授業
授業が始まった。
「さて、今日からここで教えることになった平多憲三だ。担当は数学全般。よろしく」
新しく赴任したてだから、教科担任だけだ。
クラスや学年担当になるには、来年以降になるだろう。
俺が配属となったのは1年生の数学全般だ。
少しおかしいと思うのは、都市部の高校だというのに、生徒数が1学年30人程度しかいないということだ。
教えやすいのは構わないのだが、これは少なすぎるのではないのだろうか。
校長にそのことを伝えると、最近は少子化が進んでいるからと答えられた。
昔は5クラスも6クラスもあったこの高校ではあるが、今では1クラスがやっとだという。
そんなものかと俺は考え直し、授業を始めることとした。
「中学校から高校へと、いちばん変わるのは教科の難易度だ。だが、基本からしっかりと教えるから、問題ない」
整然と並んだクラスに、俺の初めての声が響き渡る。
すがすがしいほどの青空から降り注ぐ、太陽の光や風が、教室の中へと舞い込んでくる。
外では隣接している中学校の生徒が体育をしていた。
教育統合委員会とかいう組織からの指導によれば、一般的な速さで教えていってほしいということであるが、不思議なのは、1年たてば、また最初から教えてもらうということだ。
学年が進むにつ入れて複雑なものを教えるのは当然のことで、同じ内容を1年ごとに繰り返させるというのは不自然だ。
だが、委員会からの指導は絶対だということで、仕方なしにそれに沿ってやることとなった。
どうしてそんな指導をするのか、俺には分からなかったが。