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僕は宮廷魔導師  作者: ゆうき
日常と非日常と
8/20

8話(改) 僕はレベル99

 時はカズキが98になった頃まで遡る。




 カツーン  カツーン  カツーン





 広大な廊下を歩く影が一つ。





 カツーン カツーン カツーン





 金属と大理石の床が当たる音が廊下に木霊する。


 外見から察するに、20代前半の女性だろうか。何処までも続く空を連想させる、澄みきった青い鎧、白いスカート、そして、側面に羽飾りをあしらった兜を装着している。


 彼女は一人、今日も肩を落とす。一体、何時になったら「資格を持つ者」が現れるというのか。


 (今日も見つからず、か……。私は一体何時まで探し続ければいいの?)


 そして何時もの様に、主神に結果を報告する。その度に溜息を吐く姿を見て、心を痛めていた。


 



 ここはアース神族の頂点、オーディンの居城ヴァルハラ。青い鎧姿の女性は、報告するべきか否か迷っていた。


 ―――主神オーディン


アース神族の頂点に君臨し、ヴァン神族との戦争を前に戦力を強化している。




 その時、女性に声を掛ける存在が。


「どうしたヒルド。……そっちも見つからなかったのか」


―――ヒルド


 戦乙女が一人。人間の世界に赴き、来る戦争に備えて戦力の確保を図る任務についている。



 こちらも20代の女性だろうか。ヒルドと外見は一緒だ。ただ、ヒルドの青い鎧とは打って変わり、何処までも吸い込まれてしまいそうな漆黒の鎧を身につけている。


「ブリュンヒルデ……。貴方も……その」


 ―――ブリュンヒルデ


 戦乙女が一人、此方も人間の世界に赴き、人材を求めて世界を飛び回っている。




「皆まで言うな。「資格を持つ物」がこれから生まれると確定しただけでも、我々にとっては喜ぶべき事なんだ」


「……でも、私達はそれをずっと昔から探して……」


 ヒルドと呼ばれた女性は分かってはいるけれど、と溜息を吐いた。


 彼女達は主君オーディンから命じられ、「資格を持つ者」を、確証を得ぬままずっと昔から探し続けていた。


「……そう落胆するな。そんなお前に朗報だ」


「え?」


「近い将来、一人か二人、資格を持つ者がこの世に生まれるとフリッグ様が仰っていた」


「っ! それは本当ですか!」


 ―――フリッグ


 オーディンの妻であり、最高位の女神でもある。予言の能力を持っている。



 ヒルドはブリュンヒルデに食ってかかる。それが本当なら、すぐにでも探しに行かなければ! 


 対するブリュンヒルデは、自分の肩を掴んで放さないヒルドの手を、苦笑しながら解いた。


「落ちつけ、フリッグ様が嘘を言うはずが無いだろう」


「ですが! 一刻も早く保護しなければ大変なことに!」


「落ちつけと言ったろう」


「……ごめんなさい。熱くなりすぎました」


「フリッグ様は「その時が来ればおのずと分かるはずだ」とも仰っていた。今は人間の世界ミズガルズに降り立ち、最短で保護できる様に警戒するしかないさ」


「……分かりました。それでは、私はオーディン様に報告をしたらすぐにミズガルズに飛びます」


「ああ、私は一足先に行っている」


 そう言い残し、二人はその場を後にした。



 あ、どうもカズキです。


 現在98%まで経験値が増えましたよっと。


 さすが推奨レベル95のダンジョンだね。狩り方の問題もあるけど、クルッポを倒していた時より経験値の入りがいい。


 でもこの狩り方、前衛と支援と護衛のメンツは楽しいかもしれないけど、火力の人達ってすっごくつまらないんだよね。僕のレベル上げに付き合ってもらってるから傲慢っちゃ傲慢なんだけど……。


