表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/23

第3話:乗り込んだアストリア王国

読んでいただきありがとうございます!毎日19時更新です♩

 アストリア王国の王宮は、息をのむほど美しかったが、その空気はどこか張り詰めていた。歓迎の言葉を述べる貴族たちの笑顔の裏に、探るような視線を感じる。

(…さて、仕事の時間ね)

 わたしは公式行事の合間を縫って、侍女を通じてソフィア王女とエリアス王子に「秘密のお茶会」の誘いをかけた。


「よく来てくれた、アンジェーヌ嬢。単刀直入に聞こう。おまえも、この縁談を望んではいないのだろう?」

 騎士服に身を包んだソフィア王女…

 ーーーかっっっっこいい!!

 アウトリア王国でのお茶会でも、我が国の社交界でも聞いた、噂通りの麗人…これは…淑女ばかりの親衛隊があるというのも頷ける。とにかく美麗で、格好いいのだ!

 その真っ直ぐな瞳に、わたしは思わず頬を染めて見惚れてしまう。

 え?こんな人がウチの兄と??嘘でしょう??


「アンジェーヌ嬢?」

「(は、いけない!危うくGLに引きずられるところだった…)はい!私には、心に決めた方がおりますので!」

「そうか…巻き込んですまない…」


 隣では、エリアス王子が気まずそうにお茶を飲んでいる。

「すまない、アンジェーヌ嬢。僕も、君との結婚は望んでいない。なにせ、君は僕の好みではないからな…」

「好み、ですの?」

「ああ。僕は、もっとこう…豊満で、おっとりした女性が好きなんだ!」

 …どうやらわたしは、彼の言うところの「胸の大きさ」で、足切りされたらしい…なんか失礼!

 ジト目でエリアス王子を見る。

「あ、いや、アンジェーヌ嬢の胸が、どうという事ではなく!僕にも、侯爵家の令嬢の恋人がいるんだ。」

 いや、今、はっきり「胸」っていいましたよね!

 とにかく、アルンスベルク侯爵家のセシリア嬢と恋仲であり、今回の件がなければ近々、婚約する予定だったとの事。(そして、セシリア嬢は豊満で、母性豊かな女性なんですと…)

 だったら、なんでこんな話になっちゃてるわけ?


 そもそも、この縁談は、国王陛下が宰相であるヴァレリウス公爵の進言を受けて決めたものだという。

 最近、ソフィア王女とエリアス王子の派閥が、勝手に次期国王争いをしていて、それが激化している。お互いに、派閥貴族に話をするも、なかなか収まる気配がない。

 そこに、「そもそも、王子が国内にいるのが火種では」と、『和平の証』としてヴァインベルク王国へ婿に出すことを提案。派閥争いも沈静化できて、ヴァインベルク王国との関係にも一役買うことができ、一石二鳥ではと。


「……なるほど…では、お二人のお考えを聞かせていただけますでしょうか?」

 改めて、『お考え』という名の『覚悟』を聞きたい旨を伝えると、二人はわかったようで、顔を引き締めて頷いた。

「ソフィア王女殿下、兄リヒルトのことはどうお考えですか?」

「わたしにとって、彼は唯一無二の存在だ。彼のいない人生など考えられない。彼が王配になろうが、平民になろうが、一緒になる所存だ。」

 思っていた以上に、ソフィア王女は兄のことを愛しているようだ。

 ……一体、どこにそんなに惹かれる要素があるのかしら…犬好きなの?

「僕は、姉を応援しています。本来であれば、優秀な姉が、王座に着くのが一番良いと思っていますが、今まで、第一継承者だからと、女性としての色々なことに我慢を強いられてきた姉です。僕は、姉の幸せを一番にしてあげたい。姉が王座に着くなら補佐として働くし、王座を放棄したいなら、僕が王座についても構わないと思っています。」

 エリアス王子も、姉の恋を心から応援していた。


 誰も幸せにならない、この縁談。黒幕はヴァレリウス公爵…?でも、こんな婚姻になんの得があるのかしら…ヴァレリウス公爵がソフィア様派閥というのも聞かない。どちらかというと中立だったような…


「わかりました。では、まずヴァレリウス公爵の意図を探りましょう」

 わたしは、二人にヴァレリウス公爵が、国王に話した以外に、なんらかの意図を持ってこの縁談を仕組んだ可能性が高いこと、まずはその意図を探る必要があることを話した。

「お二人から、中立派閥の貴族から情報収集することはできそうですか?」

「いや、王族に、ホイホイと噂話を耳に入れる貴族はいないだろう…自派閥からの話なら、なんとか聞くことはできると思うが…」

 それはそうね。そうしたら、わたしが、お茶会などに参加して、情報収集する方が確実ね。


「…迷惑をかけて、すまない…危険なことがなければ良いのだが…君のことが心配だ…」

 ーーーはぅ!イケメン!

