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5. 鍛錬の日々(1)

シアの鍛錬の日々ですね。

出先の時間つぶしにスマートフォンで校正しちゃいましたので珍しくそのまま更新です。気になる点等ありましたら、ご指摘よろしくお願いします。

 訓練を始めて一週目。

 初日、二日目、三日目、鍛錬や訓練の内容は貴族の子女向けのものを行った。

 鍛錬は基礎的な動きを行うのに必要十分な体力をつけるだけの簡単なもの。訓練についても、自分自身は護衛対象として、すぐ傍に護衛となる者が居るか、短時間で駆けつけられる状況を想定したものだ。

 もちろん主体的な攻撃などはするはずもない。相手を近づけないことを念頭に置いたものなので攻撃手段も最小限となっている。

 所作について問題ないと評されつつも、これだけの技術で本当にボクを、そして皆を護れるのだろうか……疑念を捨てきれない。


 そんな折に『このまま続けるならば護身術として使う分には、ほんの数週の内に申し分ないものとなるだろう。だが、リューティミシア嬢が望むなら本格的な、例えば騎士たちが行うような訓練を課し、より高みを目指すこともできるだろう。キミはどうしたいかね』と、シルビノア先生からの問いが発された。

 どうやら護身術の訓練をしつつも別のことを考えている様子を感じ取ったらしい。ゲーム中のシアは学院入学前に護身術に手を出してすらいなかった。ここでしっかり技術を身に着けることで将来が変わるのだろうか。賭けてみようか。

 ボクは一縷の希望を託し、護身術のレベルに留まらない内容の訓練を望んだ。最初は鍛錬内容が貴族の子女向けのものから騎士が行うものへと大きく変わることとなった。より厳しいものとなった鍛錬メニューは満足に消化することもできない状態だったのだ。


「……ぜぇ……ぜぇ……はぁ……はぁ……」

「シア様、本当に大丈夫ですか……」

「…………(返事ができない)」


「しばしの間お休みください。私どもは先に訓練に移らせていただき、修練場にてお待ちしておりますので」


 鍛錬の内容から変わったことで本訓練前の準備段階で音を上げてしまうようになった自身の体に軽い絶望すら感じてしまう。確かにやっていた事に大きな差というものが存在していたことは分かっている。だが、ここまでの壁が存在するものなのか。

 杖術の訓練については鍛錬後、体力が回復をするまである程度の時間を取り、それから様々な形について少しずつ知識を深める程度にまだ留まっている。組手や模擬戦などまだ先の先だ。


 まずはこの騎士団も行っている鍛錬のメニューについていけないことには杖術の実践についても正式な訓練には進ませて貰えないようだ。諦めてなるものかとちっぽけな自尊心を奮い立たせて改めて決意する。




 指導を受け始めて最初の休息日。

 折角の休みがやってきたというのに全く動ける気がしない。園遊会前は三日に一度だった休みが訓練を始めることによって六日に一度になったので、領地の子供たちとの時間は大切にしたかったのだが、今日はちょっと難しそうだ。

 申し訳ないが、シェディに領地の子供たちへの伝言を頼もう。ボクと一緒に彼らと何度も会っている彼女にしか頼めない。


「シェディ、すいません……。今日は動けそうにないので領地の子供たちに言伝を頼めませんか。

 久しぶりに子供たちに会いに行こうと思っていましたが、行けそうにないのです」

「疲労が抜けきってないのですね、始めたばかりのころは仕方がないことだと思います。私たちも最初は皆そうでしたから。

 ではリーダー格の子に本日はお会いできないことを伝えれば大丈夫ですかね」

「それで問題ないです。今後は機会を見て休息日に顔を出せるようにしたいということも伝えておいてください」

「畏まりました、シア様。では本日はお部屋にて御自愛ください」


 ボクの会っている領地の子供たちの中でも同い年を含む年長者は既に初等学校に通い始めている年齢に入っている。

 平民身分の子供たちは貴族階級と異なり、初等学校を卒業したらすぐに家業を継ぐか、働き口を探して働き始めるのが一般的だ。そんな彼らが束の間の余暇を、ボクと対話したり遊んだりする時間として割いてくれているのに、それに応えられないことが悔しかった。