 こう、何ていうの? ソロと同じくライン作業っちゃライン作業なんだけど、自分の好きなペースではないじゃん? あ、贅沢ですか、はい。


「カズキよ、そろそろMPが尽きるから交代をお願いしたいのだが……」


「分かった。それじゃ、次の1セット倒したら交代ね」


「あい分かった。それではもうひと踏ん張りと行くかの」


 なんだかんだいって、キリアはこのキャラの時はこの口調で統一することに決めたらしい。まぁ、新鮮味があって良いと思うよ? 僕は恥ずかしくて出来ないけどさ。


「カズキ君、後どれくらいでレベルが上がるんだ?」


 ガルドに言われて経験値を見やると、98.2%を指していた。これなら後30分もしないで99になれそう。


 ちなみに、ガルドだけはもう100になっている。人知れずに僕以上の狩りをしていたのだろう。人の事あんまり言えないけど、リアルがとても心配である。


「えっと、いま98.2……あ、3%になりました」


「後30分という所か。……よし、一息吐こう」


まぁ、2時間近くぶっ続けで狩りしてたからねぇ。そりゃ疲れるわな。


『皆、休憩をいれるぞ。前衛は今集めているモンスターをベースキャンプに持ってきたらそのまま補給タイムだ』


 クランチャットでガルドが連絡を入れる。そして前衛達から是と返事が返ってきたので、僕は前衛の人達に渡す為の食材を確認し始めた。


「ん~……肉が後500個か。エレナさん達は大丈夫ですか?」


「私はまだ余裕あるわよ。前衛に全部渡してもポーションがあるから問題ないしね」


「わらわも問題ないぞ。同じくポーションを持ち合わせているからの」


「私も問題ないよ~。自分でヒールできるから~」


「問題なさそうだな。それでは、前衛が戻ってきたら各自渡してやってくれ」


さてと……何をしよう。


 どうやらこの開けた場所には敵は湧かないらしい。つまり護衛の必要があまりない。


 実際、ガルドも何回かシルバーウルフをかき集めに出かけてたしね。まぁでも、護衛っていう名目上離れ過ぎるのも良くないって判断したんだろう、今は僕の横にいる。


そんなガルドであったが、やっぱ暇みたいだ。僕に話しかけてきた。


「所でカズキ君。99になったら転職するのかい?」


 ふっ、愚問だな。僕は隠し職業探しの旅に出るのさ!


「えと、99になったら隠し職業を探そうと思ってます。その、皆上位職ばっかりなので……」


「……一理有るな。下位や中位はスルーされやすい。成程、言われてみれば確かにその通りだ。そう言えばまだ隠し職を見つけたという報告はネットには上がっていないな……前衛達が戻ってきたぞ。殲滅を頼む」


「「「了解!」」」


 僕達が返事を返すと、前衛陣はまるで示し合わせたかの様に一斉に戻ってきた。ちょ、遠くからでも土煙が巻き起こってるのが見えるんですけど!


「カズキ! アレを頼むわ!」


「そうじゃな。カズキ、アレを頼む」


「カズくんお願いね~」


 アレ、か。仕方が無い。詠唱を始めますか。


 僕はミラージュティアラを装着、MPポーションを飲んで全快にし、静かに詠唱を開始した。


 ミラージュティアラを装備した今、予約詠唱は最大で20までストック出来る。纏まったモンスターの中心で一斉にぶちかましてやれば一網打尽に出来る筈だ。距離からして、多分2セット位溜める時間は有る筈だ。1セット目は遠くから打ちこんで、ここに到着するまでに頭数を減らした方が良いだろう。


『やっべ集め過ぎた。殲滅頼むぞ!』


『でひゃひゃひゃひゃ! 死ぬ! 死ぬ! やばいって! どれくらいやばいってマジやばい!』


『うおおおおおおおお! 肉が後30個しかねぇよおおおおおおおおお!!!』


 ……頭が痛い。区切りだからって限界まで集めたなあいつら。


  ……よし、準備はできた。とりあえず射程ギリギリから1セット目行きますかぁ!


 僕は両手を重ね、天に向けてかざした。両手の中で暴れる魔力を必死に抑えつけ、発射するタイミングを伺う。


 ターゲットの補足は既に終わっている。……今だ! よし、飛んでいけ!


