7. 学友たちとのお茶会で
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園遊会で訪れて以来だが、久し振りに訪れた王都は気候の変化の少ない土地柄が影響しているのか、以前との変化は皆無なようだ。
それは宮廷も同様で、庭園の植物が一部は植え替えで変わっているということすら聞かされなければ気づかないくらいな程だ。
ベルサフィアの領地では時期による寒暖差が存在するため、変化がある領地とそうでない王都との対比が新鮮に感じられる。
城内に向かう各家の両親たちと別れ、園遊会でも使った庭園の片隅にある四阿にて四人で茶会の席に着く。園遊会では多くの人が居た庭園は、今は茶会の給仕をする使用人を除けばボクたち四人だけで、庭園の広さがより感じられた。
茶会を始める状況となり、皆それぞれ何か話したいと考えてはいるものの、どのようなことから話すかきっかけが困っている様子が垣間見え微笑ましい。
ボクから切り出すとしたら学友として集められた面々であるため、学院の話題が好ましいだろうか。ちょっとした挨拶だけしかできなかった事だし、お互いを知るようなことからがいいだろうか。
陛下と殿下には以前謝罪をしたが、令嬢たちとは園遊会の場以来の再会なのだから、まずは突然倒れた時のことを詫びるところから始めてみよう。
「まず皆様、園遊会の際には突然倒れてしまい申し訳ございませんでした。あの後で更なるご迷惑をおかけする事はありませんでしたか」
「あの状況にわたしはどうしたらいいのかと慌ててしまいましたの。でも陛下はさすがと申しますか、落ち着いてお付きの方たちにも指示を出して対処をされておられましたし、幸いに騒ぎも大きくは広がりませんでしたわ。ですから気に病むことはありませんのよ」
「あの時はあたしもびっくりしましたけど、リューティミシアさんも大事となるほどではなかったと後からお聞きして安心しました」
「私はあの翌日お会いしてますからね。その時もお話ししましたけど、このお茶会についても私たちで勝手に決めてしまって、事後承諾みたいな形になってしまいましたから。それでおあいこということでいいと思います」
ボクの謝罪にロスエメルダ嬢、モルクガニス嬢、エルフィリシーナ殿下がそれぞれ好意的な返事を返してくれる。もしこの先、このような付き合いが裏表なくできるならば、彼女らと仲良くやっていけるんじゃないかという予感がする。
「ご学友としてこれから長くご一緒するのですから、他人行儀な呼び方や畏まった話し方だと距離を感じてしまいませんか。
もしよろしければお互い愛称で呼んだり、普段の言葉づかいで話したりしてはと思うのですが、いかがでしょうか。もしよろしければ皆さま、ボクのことはシアとお呼びいただきたいのです」
「それではわたしのことはミリーとお呼びくださいな」
「あたしはリーネで」
「私の事はエルと呼んでください。殿下などと堅苦しい敬称はお止めくださいね。シアさん、ミリーさん、リーネさん」
「ご賛同ありがとう、エルさま、ミリーさま、リーネさま」
お互い愛称で呼ぶということで、会話の距離というか、壁を一つ取り払おうという案は思ったよりもスムーズに彼女らの返答で受け入れられた気がする。
「学院でもこうやって定期的にのんびりとお茶会ができればいいわね」
「定期的になどと言わなくても、ボクたちは皆学院では寮生活になるんですから毎日のお食事でもご一緒できます」
「ああ、そういえばそうでしたね。そう考えると学院の入学に不安がありましたが、皆さんが居ればなんとかなりそうな気もしてきます」
「不安……ですか」
「学院には貴族以外にも優秀であれば身分に関わらず入学も可能ですから。貴族以外の方とどう接すればよいのかと少々不安なのです」
「わたしもそれは分かる気がしますわ」
「ボクにはそちらの方面の不安はないのですが、やっぱり普段の生活もあるかも知れません」
「どういうことですの」
「実は五歳の頃から領内の子供たちと遊ぶというか、交流をしているんです。
