プロローグ
今度の赴任先は、どうやらこの街のようだ。
タクシーに乗り込んで、いつの間にか眠ってしまっていたらしく、すでに家の前にたどり着いたところで目が覚めた。
「お客さん、また遠くまで来たねぇ」
「そうですね、5800円も支払うような距離ですからね」
新大阪駅でタクシーを拾って、そこから一旦記憶が途切れる。
そして、新し家の前に立っているわけだ。
タクシーは走り去って、俺はすでに受け取っていた鍵を手にして、玄関へと向かう。
引っ越し業者はすでに俺の荷物の搬入を終えているようだ。
トラックはすでに家の前からいなくなっていた。
「よし、じゃあ入るか」
夢にまで見た一戸建てで、2階建て、庭とガレージ付きの物件だ。
これまではずっと集合住宅やマンションしか住んだことがないから、新鮮に映る。
4段の階段を上がり、玄関に鍵を差し込んで開ける。
「初めまして、我が家」
そう言うのは、癖みたいなものだ。
これからの、この家の生活に対しての、始めにする感謝みたいな感じだ。
まあ、ゲン担ぎということもある。
家に入ると、2階建の見た目通りの内装をしている。
玄関入ってすぐのところに、左へ通じる扉と、目の前にある階段。
階段の上は、3室に分かれていて、全てがフローリングだ。
1階の扉を通ると、すぐフローリングの床面が見えた。
さらに段ボールの山もある。
ここが主にリビングとしてつかる場所のようだ。
扉から入ったすぐ右手にトイレの扉とお風呂の扉があり、その横に台所があった。
「ま、なんとかなるか」
俺は自然にそう独り言を言っていた。