 一斉に飛んで行ったファイヤーアローは、次々にシルバーウルフを焼き尽くしていく。でも、生き残った奴がやっぱり半分近く残っている。戦意も失ってないみたいだし、これは逃げ出さないな。


 んー……なんとか相手の数を減らしながら溜める事はできないかな。


 エレナやキリアの設置系、大魔法に比べて、ターゲット系の初級スペルは威力はそこまでではないが、とにかく射程が長い。エレナ達に任せるのもありだけど、ここは僕が殲滅したいなぁ。


  何だかエレナとキリアがしっとりとした目つきで僕を見てくけど、もう慣れたよ僕は。


 徐々に近づいてくる前衛陣。それに比例して増えて行く僕の魔法陣。さて、到着するのが先か、魔法陣が飽和するのが先か……。


「残っているのは……15程か。エレナ、詠唱を始めてくれ」


「りょーかい!」


 恐らく、目算ではあるけど僕の魔法陣が飽和する前にモンスター達はここに到達してしまうとガルドは判断したのだろう。予備火力って訳だね。


 エレナのサブキャラクターであるエルフも、レベルは90台に到達している。当然INTはカウントストップの999だそうだ。これはオーバーキルになるか……?


 エレナのステータスは僕とは違い、魔法の威力が上がるINTと、詠唱時間が短縮されるDEXに重点を置いている。つまりやわっこくて避けられないけど、詠唱時間は短い。まさに魔法使いっていう感じのタイプだね。

 

 何てアレコレ考えていたら、詠唱完了したエレナの杖全体が光り、上空から隕石が降ってきた。……ああ、これは全部倒したな。


 行き先を無くした僕の魔法は、いつ不意打ちを食らっても大丈夫な様に待機させておく。



「よし、全て片付いたな。それじゃ皆回復剤を補充した後、休憩を取ろう!」


現在98.6%。よし、レベル99はすぐそこだ!



 補給も終わって、僕達はベースキャンプで警戒を続けながら休憩を取っていた。


「しっかしあれだな。今まで何回か此処でクラン狩りしたけどよ、通りすがりのPTにドン引きされたのは初めてだわ」


 前衛陣の一人が楽しそうに言う。まぁ、そりゃあんだけファイヤーアローが飛んで行ったら、始めてみた人はドン引きしても無理ないと思う。チートだとか思ってたんじゃないのかな?


「だははははは! そりゃ姐さん達やカズキが頑張ってくれてるからだろうよ! 俺なんかまだレベル95だからよ、あり得ない勢いで経験値が上がって行くぜ!」


「ぶひゃひゃひゃひゃ! おれはまだ94だ! さっきまで93だったんだぜこれ!」


「まーそーね。私も97だけど、既に50%以上稼がせて貰ってるわ」


「……カズキ君。俺達とは既に違う世界の様だ」


「……そう、ですね」


 何ていうか、一桁違った。僕は此処に来て5%程稼いだ。ガルドに至ってはまだ3%だそうだ。仲間が育っていくのは嬉しいけど、なんか複雑。ちょっとだけ、ガルドと仲良くなった気がした。


「さて、そろそろ頃合いだろう。アンジェラ、支援を前衛陣に頼む。それが終わったら狩り再開だ!」


「は~い。それじゃ支援かけるわね~」


「「「合点承知!」」」


 ……ここ最近、急激に前衛の人達の動きが怖くなってきた気がする。ていうか、無駄に暑っ苦しい。でも、何事にもやる気が有るのって良い事だよね。僕も頑張らなくっちゃ。


「待ってろよウルフちゃん! 今集めてやっからな!」


「でひゃひゃひゃひゃ! それじゃ誰が多く集めるか勝負しようじゃねーか!」


「ぜってーまけねぇ! 楽しみにしてろよカズキ!」


 ……やる気が有るのって……良い事だよね?


 もう、こいつら3バカって呼んで良いかな? なんかその方がやけにしっくりくるんだよね。


 改めて、3バカはバラバラの方向に突撃していった。それをみてガルド達は楽しそうに笑っていたのだが、ガルドを見て、ふと、思い出してはいけないことを、思い出してしまった。


―――ガルドがドラゴンフォースの仲で唯一ドラゴンブラストを使えるという事を


……これは指摘して火力に加わって貰うべきなのか、それともスルーして穏便に済ますべきなのか、どっちだ、どっちにしたらいい?


