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4. 今できることは

気になる点等ありましたら、ご指摘よろしくお願いします。

 領地に戻った翌日、ボクは専属護衛騎士のシェディニス・オブシアンを珍しく外出以外の目的で自室に呼んだ。今後に向けて、何か危機があった際に身が守れる手段について相談してみるためだ。


「シェディ、護身術か何か身を守る方法を習得したいのですけど、何かないですかね」

「突然何を言い出すのですかシア様。貴女を守るために私が居るのではないですか。まさかとは思いますが、いざ習得したらお役御免なんてことはありませんよね」

「あはは、まさかそんなことはないですよ。けど、十歳になるころには学院に入る事になるじゃないですか。

 ボクは第二王女エルフィリシーナ殿下の学友に選ばれてしまいましたし、学院に行くのは辞めますというのは通じないですからね。

 ただ、学院の中は職員か学生しか入れないのです。例外となる学生の血縁者にしても最低限の許可が出るのは式典の時だけのようですね。

 そして素晴らしい事に大半の雑用は学院に専門の方々が居るとのことで基本的に炊事洗濯掃除は彼らに任せて勉学等に専念できるようになってまして、使用人は大勢は連れて行けないのです。

 ただ、貴族身分の職員や学生については世話のために同性の侍従として、男性なら執事、女性なら侍女を一人連れていくことができるらしいですね。

 しかしながら、貴女は護衛騎士であって、侍女ではないですから連れて行く候補からは除外されてしまうのですよ。

 学院には厳重な警備もあるために安全とされていますけれど、それでも気になることは無いこともないですから身を守る手段を身に着けたいのです。

 それともシェディ、貴女が今から侍女のお仕事を身に着けてみますか」

「さすがにそれは無茶というものです。そもそも私が侍女の仕事を始めてしまえば騎士団に顔を出せなくなってしまいます。

 そういう事であれば騎士団の中からシア様への訓練指導を行う教官を手配することはできるかもしれないのでしょうが、一度お館様にご相談いただいてからの方が良いでしょう」

「うーん……、そうですね。許してくれますかね」


 その日の夕食後、ボクは昼間シェディに相談した話を、今度は父様にしてみた。結論から言ってしまえば。学園での身を守る手段が欲しいというボクの意見についてほぼ認められた形だ。

 しかし、指導者については父様に一任すること、その方の監督下以外では勝手に訓練をしないこと、変な形で筋肉が付きかねないような方法は慎むこと、他にも母様からも幾つかの条件が設定された。父様は早急に指導ができる方を探してくれるらしい。


    ◇◆◇


 護身術の訓練を行いたいという話をしてから十日後。

 父様は現役を辞して引退生活を送っているという元騎士の老人を屋敷に連れてきた。ベルサフィア家にも私兵とも言うべき騎士団が規模は大きくないなりに存在しているだけに、その中から選ばないでどんな方を引っ張ってくるのかと思っていたが、どうやら元々は宮廷の方々にも護身術を教えていたという方を伝手で紹介して貰ったらしい。

 外部から指導者を招くと聞いた時点で、てっきり王都の屋敷に滞在してそちらで行うと思っていただけに、気づいたら教わる相手が決まっていて、しかも領地に連れてきているとは思わなかった。


「シア、この方は以前宮廷で近衛騎士団に所属にしていたシルビノア卿だ。現役を退いてもしばらくは貴族の子弟らに宮廷で護身術を教えていた経歴がある方だから思う存分教えていただきなさい。

 但し、リリィが言っていた注意事も伝えてあるから彼女が気を揉むような真似は止してくれよ」

「リューティミシア嬢、はじめまして。アシュケルーク・シルビノアだ。

 ベルサフィア卿に乞われ、キミに護身のため技術指導をするためにやってきた。こういうことに身分など無粋な話だから好きに呼んでくれ。明日からよろしく頼む」

「ではシルビノア先生とお呼びすることにいたしますね。リューティミシア・ベルサフィアと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


