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エピローグ:そして、本当の祝福へ

読んでいただきありがとうございます!明日からは毎日1話19時更新予定です♩

 事件が解決してから、私が再び学園の門をくぐった日。そこは、以前とは全く違う世界になっていた。


 かつて私を好奇と憐れみの目で見ていた生徒たちは、今や尊敬と、そして少しの恐怖を滲ませた瞳で、遠巻きに私を見つめている。私が廊下を歩けば、モーゼの十戒のように、さっと道が開かれた。

「ご、ごきげんよう、クライネルト公爵令嬢!」

 以前、私に悪趣味なダジャレを言ってきた男子生徒が、顔面蒼白で90度のお辞儀をしてくる。私は、ただ完璧なお嬢様スマイルで「ごきげんよう」と返すだけ。それだけで、彼はビクッと肩を震わせた。


 …やりすぎは、よくないわね

 前世でパワハラ上司に散々苦しめられた身としては、こういう空気はあまり好きじゃない。でも、まあ、面倒な輩が寄ってこないのは、快適ではあるわね。


 そんなことを考えていると、前方から、見知った顔が、意を決したようにこちらへ向かってくるのが見えた。ベアトリーチェ…彼女は、かつての自信に満ちた女王のような雰囲気はどこにもなく、俯きがちに私の前で立ち止まった。

「アンジェーヌ様…。その…先日のことは、わたくし、ユリウス様のことを案じて、つい…。それに、あの商王にそそのかされた部分もございまして…」

 見苦しい言い訳。でも、私はもう、彼女に怒りを感じることすらなかった。


ーーー許すとか、許さないとか、そういうんじゃないのよ。もう、あなたたちは、私の物語には関係ない、ただのモブキャラなのよね…


 私は、ただ、静かに微笑んだ。

「そうですか。大変でしたわね、ベアトリーチェ様も。ですが、わたくしはもう、過去を振り返るつもりはございませんの。失礼いたしますわ」

 そう言って彼女の横を通り過ぎると、背後で、彼女が小さく息を呑む音がした。


 廊下の先では、心配そうにこちらを見ていたサミエラが、ぱっと笑顔になって駆け寄ってくる。

「アンジェーヌ!」

「ええ。行きましょうか、サミエラ」

 私たちは、腕を組んで、晴れやかな光が差し込む窓の方へと歩き出した。もう、私の隣に、偽りの友人は必要ないわ。


 ◇


 そして、全てが落ち着いたある日の午後。

 私は、アレクシス殿下からの呼び出しで、全ての始まりの場所――学園の図書室の禁書庫へと向かっていた。

 もう、ここへ忍び込む必要も、秘密の会議を開く必要もない。それなのに、なぜ、今ここに?

 私の心臓が、少しだけ、うるさく鳴っていた。

 夕日を受けて黄金に輝く埃が舞う、静寂な空間。


 彼は、あの日、私を見つけた場所と、全く同じ場所に立っていた。

「アンジェーヌ」

 私に気づいた彼が、ゆっくりとこちらを向く。

 夕日を浴びて輝く金色の瞳が、まっすぐに、私だけを見つめていた。

「君は、最高の餌だった」

「…それはどうも」

 つい、むすっとした声が出てしまう。


 彼は、そんな私を見て、ふっと、本当に嬉しそうに笑った。

「…だが、もう餌ではない」

 一歩、また一歩と、彼が私との距離を詰めてくる。

「これからは、私の隣で、私の全てになれ」

 …うん、まあ、そうなるだろうなとは思ってたけど!

 あまりにも、直球すぎる告白!

 だから、つい、意地悪がしたくなったのだ。


「いやです」

「―――は?」

 私の即答に、あの冷静沈着な氷の王子が、今まで見たこともないくらい、狼狽えている。

「え?いま、いや、と…?き、聞き間違いか?ここは、『はい、嬉しいです!喜んで!』とか言う場面では!?」

 その姿が、なんだか無性に愉快で、可愛くて。

 私は、ぷいっとそっぽを向いて、追い打ちをかける。


「はぁ?歌劇じゃあるまいし、世の中、そんな甘くないんですよ?大体、淑女に『餌になれ』とかいう男、ないでしょ?」

「…それは…すまん…」

「反省してます?」

「…してる…。もう、おまえしか考えられないんだ…」

「だーかーらー!『おまえ』って名前じゃないんですよ!」

 私がそう叫んだ、次の瞬間だった。


 彼は観念したように、そして、今まで聞いたこともないくらい、切実な声で叫んだ。

「アンジェ!愛してる!」

「……っ!」

 不意打ちの、名前呼びと、どストレートな愛の言葉。

 私の顔が、カッと熱くなるのがわかった。

 もう、降参。降参よ!


「…後、100回言ったら考えてあげます!」

 そう言って微笑む私を、彼は呆然と見ていたかと思うと、次の瞬間、力強く抱きしめていた。

 耳元で、彼の、嬉しそうな、それでいて真剣な声が響く。

「100回でも、1000回でも言ってやる。…愛してる、アンジェ」


 まあ、彼のその言葉が実行されるまでには、もう少しだけ時間がかかったけれど。

 理不尽な言葉で始まった私の二度目の人生は、こうして、不器用で、最高に愛しい求婚の言葉で、本当の祝福を得たのだった。


 もう、誰にも「どブス」なんて言わせない!

 だって、世界一大事な人に愛されている私は、今、最高に美しいはずだもの!

ここまで読んでいただき、ありがとうございます♩

これで、短編版は終了です。次回からは、「アストリア王国編」が始まりますのでお楽しみに♩


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