 2.1枚目の職位をより確かな物にする為に突っ込みを入れるべきなのか? それともマスターとしてのカリスマ性を……どうしたら……。


「カズキ? 考え事?」


「いや、その、、ガルドさんのドラゴンブラストを火力に……あっ」


「「「「あっ」」」」


 あ っ 




「「「…………………………ぷっ」」」


 ぴしりと固まるガルド。笑うドラゴン姉ズ。


 嗚呼、2.1枚目の職位は絶対無くならないなこれ。


「……カズキ君、何時から気付いていた?」


「あ、えっと……その……すみません」


「……謝らないでくれ。ああ、くそっ! これでは職位の変更が更に難しく……!」


 ワナワナと震えながら己のまぬけさを呪うガルド。いや、ちょ、やめて下さい赤いオーラ出てますっ

て!


「ガールド!」


「ガルド」


「ガルドさ~ん」


 ニヤニヤと生温かい笑顔を浮かべてガルドを呼ぶドラゴン姉ズ。あはっ☆ どうやっていじろっかなぁ~。って顔に書いてありますよ。


「……なんだ?」


 ガルドは既におねいさま方の言いたい事が分かっているらしく、半ば諦めた様に溜息をつきながら返事を返していた。なむなむ。


「次のぉ」


「職位変更会でも~」


「ガルドの職位はそのままね!」


「畜生!」


 ガルドが文字通り頭を抱えてしまったのは、言わなくても分かるよね?








 意気消沈してしまったガルドを慰めながら、狩りは続いた。


 元気出して、ガルドさんは頑張ってますよと一声かけてやったら「こうやって慰めてくれるのはカズキ君だけだよ」と、暗い影を落としながらも、ガルドは僕の頭を撫でながら護衛を続けてくれた。


 たまにさっきみたいに3バカがシルバーウルフを特盛りで集めて突撃してくる事もあったけど、その時ばかりはまるでクランマスターの意地を見せるかの様に、積極的にガルドは殲滅に参加していた。その際、姐さん方はクスクスと笑っていたのだが、これはガルドに教えないほうがいいな。


 そして経験値が99%を超え始めてから、0.1%、また0.1%と100%を目指して増え続ける経験値が気になりだした頃、行き成り僕のメールBOXが受諾のサインを示した。


 片手で魔法をシルバーウルフに撃ちこみながら、もう片方の手で僕は目の前にメールBOXを呼び出す。……ゲームマスターから? なんだろ、緊急メンテナンスとかかな?


「カズキよ、何故メールBOXなど開いておるのだ?」


 そんな中、キリアは僕の異変に気付いたらしく、何故僕がメールBOXを開いているのか、と聞いてきた。……他の人には届いてないのか?


「えと、なんかゲームマスターからメールが……」


「ゲームマスター?私の所には何も来てないわよ?」


 皆に聞いてみても、返って来た答えは否だった。……ゲーム内の事だからウイルスとかは入ってないだろうけど、なんだろ、開くのちょと怖い。でもまぁ、運営からだし……開いてみるか。



 


 From:ゲームマスター


 永く険しい道のりを、よくぞここまで歩き続けました。よって、レベルが99になった瞬間に「あるプレゼント」を贈らせて頂きます。如何なる事象が発生しても、決して驚かぬ様、よろしくお願い致します。






 ………っ! 何だこれは……冗談にしては悪質過ぎる!



 ゲームマスターって名前のキャラクターが悪戯メールを送ってきたのか? ……いや、それだとタイミングを此処まで正確に把握できるのはおかしい。僕はここにいるドラゴンフォースとミツミ以外には口外していないのだから。


 僕の顔色がドンドン悪くなっていくのが分かったのだろう。エレナ達は敵を殲滅した後、僕を介抱しながら理由を聞いてきた。くそっ、僕だって何が起きているのか分からないっていうのに……!