 引き合わせられたのは夕刻に近い時間であったため、訓練については翌日からということになった。

 驚いたのはボクが指導を受ける間、シルビノア卿は我が家の客分という形となり、ずっと屋敷で過ごすということだ。滞在期間についても特に決めていないとのことで、ありがたいことに身になるまで長期間教わることができる。


 翌日から午後に鍛錬の時間が設けられることとなった。午前からでないのは疲れの無いうちに家庭教師による学習も継続させるためだ。

 休息日も用意はされたものの、領地の子供たちと遊ぶ機会は園遊会の参加を境に随分減ってしまったため、彼らも残念そうにしていた。だが、こればかりは将来も絡むだけにしょうがないことだと割り切るしかない。


 修練に先駆けて何種もの武具を目の前に並べられ、習得したいものを選択することとなった。

 ボクとしては前世で憧れていたと同時に、この国の騎士団でも使われている剣である幅広のブロードソードを選んでみようと思ったのだが、残念ながら重すぎて両手でも持ち上げるのがやっとで、振り回すような真似はとてもじゃないができなかった。

 今のボクでも扱えそうなものは、一般的に貴族階級の女性も護身用によく用いるダガーナイフ、刺突に特化した剣であるレイピア、戦闘用に加工されている特殊な杖、これらの三種類だった。

 厳密にはそれ以外にもショートソードや短弓等の軽く取り回しのし易いものは存在したが、複数のものに手を出すよりもどれか一つに絞る方が良いとのことだったので、考慮外としたのだ。

 結局その場では候補を絞り切ることができなかったために、三種の武器を一通り使用してみたものの、どれも一長一短という感覚があって決めきることができなかった。


 更に翌日、朝食の場で両親にも相談してみたところ、『刃物の持ち込みには特別な理由や厳しい審査のある学院の中で、刃の無い杖なら護身用として持ち歩き易いのではないのでは』という母上からの利用を想定した意見から、最終的に杖を使うという決定に至ることとなった。

 その意見の裏には、刃の無い武器であれば訓練中に扱いを誤っても後に残る傷痕を作るような事故は起こらないだろうという考えがあったとかどうとか。


 使用する武器を決めた日より本格的な訓練をすることとなったが、前日と同じように屋敷の庭で行うかと思っていたら、騎士たちの修練場に連れていかれることとなった。

 聞いてみれば、国の中心となる騎士団に所属していた重鎮に教わる機会が折角あるのだから、我が家の騎士団の修練も監督して貰えないかという話が父様からあったらしく、同時に見ることができる場所で行う事となったようだ。


 ボクは元来領地の子供たちと山野で遊んでいたこともあって、年齢を考えれば運動能力自体は王都に住む護身術の訓練を始める貴族の子供たちよりは良好なものであったらしく、持久力をつけるための基礎訓練はあるものの、予定を前倒して早速本格的な護身術の訓練に着手することとなった。

どうもありがとうございました。


次回はシアと騎士団の訓練風景の予定です。


◇◆◇今回初登場の人物◇◆◇

■シェディニス・オブシアン

 リューティミシア付を命じられている専属の護衛騎士。

■アシュケルーク・シルビノア

 護身術を教えるためベルサフィア家に来た元近衛騎士の老人。実は偉い人。


◇◆◇作中では多分触れられない蛇足的なコト◇◆◇

■貴族の持つ騎士団について

 領地持ちの貴族には領地の広さや爵位に応じ、騎士団を持つことが許されている。これは領地の中の要人警備、治安維持、有事の際の防衛戦力としてである。

 宮廷所属の騎士たちは基本的に貴族身分出身であるが、各領地の騎士団は団長や部隊長のみがその地を治める貴族の血縁者などで、それに従う騎士たちは領内の商家などの出身者が主体となっている。どちらにしても次男三男などの家を継ぐ可能性が薄い者たちが騎士団に所属していることが多い。

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