それとは別に園遊会以後、最近は領地の騎士団の修練場で騎士に交じって訓練の指導を受けたりもしていますよ」
「まあ、そのようなことをよくご両親が許されましたね」
「止めた結果こっそりと家を抜けられるよりは、監視役を付けて公認する方が良いと考えたみたいですね、最初はそれをやって父様に絞られましたから」
「騎士の方と訓練なんて、お身体は大丈夫なんですの」
「最初は大変でしたが、今ではすっかり平気ですよ。屋敷付近の子供たちや領地の騎士たちともすっかり仲良くなってしまいました。
それと、学院には護衛を連れていけないみたいなので万一何かあっても大丈夫なように、ですね」
「それは頼もしいですわね、もしかしてわたしたちのことも気にかけてくださるのかしら」
「もちろんボクの手が届く範囲なら」
「ありがたい話ね、いざというときは頼らせてもらうわよ。
あたしは家の雑用をすることがあるから、市井の人と話す機会は多いし身分に関する不安はないけど、さすがに子供たちと遊ぶまでのことはしてないわね」
「雑用……とはどんな事をされていらっしゃるの、リーネさま」
「あたしの家は子爵位を名乗ってはいるけど古いだけの家だからさ、使用人や家庭教師を家の子供全員に付けるほどは雇ってないのよ。
だから使用人は小さい子に優先的に付けて、後はお互いに着付けしたり、家庭教師には複数人で一緒に見て貰ったり、使用人の真似事みたいに買い物に出たりね。
最初はなんでと思ってはいたけれど、今ではもう楽しんでやってるよ。
おかげで市井に馴染みすぎて気を抜くと砕けた言葉づかいになってしまう。だからシアの言葉づかいについての提案は助かったよ」
「あはは、そう言って貰えると嬉しいですね。
ボクもほら、自分のコトを“ボク”と呼ぶのは立場を考えるときっとよくはないと思うんですが、父様も母様も無理に矯正しない人だったんです。
家庭教師には時々注意はされたのですが、今更他の一人称に変えろと言われてしまうと違和感があって治せるのかわからないんですよね」
「私は幼い頃から一つ一つ覚え込まされました。立場もあって多少の融通は利かせて貰えなくもないのですけど、王の血筋に連なるものとして恥ずかしくないようにと常に誰かしらついていました。
時期によっては教師やその立場に相当する方が目の届く範囲から居なくなるという事が片時も無いようなこともございましたね」
「それでは息苦しくなってしまいますわ。わたしも伯爵家の者として恥ずかしくないように教養を身に着けるようにと家庭教師は付けられましたが、エルさま程の事はありませんでしたわね。
ただ、両親が過保護であまり外に出る機会もありませんでしたから、今回のお茶会も本当に楽しみでしたわ」
「お家によっていろいろなんですね、私は立場上他の方と違うのだろうと思っておりましたが、それ以上にいろいろな状況があるのですね」
その後も、各々の家のことや、自身がどのように過ごしてきたか等の話を続け、各家の両親たちが戻ってきたところでお茶会は終了の運びとなった。
最初は緊張も見られた令嬢たちとは、それぞれが自身についていろいろ話した結果多少距離が縮まったように感じる。
頻繁の開催はお互いの領地の距離もあり難しいかもしれないが、入学前にまた同様の機会を設ける約束をして、今回は解散したのだった。
今回は場面転換等も皆無な話でしたので、実験的要素扱いとして地の文を減らし、会話を多めに書いてみました。どれが誰の発言か判りますでしょうか……。意識して一人称や口調についてはそれぞれ変えてみましたが、判りやすく書き分けできていたか不安です。表現力と構成力の不足を痛感します。
今回はどんな話にしようと散々悩んで、令嬢たちの会話によるざっくりとした境遇披露代わりな回となりました。が、皆子供らしくないですよね……。貴族として教育をしっかりされた結果(弊害?)と思ってください。
ご読了どうもありがとうございました。
次回は時期を一年ちょっと飛ばして学院入学辺りの話にしたいと考えています。