「ちょっとどうしたって言うのよカズキ」


「むっ……大丈夫かカズキ、顔色が優れぬ様だが」


「カズくん大丈夫~?」


「大丈夫かカズキ君」


「ちょっと……このメールを見て下さい」


 僕は気だるげに腕を動かし、ガルド達にメールの内容を転送した。実際気だるいのだろう。99になった瞬間に何が起こるか分かったもんじゃない。文面を見る限りでは悪い事は起きそうではないが、ゲームマスターが関わっているとなると……。


「なによこれ? ただの悪戯じゃない」


「そうか? それにしてはタイミングが正確すぎるとは思わぬか?」


「ん~……良く分からないから~ガルドさん考えてみて?」


「なっ、俺か? 俺だったらとりあえず99にしてみるな。あるプレゼントと言っているから、悪い事ではないと判断できるが。……カズキ君。99まで後どれくらいなんだ」


 ガルドに促されて経験値表示を見やると、99.8%を指していた。何でこんなに気が重いんだ……マジシャンのまま99になることを目標に、ずっと頑張ってきたのに。


 99.8%まで増えたとガルドに伝えると、ガルドは分かったと一言呟き、PTメンバー全員にチャットで呼びかけた。


『前衛共! これで最後だから思いっきりかき集めてこい! 回復剤を全部使っても構わん!』


『お! ついにカズキのレベルが上がるか! よっしゃ任せろ!』


『ぶひゃひゃひゃ! 合点承知だ!』


『おーけいおーけい! おらおら! どんどん集まってこい!』




 ―――ドクン


 99になったら何が起こる?


 ―――ドクン


 プレゼントって何だ?


 ―――ドクン


 そもそも本当にこれはゲームマスターからのメールなのか?



 考え出したらキリが無い。……3バカ達は既に視界の端に入っている。最後の殲滅はガルドが行うと言っていたから、大丈夫だろう。


 僕は、待つだけだ。


「オオオオオォォォォ!!!!」


 ガルドの体が深紅のオーラに包まれる。


 その時は確実に近づいていた。


 迫りくるシルバーウルフの群れ。


 迎え撃つべくドラゴンブラストの発射態勢に入るガルド。



 落ちつけ。落ちつけ、落ちつけ。


 大丈夫だ。僕がどうにかなってしまってもきっと仲間達が助けてくれる。


 大丈夫だ。ガルドを、エレナ達を、3バカ達を信じよう。


 ―――さあ来い! 



「さっさと、くたばれええええええぇぇぇぇ!!!」



 ゴウゥ! っとガルドが漆黒の業火を吐き出し、シルバーウルフの群れが一掃された瞬間、頭上で、女神が僕を優しく包み込む様なエフェクトが湧きおこった。


 これでレベル99になった。……さぁ、何が起こる。


 瞬間、上空に目を覆い隠さんばかりの光の奔流が巻き起こった。


「悪戯メールじゃなかったの!?」


「むぅ、大丈夫かカズキ!」


「カズくん! こっちに!」


「皆カズキを守れ!」


 皆僕の身を隠す様に、光の前に立ちふさがる。……ああ、やっぱ頼もしいなぁ……。


 僕達は逃げ出さずに警戒を解かぬまま立ちつくす。この瞬間、転送アイテム系全てが使用不可能になっていたからだ。


「アンジェラ! ワープゲートは使えるか?」


「えっと~……ええ!? 何で使えないの~?」


 つまり、逃げ出すことは叶わないってことか。これは覚悟を決めた方が良さそうだ。


 


 少しずつ光は収まって行く。……さぁ、鬼が出るか、蛇が出るか。


 



 その時、行き成り女の人の声が聞こえてきた。光の中からだろうか。






「―――見つけたぞ。お前が「資格を持つ者」か。エルフの少年よ」




そして光は収まり、辺りは何事も無かったかの様に木々のざわめきだけが残った。






 光の中から出てきたのは、僕をエルフの少年と呼び、漆黒の鎧を身に纏い、背中に天使の翼を生やした美しい女性だった。







 ―――おはようございます。こちらアースガルドオンライン運営チームです。全プレイヤーに通達します。隠し職に到達したプレイヤーが現れました。これにより新マップ『アースガルズ』を解禁します。詳細は後日公式ホームページをご参照下さい。繰り返します―――

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