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第六話 師匠

 俺はこの瞬間、破壊神ホエールと協力関係になった。


 あの戦いからの約束をついに果たすことができたのだ。


 とりあえず俺は何をしていいのか分からなかったので、少女に聞いた。


「俺は何をすればいい?」

「そうだね、まずは修行からだ」


(修行?)


 修行に関しては、ここに来る前にかなりしたはずだ。今はブリディス討伐に向けて、一刻も早く動くべきだと思った。

 

 なので俺はすぐに反論した。


「修行しなくても、俺は戦える」

「今のキングじゃ、ブリディスどころか四天王ですら手も足も出ずにやられるよ」


 少女は俺を舐めているようなことを言った。


 まだ戦闘すらしていない今の俺の実力がわかるのはおかしいだろうと思ったのだ。


「なぜそう言い切れる?」

「大体の雰囲気でわかるよ。場数を踏んでると、戦わなくてもどのくらい強いのかわかるんだ」


(納得できない…)


 だが、ここは素直に少女の言葉を受け取ることにした。修行で実力を示せば、すぐにでも前線に駆り出されるだろう。


「じゃあキング、君の師匠を紹介するよ」

「いや待て、修行なら俺一人でもできるぞ」


 俺は即座に反論をした。できれば修行は自分のペースでやりたいのだ。


 しかし少女は俺の言葉を無視して、誰かを呼んだ。


「シィ、こっちに来てくれ」


 すると、ゆっくりと右の襖が開いた。


 そこから現れたのは、オレンジの髪色、白色のコートを着た長身の女性だった。


「ホエール、勝手に弟子を増やすな」

「まあまあ、僕が教えるの苦手なのは知ってるでしょ?」

「仕方ないなぁ」


 そのシィという女性は渋々承諾した。勝手に話を進められたので頭の整理が追いつかない。


「キングだったかな?これから私は君の師匠になる」

「シィさん?勝手に話を進められても困るんだが…」

「こら!師匠って呼ばないと!あと話す時は敬語ね」


 その女性はユーモアが感じられるような声で言った。

 

 俺は女性の実力に目を疑ったが、この少女が師匠として紹介するほどだ、強いことに間違いはないのだろう。


 俺は疑いながらも、その女性を師匠として認めることにした。


「師匠…これからよろしくお願いします…」

「それでよろしい、これからよろしく、キング」

 

 この瞬間、俺とシィさんは師弟関係になった。まあすぐにでも師匠を超えて、ホエールに俺の実力を認めさせてやる。


 俺はこれからの修行に向けて、闘志を燃やした。


「あ、言い忘れてた。キング、君の部屋に案内するよ。フィンちゃん、よろしく」

「俺の部屋か?それはありがたい」


 ホエールが言うと、先ほどこの部屋まで案内してくれたフィンという少女が、襖を開けて、こちらまで来て言った。


「キングさん、こちらに来てください」


 俺は言われるがままに、案内される。師匠も俺の後をついてくる。おそらくこの後すぐに修行をするのだろう。


 三階まで登ると、少女は左の襖を開けて言った。


「キングさんの部屋はここです」


 その部屋は、六畳ほどの広さの和室で、中は檜の香りがほんのりとする。布団も用意されているようで、随分と手厚いもてなしだ。


「ありがとう、フィンさん」


 俺はお礼を言って、その部屋の隅に荷物を置き、ひとまず寛がせてもらおうと思い、畳の上に横になろうとした。


 しかし、そんな俺に喝を入れるような声が響く。


「キング!もたもたしてたらダメだよ?今すぐ修行!」


(少しは休ませてくれてもいいだろ…)

 

 まあすぐにでも俺の実力を認めてもらいたい気持ちもある。俺は文句を言いたい気持ちを堪えて、その場で少し気だるげに返事をした。


「はい…師匠」

「よろしい、じゃあ早速、修行場に移動するよ」


 そう言うと、師匠は早歩きで下へと降りていく。俺も師匠の後をついていきながら、下へと降りる。


 師匠が城から出て、城の前から少し離れた小草原で立ち止まり、俺に向けて言った。


「今日はここで修行する、まずはキングの実力を確かめたいんだけど…」

「師匠、なんでもいいですよ。どんなことでもこなして見せますから」

 

 俺は自信満々な態度で言った。すると師匠は、思いついたような顔をする。


「じゃあキング、私に君の全力をぶつけてみてよ。それでキングの実力を確かめてあげるから」

「本気を出してもいいんですか?師匠の身に危険が…」

「大丈夫、大丈夫、どんな攻撃も軽くいなしてみせるから」


 俺は師匠の提案に驚いた。俺の全力をぶつけたら、師匠だろうとただでは済まないだろう。


 念の為、師匠が何の力を持っているのか尋ねてみることにした。


「師匠は何の力を持っているのですか?神の力ですか?」


「私は熱の異能を扱うよ、体から熱を出す能力」

「異能?なんですかそれは」


 俺は異能という存在について詳しく知らなかったため聞いた。すると彼女は驚いたような表情になる。


「異能も知らないの?これだから田舎者は…」

「田舎者って…教えてください師匠」


 いきなり田舎者というのは失礼だとは思ったが、ここは話を聞かなければならない。俺は少し苛立ちを感じながらも師匠にお願いした。


「異能って言うのは、神力ほど強力じゃないけど、誰にでも持っている特別な力のこと。神力と違って努力しないと手に入らないものだけど」


 そんなものがあったとは。長い間本を読んでいたが、フィクション小説を好んで読んでいため、そのような情報は全く知らなかった。


 だが熱を出すだけの異能で俺の全力を受け止められるのだろうか。俺は少し不安になりながらも、全力を出す準備を始める。


 師匠も体から熱を帯びた魔力のようなものが溢れ出している。


 ホエールほどではないが、師匠も中々の実力の持ち主だと感じた。


「じゃあ師匠、始めていいですか?」

「いつでもいいよ、キング」


 俺は少し間を置き、魔力を足に集中させる。


 その瞬間、俺は後ろ足を踏み込み、そのまま師匠の目の前へと瞬時に移動した。


 そして俺は、そのまま拳に魔力を込めて、ここに来る前に編み出した技、重時拳じゅうじけんを発動させる。


「重時拳!」

「ぐっ、中々やるじゃん。直撃してたら危なかったよ」


 師匠の胸に当たる寸前で、その拳は師匠の肩を掠めた。


 俺はその勢いのまま追撃する。重時拳を何発も発動させ、師匠は徐々に後退していく。


 しかし俺の拳は最初の肩を掠めた一撃以降は、まったく当たっていなかった。俺の重時拳は軽い身のこなしで避けられてしまう。


「はぁはぁ、なんで当たらないんだ…」


 俺は徐々に体が疲弊していく。逆転しようと、永久逆変を発動させることも考えたが、拳すら掠りもしないので、当たるわけがない。


 師匠は俺の全ての攻撃を軽い身のこなしで避けてしまう。


 ホエールの戦いの時の作戦を使うことも考えたのだが、師匠はおそらくその戦いを知らされているはずなので意味がないだろう。


 俺は体を必死に動かしながら、たまにフェイントも入れるが、必ず避けられてしまう。まるで俺の思考を全て読んでいるかのように。


(読んでいる…?そういうことか!)


 俺はその瞬間、なぜ師匠が俺の攻撃をすべて避けられていたのか――その答えに、ようやく辿り着いた。

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