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6. 鍛錬の日々(2)

シアの鍛錬の日々的その2ですね。

気になる点等ありましたら、ご指摘よろしくお願いします。

 訓練を始めて十八週目。

 鍛錬での効率的な身体の動かし方がわかってきたため、鍛錬後の余力も少しずつ増えて行っている。

 騎士たちとの体格差についてはさすがにどうしようもないが、若さとそれに伴う回復力を武器に、少しずつついていけるようになってきているのが実感できている。


「ふー……、今日の分の鍛錬は終わり……、少しは慣れてきた……かな」

「シア様の情熱はすごいですね。この訓練は普通だとシア様の倍近くの歳になってから始めるようなものなのですよ。

 そのため、万一シア様が訓練への参加を諦められても大丈夫なようにと、シルビノア卿には騎士団の訓練監督も併せてお任せしていたのですが……。

 この分でしたら卿にはこのままシア様への指導に比重を置いていただいていても大丈夫ですね」

「何ですかそれ……初めて聞きましたがちょっと酷くないですか。

 そもそも鍛錬でも訓練でも使うものから何から大人用の大きすぎる物しか無いと思ったらやっぱりボクみたいな年齢からやるものじゃなかったのですか」

「申し訳ありません。訓練開始当初には言わないように念を押されておりましたので……。

 ただ、始めたばかりのころのシア様を見ているとさすがに心配にはなっておりました」

「ああ……、あの頃は今のボクが思い出しても酷かったですね……酷いのも今の話を聞く限りでは当然かも知れないですけど」


 ボクが行っている鍛錬の一般的な実施年齢を聞いて呆れ、話しかけてきた騎士を白い目で見はしたが、済んだことが今更どうにかなるようなものでもない。割り切ってこの件は考えないことにした。

 訓練を行う杖術についても、最近は素振り、歩法などの基礎の訓練だけではなく騎士たちとの模擬戦を少しずつ行うようになってきた。延々と基礎の練習を続けたかいがあったのか、動作の中に無理のない動きで自然に杖術の形を織り込んでいくことができるようになってきている。

 模擬戦への参加が許された当初から騎士団へ所属して一年目や二年目、騎士というよりもまだ見習いという方たちとであれば無理なく打ち合えてしまったが、もしかしたら思っているよりも先生の訓練は身になっているのだろうか。

 続けてきた訓練の成果を実感することで、ただ人生の為にしているだけだった訓練に楽しさが加わってきた。




 翌日に訓練の疲れが全く残らなくなってどれくらいになるだろうか、休息日だというのにいつでも動けるように身体を解しておかないと何か落ち着かない。ボクとしては悪いこととは思わないが、淑女としてはどうなのだろう。


 子供たちと遊ぶ合間に将来の騎士団所属を考えている子供向けに、体格に関係なく道具が不要な訓練を教えてやらせてみたりもしたが、やはりボクがやってきた事は男の子でも相当に辛いものらしい事が客観的によくわかる結果となり、付いてきているシェディをジト目で見てしまったりもするのだった。


「はぁ……はぁ……シア様……これ……キツい……」

「うー……もうむりー……、騎士ってこんなこといつもしてるの……」

「そうね、これは一部だけを簡単にして取り出したものですから、普段騎士の方たちがしている鍛錬はもっと厳しいものですよ。

 まあ、本来の訓練は成人した大人向けのものらしいので、今できなくても大丈夫ですよ」


 抜粋した鍛錬でぐったりとした子供たちへ本格的な訓練は騎士団に騎士見習いとして入団してからという話をしつつも、騎士たちの華のない仕事に付いても併せて話をしてみた。が、それでも憧れは憧れとしてあるものらしく、そのうち騎士団長を連れてきて子供に話を聞かせても面白いのでは無いかと考えるのだった。


