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ep.01-3

 04


「おーあの子かわいいってね」

 俺、名莉海は名木風からの通信が切れた後名木風と対峙しているらしい女の子を双眼鏡で覗き見していた。

「名前なんて言うのかな、あの子」

 たぶん、色の名前なんだろうけどな。

 でも暗黒色って色の名前なのかな。暗黒って色聞いたことないけど。

「死色、だよ。あの子は」

「ん?」

 突然声をかけられ、俺は振り向く。

 そこには闇色のポンチョを着た、俺より身長の高い少年がいた。

「死色っていうんだ、へー。かわいいね。お前の妹?」

「妹ではないけど。似たようなものかな?ていうか、君、死色をかわいいだなんて趣味悪いね」

 少年は笑う。

「……で、あんたは誰?」

 殺気は全くと言っていいほどないものの、やっぱり敵なんだろうなあと思いつつ、俺は訊いた。

「僕は黒闇陽朱色。白陽陰名莉海君、よろしくね」

 黒闇陽か……。逃げられないかな、いや、無理か。出口ひとつだもんな。

 しかも天然の僕っ子だ。羨ましいぜ。

 萌えはしないけどな!

「よろしく。念のため聞いておくけどさ、見逃してくれたりは」

「しないよ」

「だよねー」

 即答だった。そんなぬるくはないらしい。

「君は弓なんだね。かっこいいね」

「そりゃあどうもってね」

 一応ナイフも使えるが、主に弓で戦う俺だった。大体は名木風とペアなので、近距離と遠距離で戦うのだ。

「あんたは……朱色は?」

「僕は体術って言ったらいいのかな?己の身だけで戦うってやつ。弓より百倍かっこいいでしょ?」

「そうか?」

 俺は体術より弓の方が好きだな。

 微妙な空気が、俺と朱色の間に流れる。ひとつ風が吹いた時、朱色が動いた。

「おや」

 かなりの速さで俺へ攻撃を繰り出したが、俺へは当たらない。避けた。

「へー、意外にやるね」

「まあね。ところで友達になるっていうの、どう?」

 友好条約結ぼうぜ。

「無理!」

「だよなー」

 なるべく戦いたくなかったぜ。

 心の中で呟いて、俺はきり、と弓を引く。

「おっと」

 何本か矢を放ったが、朱色は全て避けた。

 向こうは近接、こちらは間接。不利なのはこちらか。生憎、今回はナイフを持ってきていない。

「何考えてんのか、な!」

「……っ!」

 いつの間にか朱色が近くにいて蹴り飛ばされた。

 屋上のコンクリートの地面が背中に当たる。

 立ち上がる暇も与えず朱色は攻撃を仕掛けてくる。

 二発目はかろうじて転がって避け、その反動で起き上がった。

「ちょっぴり本気出しちゃうよ!」

 朱色は跳んだ。空中で回転し、俺の後ろに。

「くっ……」

「遅いよ」

 低く言って、朱色の蹴りが鳩尾に直撃し、また後ろに飛ばされた。

 一瞬息ができなくなる。が、気にせずに空中で矢を放った。

「うわっ」

 その矢が朱色の頬を掠る。俺は着地して更に攻撃する。

「危ないな、もう」

「知るか」

 一応形勢逆転……か?

 今の所は俺が押してるように見える。

「見切った」

 朱色はそう言って、矢を素手で掴んだ。

「まじかよ……」

 見切られたらもうどうしようもないじゃん。こっちは弓しか持ってないのに。

「余裕だねえ、名莉海君。考え事をする余裕があるならそれを戦闘に使って欲しいものだね」

「うっせーってね」

「そんな口きく余裕もなくしてあげるよ」

 途端に朱色の動きが速くなる。

 何回かは防げても、ほとんどといっていいほど当たってしまっている。

 こりゃまじやばいかもしれない。骨とか折れてんじゃねえのかと思ったり。

 反撃の余地なし。

 いつの間にか屋上の端まで追い詰められた。フェンスも何もない、落ちたら命はないだろう。

「自分で落ちる?それとも落としてあげよっか?」

 朱色は嗤った。

「落とされるとか……お断りだね」

「あっそ。じゃ、落とす」

 思うように体が動かない俺に、最後に蹴りを入れようとしたところに。

「名莉海!」

「えっ!」

「……ナイス名木風!」

 俺は力を振り絞って朱色を弓で殴った。

「いって!」

 朱色が少し後ろに下がる。俺は名木風と一緒に屋上から逃げた。体は結構痛かったけど、朱色は追っては来なかったので、逃げることができた。

「あーあ。逃げられちゃった」

 朱色は呟いた。


 家へ帰って、名木風に傷の手当てをしてもらっていた。

「あー超痛え。まじやだ。朱色なんか嫌いだばーかばーか」

 骨は折れてなかったけれど、痛いもんは痛い。

「うるさい。少し黙ってるんだよ」

 それから何を話すでもなく、ソファに座っていた。

 しばらくして名木風が口を開く。

「……私達、弱いね」

「うん」

「全然敵わないね」

「そうだな」

「………………」

 確かに俺達は弱いし、黒闇陽には到底及ばない。けど。

「凹むことじゃねーよ、名木風」

「何でだよ」

「この後強くなりゃいいじゃん。次あいつらに会った時返り討ちできるくらいに、さ」

 名木風は静かに頷いた。


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