消して消えないのだと
だから僕は泣いた
その木の分まで泣いた
少しでもその木が痛くないように
少しでもその木が優しくなれるように
僕は泣いた
途中で小さなリスにあった
それは小さなまぁるいガラスを持っていた
その中には小さな百合の花びらが一枚
リスは僕に言った
それを本当に必要としている娘がいると
でもリスはあまりに小さすぎて
その娘を探すにはあまりにも無力だと
そういって目を潤ませた
だから僕はそのガラスをその娘に渡そうと言った
リスは笑った
その笑顔に僕は嬉しくなり代わりに
小さな藍玉をそのリスにあげた
道端で可愛い少女が泣いていた
どんなに水をやっても
どんなに陽にかざしても
少女の花は開かなかった
僕にはどうすることもできなかった
だからそっと少女の手に百合のガラスを握らせた
すると少女は笑った
ありがとうと僕に言い残して
彼女は大きく手を振って
笑って走っていった
きっと彼女の花が咲く日も近いだろうと
どうしてだか僕はそう思わずにはいられなかった
どれだけ地を歩いても
深い水を掻き分けても
僕には十分な空が見えなかった
どうして僕だけ
そう思い嘆き叫び地に転がった
それでも僕は前に進むしかなかった
またしばらく行くと最初の古い木に会った
それは僕に言った
世界の悲しみを背負いながらそれは僕に言った
ありがとうと
本当にありがとう。と
どうしてそれは笑っているのか
悲しいはずなのに
苦しいはずなのに
でもそう言われた僕の心は今までにない程
晴れ晴れと透き通った
僕はその時になって気付いた
あぁ そうなんだ
僕の大きな空は
いつでも僕の上にあったんだ
僕の大きな空は
悲しみと涙で曇っていたけれど
ホントはいつでも僕の周りにあったんだと
僕は嬉しくて嬉しくて
世界が愛おしいと思った
ここまで読んで頂いて本当に有難うございました。
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こんな時代だからこそ、小さなコトでも優しい気持ちになるキッカケがあれば素敵だなと思います。
本当に有難うございました。