    ◇◆◇


 訓練を始めて三十六週目。

 完全に習慣となった鍛錬をこなす。ボクの身体がまだ成長途上てあること考えれば、このまま成長すればかなりの運動能力になっているのではないだろうか。

 筋肉の付けすぎは成長を阻害するとかいう記憶も無くはないが、今の体は男のものではないし、無理に大きくなりたい訳でもないから異常が無い限りは気にしない事にした。


「今日の鍛錬は完了……っと」

「すっかりシア様もこの鍛錬に馴染んでしまっていますね」

「そうですね。そこに不満はないですし、現状には問題も感じてはいないのですが…。学院に入ってもこういうことが続けられるのか少し不安ですね」

「シルビノア卿なら適切なものを考えてくださるかもしれないですね」


 近衛で腕を振るっていたというシルビノア先生の指導を集中的に受けていたおかげで、ボクが習っていた杖術は実戦向きのものに成りつつある。

 なんと我が家の騎士団に入って三年目未満の騎士となら無条件の模擬戦で勝てるようになってきたのだ。

 後々聞いたところによると、先生は現役時代に近衛騎士団へ入団することになった貴族の子弟から選抜された候補生を、半年で篩にかけつつそれなりの実力を身に着けるようにと訓練を課していたらしい。

 諦めずに訓練に取り組むボクを見て当時を思い出したために同じような訓練メニューを施してしまったと知った。また、宮廷守護の任に就く近衛騎士に求められる水準は各貴族の保持する騎士団よりもやはり高いものであるため、ボクは体格の問題があるためにそれなりの腕前といえる程度だが実際には騎士団の一般的な騎士たちと互角か、それよりも上くらいの腕前になってしまっているらしい。

 どう考えても年齢に不相応なのですが、大丈夫なのですか先生……。


 先生の極少人数向けの特別訓練メニューの対象であるボクとは別に、騎士たちが行う日常の訓練メニューも少しずつ近衛騎士団のものを参考に変更が図られているらしく、彼らも徐々に実力の向上が見られるらしい。

 近衛とは異なり貴族の領地を守護する騎士団としての改善項目の中には対人以外に対獣の討伐や捕獲の訓練についても本格化するように提案されて、実施が始まってもいるようだ。




 騎士団長を子供たちの所へ連れていきどんな仕事をしているのか話をさせてみたいと父様に手紙で相談してみたところ、面白そうだという答えとともに、他の働き手を受け入れるような組織からも話をさせようというように話が膨らんでしまった。

 父様の思いつきは今に始まったことではないが、面白そうだからと動きはじめてしまった事態にボクは傍観するだけになってしまう。精々対象となりそうな子供にこんな機会が作られるという話をするくらいだ。


 最終的には王都からも人を呼び、職業講演会みたいなものになってしまった。そんな聞き手の子供たちも漠然とした将来像が少しは現実味を帯びたものになったらしく、結果としてはこの講演会は大成功に終わった。もしかすると来年以降も続くかもしれないらしい。


    ◇◆◇


 訓練漬けの日々を送るボクの元に、宮廷から一通の招待状が届いたのは、訓練を初めて四十週ほど経った時だった。

 以前園遊会で倒れてしまいお詫びをした折に『機会を設けて少人数で茶会を開きたい』とのお話をいただいていたが、どうやらその時の話を実現する運びになったようだ。我が家に当てた招待状で招待されているのはボク、父様、母様の三人。

 両親も併せて招待されているのは、エルフィリシーナ殿下の学友となる子供だけではなく家としても親睦を深める意図があるのだろうか。

 丁度今の時期、父様は仕事で王都に居る。母様にお伺いを立てたところ久し振りに父様と会えるなら参加を断る理由もないということで、園遊会以来の王都への一家揃っての訪問が決まったのだった。

どうもありがとうございました。


シルビノア先生は相当なスパルタです。シアがついていけたのは人生掛かってる意識があるためで、本来は同じ訓練を受けてついていけない近衛の候補生が篩にかけられる感じです。おかげでシアの杖術の腕はちょっとした悪い人程度なら一息で軽く叩き潰してしまえる程度の実力まで行ってしまった感じ、ただ本人にその自覚はありません。訓練の場にはたくさん強い人が居ますからね。作法で剣術をやっている貴族のお坊ちゃまたちよりは断然強くなってしまいました。けど、まだまだ上は当然居ますよというレベルの技術です。

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