    ◇◆◇


 訓練を始めて六週目。

 鍛錬に少しずつ慣れも出てきた。領地の騎士たちと同じ内容で遅れることなくこなすことができるようになってきている。

 ただ、やはりというべきか、鍛錬後の余力に関してはまだまだ全然違うということが実感できるのが悔しい。回復を待つ時間が少しずつ短くなっていることを実感できているのが救いだろうか。


「はぁ……はぁ……、皆……、なんで……そんなに……余裕……があるので……しょうか……」

「さすがにお嬢様とは年季が違いますからね、慣れればすぐに変わってきますよ」

「……はぁ……先に訓練に…入っていて大丈夫ですよ……、もう少ししたら……ボクも参加します……」

「わかりました。では先に訓練に入っておりますね」


 杖術については持つ杖によっては取扱いに若干の違いがあるようだが、少しずつ形を習うに連れて大まかには記憶にある剣道という武道に近いものがあることがわかってきた。

 攻める際には突き、払い、打ちの動きが基本となっており、守る際には、相手の武器を払ったり打ち落としたり等の技術がある。

 前世の知識に存在する剣道に近いものがあるとはいえ、初めて覚える動きが多く、慣れないうちは杖の持ち方から騎士たちで見慣れた一般的な剣のそれとは異なる部分もあるため戸惑いは大きかった。


 木剣を持った騎士との形の確認や打ち込みを行うような組手はともかく、未だに本格的な模擬戦と言えるような訓練については参加を許されていない。無駄な力を入れず動けるよういろいろな形を身に着ける為の練習が続いている。

 実戦形式の訓練に入らせて貰えないのは素質が無いのだろうかとか、単調な訓練はいつまで続くのだろうかとか、きちんと身になるのだろうか等の思いが脳裏を過りつつも、これまで何人もの騎士を育ててきたシルビノア先生の教えということもあり黙々と反復動作に勤しむこととする。




 最近ようやく休日にまで疲労に引き摺られない身体ができてきたため、領地の子供たちとのふれあいの機会も漏らさず持てるようになってきた。


「シアさまー、さいきんなかなかあそびに来てくれないけど、なにしてるですかー」

「会えなかったお詫びにお教えしますね。領地の騎士団と一緒に、宮廷でも護身術や武術の指導をしていた方に指導をつけていただいていたのですよ」

「シアさまは騎士になるのですか」

「騎士にはならないけど、大切な人たちを護るためにできることをしたいって思ったのですよ」


 正直に何をしていたのかと話すと一部の男の子たちが自分たちも訓練に参加したいと言い出してしまって困った事態になったりもしたが、最初は基礎鍛錬だけであることや、武器を持って打ち合うような訓練については未だにほとんど無いことを伝えたら興味が薄れてしまったようだ。

 面白いことに、騎士という言葉に惹かれて憧れる顔をしていたのは何故か長男と思わしき少年がほとんどだった。

 それとは別に次男三男という実家を継ぐこと以外の将来がある子供たちは現実的な未来の選択肢としてうちの領地の騎士団についても考えているようで、普段はどんなことをやっているのかと具体的に聞かれたりもした。

 将来の選択肢がおおよそ決まっている子供と、そうでない子供の違いを思わぬ場所で知ることができ、不思議な気持ちとなる。この子たちの中からも将来を担う騎士が出てくるのかもしれないと考えると楽しみというものだ。

杖術については詳しく調べた訳ではないので変なところがあるかもしれないというか多分ある気がします。

次回もシアの鍛錬と日常その2と言った形になります。今回は初めて書いているうちに長くなってしまって分割しました。そのため既にこの続きも半分以上書けている状況なので普段より早く更新できるかもしれないです。


それではご読了どうもありがとうございました。


◇◆◇作中では多分触れられない蛇足的なコト◇◆◇

■作中世界の暦について

 年と週と日が存在します。一日が二十八時間。一週が六日。そこから月の概念が飛んで、七十二週で一年です。何週目の何の日という形で暦を表現します。閏年とかそういうものはありません。公転周期がピッタリということにしておいてください。

 時間の概念については時計は存在していますが、非常に高価で大きいため宮廷や貴族の屋敷に設置されているだけです。そこを参考に町の人に時間を知らせるために日が出ている間、二時間に一度鐘が鳴らされます。

 単位の名前や尺度については現実同様です。その方が状況や規模をイメージしやすいですし…。

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