第一幕:兄の影が王座を得た日
やあ、君。ファウストの魂が、再び動き出すよ。今回はシェイクスピアの城塞に潜り込み、誰もが知る復讐劇を、意外な視点から覗き見るんだ。悪役の心の闇を、君と一緒に。冷たい石の檻で、何が起こるか……さあ、目を凝らして。ボクは君の友、語り部ファウストさ。楽しもうぜ、この亡霊の幻視を。
やあ、君。今回の物語は、
ファウストが天に召された後の話だ。
彼の壊れた魂は、
次の誰かに受け継がれた。
もしかして、君の時代にも彼の魂を持つ者がいるかもしれない。
ボクが誰かって?
語り部ファウストさ。
ヨハン・ゲオルク・ファウスト。
君と共に物語を見つめる者であり、
君の友だ。
今度の物語は、16世紀のデンマークのエルシノア城だ。冷たい石に囲まれた檻。
ここで、ファウストの魂を継いだ男が、亡霊に破滅させられる様を見ることになる。ざまあない。
彼の名はクローディアス。
合理的で、有能で、誠実な男だった。
でも、死者の言葉には、勝てなかったんだ。
クローディアスは、兄とは違い頭のいい男だった。危険に飛び込む兄の背中に隠れていたが、鋭い知性で兄を支えてきた。
兄はいつか滅びる。
その時、国を巻き込ませたくはなかった。兄は止まらない。
殺されるか、死ぬまでだ。
何度も彼は兄に忠告した。
一騎打ちはやめろとも言った。
戦場で、力を誇示するためだけに、
皆を奴隷の憂き目に遭わすなとも。
結果、兄の失望と警戒だけが残った。
「お前は女のようなヤツだ。国は任せられない。息子ハムレットが、俺の後を継ぐ」
何度も何度も、
背中にいる彼にいうようになった。
ある日、兄は死ぬ。
神に召された。
遺された兄の妻を見て、
彼女もまた、兄に苦しめられた女と知る。豊かな金髪に知的な顔つき、少しふくよかな慈愛の込められた魅惑的な体。
ああ、二人は燃え上がった。
兄から受けた思い出を、
愛欲の炎で焼き尽くしたんだ。
灰の中で、二人は横たわる。
終わった。
次に進まなければ。
ふと、彼は後ろを向くんだ。
兄の息子が、
まるで亡霊のように見ていた。
金髪の巻毛が堕ちた天使の絵のように、黒い服が、死神を思わせた。
(第一幕は、こうして亡霊の沈黙により閉じられる。)
第一幕、幕が下りたね。クローディアスの灰の中で横たわる愛欲と、ハムレットの亡霊のような視線。ファウストの魂は、まだ静かだ。でも、君は感じただろう? この沈黙の重みを。次は第二幕で、幻視が本物の破滅を呼び込むよ。クローディアスは、死者の言葉に抗えるのか? 感想や考察、待ってるぜ。君の魂にも、ファウストの影が差したかな?