第三幕:タンゴの呪縛
やあ、君。第二幕の宴は、死のステップへ。
蜘蛛の男が倒れ、王の理性がタンゴを踊る。
恐ろしい死の表現——ファウストの魂が、君の闇を照らす。
(語り部ファウストより)
やあ、君。この話をどう君に語ろうか、考えていた。
死の表現。もっとも恐ろしいものと、美しいものがある。
今度のは前者だ。
第二幕では、頭のいい二人が宮廷広間で話していた所を語った。
王は宰相を信じて、彼の不安を預けた。
宰相ポローニアスは、狂人の手によって討たれた。
ハムレット王子と王妃ゲルドルートの密会の話を、
彼の王の代わりに、
盗み聞きしようとしたのが、
彼の破滅だ。
彼の経歴、才能、何もかもが虚空へと消えた。
知性が宿っていた瞳から、
闇が幕のように閉じる。
細い指の集まりは何度か動いて、
完全に停止した。
腹部に突き立てられた王子の剣が、
彼の魂を驚かせたんだ。
王妃は、広間で叫ぶ。
悪魔さえ、憐れむほどの狼狽えっぷり。王子と倒れた老人を眺めーーまあいいさ。
この話は、ルネサンス風の宮廷の広間にある玉座に、
沈み込んで宰相からの報告を待つクローディアス王の耳に届いた。
彼の胸は裂けそうになったが、
同時にハムレット王子を始末できる口実にもなった。
だが狂った王子を、
自国で処刑させては、まずかった。
それは個人的なことさえ制御しきれてないバカな王であると、周辺国に宣言するようなものだった。
彼は部下を使い、
王子をひっそりと処刑する事を選ぶしかなかった。
相談できる相手もいない。
彼なりに愛している王妃にすら言えない。そんなことしたら、今夜の彼女からの奉仕がされなくなる。
それどころか、
目の敵のように見るだろう。
彼は泣きたかった。
誰にも話せない。
誰にも理解されない。
それでも、王国を守っていきたい。
「王の気持ちを、民の誰が知る?」と彼はボクらを見た。
「余は、余は悪くない。悪魔とは契約もしてない。ただ、ただ、やらなきゃいけないことをやったんだ。」
狂えたら良かった。
彼の理性は、狂うのさえ許さない。
祝福と呪いのダンスさ。
頭の中での熱烈なタンゴ。
彼は王子を殺すことにした。
(こうして、第三幕はタンゴのステップと共に閉じられる)
第三幕、タンゴのステップで闇が閉じた。王の「王の気持ちを、民の誰が知る?」が胸に刺さる?
ハムレットの剣が、すべてを変える。第四幕で、王の最期を。
感想で、呪いを解いてくれ。
(語り部ファウストより)