2. 園遊会にて
第二回です、もう少し書くペースを上げられれば良いのですが……。時間を確保できるときには多めに投稿して、時間が取れないときに休むのと、ペースを保てる間隔で一定間隔で更新するのはどちらが良いのでしょうかね……。
気になる点等ありましたらご指摘ください。
二日後、ボクたち一家は揃って王城へ向かった。
城門を馬車で通過する際に、少しだけ見えた部分だけでも確かに素晴らしい彫刻が施されていることがわかった。それはこの世界に生を受けてからは勿論のこと、前世の世界の記憶にすら出てこないほど見事なものだった。確かに絶賛する人の気持ちがわかるというものだ。
両親と城門の彫刻について話していたところで馬車から感じる振動が不意に消えた。会場となる庭園付近まで到着したようだ。
園遊会に初参加の子供は生花の飾りをつける習わしがあるとのことで、父様にエスコートをされてゲートをくぐった後、会場入口に待機していた侍女が髪に花飾りをつけてくれた。
周囲を見ると胸元に花飾りを付けた少年や髪に花飾りを付けた少女の姿が所々に見える。聞くところによると花飾りを付けていないのは昨年以前に一度参加をしている者であるらしい。
「母様、この園遊会は今後毎年参加するようなものなのでしょうか?」
「そうでもないわね。大人として認められてデヒュタントする前に一度は参加してお披露目しないと駄目だけど、二回目以降は希望しての参加になるし、園遊会に参加した後、デヒュタントまでの子供が居る家しか参加できないのよ」
「参加の希望、ですか……?」
「王城での園遊会はこの国の貴族であれば誰でも参加するし、デビュタント前の子供たちが必ず顔を見せるのはこの場だけだから結構人気があるのよ。
だから初参加の子が居なくても参加を希望する家が多い年には抽選で選ばれた家だけが参加できることになるわね」
「何故そこまで大挙して参加するのでしょう、ボクにはわからない話です……」
「必ず一度は参加するということは、ディアミナティスの貴族全てと会おうと思えば会える訳よね。
だからデビュタント前の段階でいろいろな家と親交を深めようとしたり婚約者候補探しの為に多くの家の子と会ってみたりしたいと考えている場合にはとても魅力的なのよ。もしかしたら今日の園遊会に参加することでシアちゃんにも話が出てくるかも知れないわ」
「なるほど……、でも、ボクは婚約者の話はまだ考えたくありませんよ……」
「そう……ね、まだまだ無理に選ぶ歳でもない訳だし、分かったわ。話は出てくるかもしれないけれど、しばらくは婚約者を決める気は無いということにしておくわね」
突然ボクの婚約の話に飛ぶとは考えていなかったため、思わず話を切ってしまった。ボクには弟妹が今の所居ないため、もし血筋を保ったまま家の存続を考えるにはボクが結婚して子を成さなくてはならないだろう。今のボクの意識の持ち方で本当にそんな事ができるのだろうか。
できることならば、まだまだ現役であろう両親には是非とも弟を作って頂きたいものだ。知ることのできない将来の事を考え、その場に立ち止まって物思い耽ってしまう。
周囲で挨拶を交わし合っている人たちのざわめきが急に収束したため見回すと、皆の視線が一カ所に集中していた。どうやら王室の方々が会場に入場するところのようだ。
その中の一人、ボクと同じ年頃の少女が初参加の徴である花飾りを国王様と同じプラチナブロンドに付けているのが判った。
国王様は会場の中で一段高く整えられた場に立つと、花飾りを付けた少女を隣に控えさせる。
「皆の者よく集ってくれた。今年もこうして園遊会を無事開催できることを嬉しく思う。
初めて参加する子らにはこのような場は慣れぬかもしれぬが、ここに居るのは基本的には歳の近い子のいる家の者同士だ、是非とも親睦を深めて将来に繋げて欲しい。
此度は我の二番目の娘であるエルフィリシーナも初めて参加する事となった。日頃より登城する者の中には既に見知った者も居ることだろうが、他の者やその子らも宜しく頼む。
では会を楽しんでいってくれ」
宣言を受け、園遊会が始まった。
社交に興味も持てず、同年代の子供と話題もなかなか合う気がしなかったので、陛下の挨拶が済んだ後はのんびり庭園の片隅で花を愛でていると、園遊会の雑事担当とはお仕着せの異なる侍女を父様が伴って現れ、呼び出しを受けたことを告げられる。
要件も知らされないままにただ後ろを着いていくと、庭園の片隅にある四阿で国王陛下や第二王女と引き合わされた。話を聞くところ、数年後に控える学院の入学の際のご学友にということらしい。
第二王女エルフィリシーナ・ディアミナティス殿下のご学友として呼ばれたのはミリティディア・ロスエメルダ伯爵令嬢、シルヴィリネ・モルクガニス子爵令嬢、そしてボク、リューティミシア・ベルサフィアの三名。この中で一番家格が高い辺境伯家令嬢として、畏れ多くもボクが三名の中では筆頭であるとのこと。
