表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつか見た風景

ビー玉と初恋

俺はビー玉をつまんで目の前にかざして覗き込んでいた。


「ラムネの瓶からビー玉なんて取り出してどうしたの。何か面白いものでも見えるのかしら?」

「いや。というか、今は瓶じゃなくてプラだろ。容器は」

「そうだけど気分はねえ」

「まあそうか」

「それで、どうしたの」


俺はビー玉から視線を外した。


「昨日さ、初恋の彼女と会ったんだ」

「え~、ずるい。私も会いたかった」


その言葉に俺は笑った。


「そのうち会えると思うぞ」

「どうだか」


軽く睨む彼女に俺は笑みを深くする。


「それでな、別れた後、いろいろ思い出していたんだ。そうしたらあの曲が浮かんできてさ。で、丁度寄ったところにラムネが売っていたから買ってきたわけだ」

「あー、失恋決定したのがあの歌詞通りだったっけ」

「歌詞どおりってわけじゃないけど、同じような場面は見たけどな」

「雨のバス停だったかしら」

「ああ。偶然にも雨が降り出してきて、俺は雨宿りできるところを探すか、家まで走るか考えていた時だったな」

「違うのは彼女が家庭教師として現れた時から指輪はしていたのよね」

「そうなんだよ。雑談の半分以上は惚気だったし。多感な中学生に何を話すと思ったことが何度あったことか」


そう言ったら彼女がフワリと笑った。


「きついわね、それは」

「ああ。だけどあの日、あれを目撃したおかげでお前と会えたし」


そう言って見つめたら彼女は頬を赤く染めた。


「だって、雨に濡れたまま立っていたのですもの」

「小さい体で傘をさしかけてくれたのが可愛かったよな」

「あの時は・・・成長期前で少し背が低かっただけです。あなたの背が高すぎだったのよ」

「そこは2歳差がものをいったんだろ」


そういったらなおさら赤い顔をしてそばを離れようとした。

その手を掴み引き寄せて膝の上に座らせる。


「ねえ、重くない」

「全然重くないよ。今までが軽すぎたくらいだから」


彼女の身体に手を回し、ついでに腹部をやさしく撫ぜた。


「それにしてもあの時は驚いたよな」

「何が?」

「あの小さかったお前が俺に恋してたなんてな」

「もう~、言わないでよ」


恥ずかしそうに身をよじる彼女に俺は言った。


「それでな、彼女と会った時、彼女も妊娠してたんだ」

「ええっ!」

「第3子なんだってさ。家もここから近いし同じ病院らしいから連絡してみたらどうだ」


そういってポケットからメモ用紙を取り出した。

それを受け取った彼女はとてもうれしそうだった。



さて、これも何の曲がモチーフかお判りでしょうか?


クイズじゃないですよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