 騎士姿でそんなことを言うソフィア王女に、またしても撃ち抜かれてしまった!

 この方がお姉様になる…いい!


 そして、各自の情報を持ち寄って、次回、また策を練る事を約束し、お茶会を解散した。


 ◇


 一方、その頃のアレクシスは…

「―――報告いたします。クライネルト公爵令嬢アンジェーヌ様の公式訪問団が、先ほど、アストリア王国へ向けて出発いたしました」

『月影の猟犬』の部下からの報告に、アレクシスの手にしていた羽根ペンが、ピシリ、と音を立てて折れた。

(あの馬鹿…!敵の懐に、丸腰で飛び込む気か!)

 アンジェーヌが、何も言わずにアストリアへ向かった。いや、あの様子では、何かしでかすのではと、心のどこかで分かっていたはずだ。それを、多忙を理由に放置した、俺自身の落ち度だ…!込み上げる焦燥と、腹の底から湧き上がる、自分自身への怒り。


 アレクシスは、礼儀作法も忘れ、兄である王太子の執務室へと嵐のように飛び込んだ。

「兄上!」

「おや、アレクシス。そんなに慌ててどうしたんだい?」

 珍しく、部屋には国王陛下も同席していた。アランディール王太子は、完璧な笑みで弟を迎える。

「なぜ、アンジェーヌの公式訪問を許可されたのですか!あの国が、今、どういう状況か、ご存じのはずだ!」

「もちろん知っているとも。だからこそ、許可したのさ」

 アランディールは、まるで面白い芝居でも見るかのように、目を細めた。

「クライネルト公爵家からの『婚約を前向きに検討するため』という、これ以上ないほど正当な申し出だ。しかも、使者はノリノリだったし。これを王家が止めれば、それこそアストリアに『何か隠しているのか』と、あらぬ疑いを抱かせることになる。違うかい?」

「ですが!」


「アレクシスよ」

 静かな、しかし有無を言わせぬ父王の声が、アレクシスの言葉を遮る。

「気持ちはわかる。だが、これは国と国との駆け引きだ。アンジェーヌ嬢が、自らその渦中に飛び込んだ。我々は、それを見守るしかないと…」

「見守るだけだと!?彼女の身に、何かあってからでは遅いんです!」

 アレクシスは、思わず声を荒らげる。

 (息子よ…だから、怖いんだってば…)


「俺は、今すぐアストリアへ向かいます。彼女を一人にはしておけません」

 その、なりふり構わぬ弟の姿に、アランディールは、心底楽しそうに、くつくつと喉を鳴らして笑った。

「…いいよ。許可するよ」

「兄上…?」

「ただし、ヴァインベルクの第二王子として、ではない。おまえの本来の仕事…『月影の猟犬』の頭領として、だ。アストリアの不穏分子を調査し、兄である僕に報告する。それが、君の任務だ」

 そして、彼は、意地の悪い笑みを浮かべて付け加えた。

「…作戦…よろしくねー」

 アレクシスは、兄の真意を悟り、ぐっと言葉を呑んだ。先日、使者がきた時に考えた兄の作戦を思い出す…成功すれば、自分にとっても、リヒルトにとっても最良の作戦…


 執務室を辞去したアレクシスの頭の中は、冷静な怒りで満ちていた。彼女の行動力と、己の正義を信じて突き進むその強さを、俺は誰よりも知っている。彼女は、ただ待っているだけの女ではない。そんな所に惚れたというのに…

 あの時、なぜ、ちゃんと話をしてやらなかったんだろう…俺がやっているのは、裏の仕事だ。情報を知る者は、それだけで敵に狙われる。拷問を受け、殺される危険もある。俺は、アンジェを、そんな危険な世界に引きずり込みたくなかった…と…


 しかし、今更後悔しても仕方がない。ならば、俺のやるべきことは一つ。彼女が自由に動ける「舞台」を整え、その上で、絶対に彼女を守り抜くこと。

「―――総員、召集。目的地は、アストリアだ」


 氷の王子の瞳に、闇を狩る「猟犬」の、冷たく、そして獰猛な光が宿った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます♩

ここで、アンジェのお胸は小さめだということが発覚しました!


もし少しでも『面白いかも』『続きが気になる』と思っていただけたら、↓にあるブックマークや評価(☆☆☆☆☆)をポチッとしてもらえると、とってもうれしいです!あなたのポチを栄養にして生きてます… よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