後に知ったのだが、園遊会参加のお墨付きを頂く際の最終試験では王室の子女と同じ歳の同性の子供たちにはこっそり付け加えられた追加試験があるものらしく、その追加試験で一定水準を超えた子供の中から学友となる者が選抜されるとのことだった。
それにしても彼女たちと挨拶を交わす中で記憶に何かが引っかかる。初対面の筈の彼女たちに何かあっただろうか。
学友となる少女たちとの一通りの挨拶が終わった所で国王様はエルフィリシーナ殿下の婚約者も紹介すると言う。
相手の立場が立場なだけに「そういう事柄に興味は無いのですが……」とも言えず、状況に流されるままになっていると、艶やかな金髪の美丈夫が美少年を伴ってこちらにやってきた。
「ご機嫌麗しく存じ上げます、陛下、エルフィリシーナ殿下。本日は正式に我が息子アズベルトとエルフィリシーナ殿下との婚約も結んで戴けるとお聞きしております。
こちらのお嬢さん方が先日話に聞いていたエルフィリシーナ殿下のご学友ですか」
「クリンベル侯爵、わざわざ足を運ばせてすまないな。その通り、彼女らにはエルと供に学院で学んで貰おうと考えている。エルの婚約者であれば今後公私共に関わる機会が増えるだろうからな、折角の機会だから紹介しておこうという訳だ」
顔を合わせるなり一先ずはと傍にいる私たち子供の事は忘失したかのように話し始める国王様と侯爵。しかし、これは不幸中の幸いかもしれない。美形の侯爵と子息の顔を見てボクの顔は真っ青になってしまっていた。
先ほど学友として紹介された令嬢たちで何か記憶にかかるものがあったのではないかと考えていたが、金髪翠眼の侯爵親子の登場で今までに思い出してはいなかった更なる記憶が一気に脳裏に流れ混んできた。瞬く間に溢れかえる情報の海に耐え切れなかったボクはとうとう倒れ、意識を手放してしまう。
四阿に倒れ、気を失う直前の霞むボクの目に最後に映ったのは学友として紹介された少女たちが困ったようにオロオロとする姿だった。
どうもありがとうございました。
◇◆◇今回初登場の人物◇◆◇
■ローゼバルト・ディアミナティス
エルフィリシーナの父親、ディアミナティス王国の国王様
■エルフィリシーナ・ディアミナティス
ディアミナティス王室の次女、主人公たちが学友として抜擢される
■ミリティディア・ロスエメルダ
ロスエメルダ伯爵家の長女、エルフィリシーナの学友に抜擢される
■シルヴィリネ・モルクガニス
モルクガニス子爵家の次女、エルフィリシーナの学友に抜擢される
■アズベルト・クリンベル
クリンベル侯爵家の嫡男、エルフィリシーナの婚約者
■アドレクスティ・クリンベル
アズベルトの父親、爵位は侯爵、宮廷での政治を主な仕事としている
◇◆◇作中では多分触れられない蛇足的なコト◇◆◇
■園遊会参加について
園遊会は大体八歳から九歳の初参加が多い。
家庭教育により大体五歳程から貴族の子女には算術、教養として知るべき文学と芸術、貴族としてのマナー、簡単な国の歴史が教えられる。
園遊会への初参加の許可は学院に入学して他家の子女らや異なる身分の者と関わることや学習を行うことに問題ないとされる程度の教養と振る舞いを身に付けた証でもある。
逆に参加資格がいつまでも取得できなければオチコボレ扱いされてしまう事も……。最低でもデヒュタントを迎えるような年齢までに参加ができないようであれば実家の継承権すらも危うくなってしまうこともある。
■学院について
歴史あるこの国の学院は一定の水準を超えた優秀な者で、かつ、後見する者が居れば学ぶことができる。在学期間は五年間。
尚、入学年齢は必ず一定ではなく、貴族であれば十歳から十五歳まで学び、卒業後にデヒュタントを迎える場合が多い(園遊会参加資格が取れず入学が遅れた場合その限りではない)が、庶民であれば初等教育後期となる十歳から十三歳の入学が多く。他国からの留学生はディアミナティスの貴族と同等であるが優秀であれば十歳未満でも受け入れている。
ディアミナティスの貴族ならば幼少時から家庭教師がつけられ、家で学び育つ事が一般的であり、園遊会参加に問題ないとされれば学院には問題なく入学できる水準とされる。この場合の後見人は両親となる。
貴族以外の民であれば貴族の子女らが家庭教育を受けるような年齢で通う初等教育の場で優秀な成績を残せば貴族の後見を受け、お抱え候補として学院に入学するという流れがある。(初等教育はおよそ八歳から十三歳まで、国の政策で行われている)
他国民の場合は身分によらず国費留学生としてその国の後見を受けることで学院に入ることができるようになっている。
優秀な学院卒業者は貴族であれば国の組織に属して上の立場に立てる者やその補佐をする者、庶民であれば大規模な商会に勤めるか地方行政の官吏、教育機関の職員となる者が多い。また、更なる知識・研鑽を求めて門戸の狭い大学院(研究職の道)へと進む者も居る。