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The maple song  作者: 徒華
3/7

少女 出会う

お昼ご飯をゆっくりとった後、私は悩んでいた。

「これ、どうしよう……。」

手にはセラを名乗る女性からもらった紙。

「怖いところだったらやだし……。」

丸めて捨てて航空券を取ろうとスマホを取り出すとそこにはお母さんからのメッセージが入っていた。

「無事着けたの?まぁ、満足するまでやってきなさい。」

じわりと涙が出そうになる。

そうだ、私は観光に来たわけじゃないのに……。

今帰ったら何をしに来たのか本当にわからなくなってしまう。

震える指で「JAZZ CLUB IDiOM」と調べる。

「ご飯を食べながらジャズなどの音楽ライブを聞けます。」

翻訳をかけた冷たい文章を読む。

「有名なミュージシャンやアーティストもお忍びで訪れていると噂のジャズ・クラブ。

ジャズ・シンガーを目指していたものの、声帯の酷使により思うように歌えなくなり、志半ばで夢を諦めたマスターがつくった個人経営店。

ステージ上で一際輝く真っ白なグランドピアノと、キラキラ輝くガラスビーズが散りばめられた重厚感のある大黒幕が特徴。

ピアノの客席から見えない部分はこのステージに立った人たちのサインで埋め尽くされており、ここにサインすると5年以内に"売れる"というジンクスがあるとかないとか。

提供される料理は某有名店から引き抜いてきた凄腕のシェフが作っているらしく、美食家にも好評。

オープン直後限定で運が良いと聴けるマスターのピアノ演奏が一部の音楽愛好家の間で話題になっている。」

そんなに怖い場所ではなさそうだ。

「行って……みるしか……。」

夜まで観光をしようかとも思ったが緊張してしまい

近くの楽器屋に入るしか出来なかった。

「いいなぁ!USAだ!」

所狭しと壁にかかるギターはUSA製。

やっぱりかっこいい。

「お!興味あるのか!」

後ろから日本語で話しかけられる。

「憧れで……。」

「わかるぞ!俺もUSA製に囲まれたくて集めたしアメリカにも来ちまったからな!」

「羨ましいです。」

「姉ちゃんは何持ってんだ?」

「Japanです。」

「十分いいがやっぱりなぁ。」

「ですよね〜。」

日本人と喋れる安心感からつい長居してしまい気づけば日が傾き始めていた。

「お!もうこんな時間か。姉ちゃんはこの後どっか行くのか?」

閉店が近いようで店員は外を見ながら言った。

もしかしたらこのクラブのこと聞けるかもしれない。

「あの、ここに行きたいんです。JAZZ CLUB IDiOM.」

「あぁ!IDiOMかいいセンスしてるなぁ!あそこは飯もうまいしアメリカのアーティストの聖地だしな!あのセラローレンもあそこで歌ってたらしいぞ。」

「え?そうなんですか!」

「あぁ。もう前の話だけどな。でもあそこで歌って有名になったやつは沢山いる。あっ!もしかして歌うのか?!」

「そ、そんなわけないです!」

「まぁでもいい経験になるぞぉ!」

そう言って彼はニコニコした。

19時30分。

「ここが……。」

私はIDiOMの前に立っていた。

「どうしよう来たはいいけど……。」

ドアを開くか開かないか。

「やっぱりやめよう。なんとか1日どうにかして朝一で帰ろう。」

後ろを向いた瞬間。

「Bye~!」

突然ドアが開いた。

マスターとカップルらしき人が話している。

私はつい固まってしまった。

ひとしきり話し終わりカップルが出ていくとマスターらしき人は私の方を見て言った。

「Welcome.」


「わぁ!すごい!」

挿絵(By みてみん)

帰りますなんて言えずに入った私の目の前には真っ白なグランドピアノ。

どこにいたらいいか分からずキョドキョドしているとバーカウンターのところで男性が手招いている。

「こちらへどうぞ。」

流暢な日本語だった。

席に着くと男性はマスターらしき人と喋り店の奥を親指で指した。

ただ英語で何を言っているかは分からない。

私ここにいていいのかな。

そわそわしてしまう。

その様子を見てか、男性はニカッと笑って言った。

「ああ。大丈夫!マスターが君のこと知ってるのかって聞いてきたから彼女が言ってた子だよ。ギター持ってる日本人の女の子だろ?って話してたんだ!

ようこそ、JAZZ CLUB IDiOMへ。」

「彼女?」

「呼ばれたんだろ?もうすぐステージだから待っててよ。なにか飲む?今日は彼女の奢りだぜ?」

「え、じゃあリンゴジュースで……。」

「リンゴジュース?!アルコールじゃなくていいのか?」

「あ、はい。さすがに外国で飲むのは怖いので……。」

「そんな心配しなくても大丈夫だけどなぁ。あ!出てくるぜ!」

誰が?

そう思いながらステージに目を向けると金髪に黒いワンピースの女性が立っている。

その目は閉じられているが出で立ちから独特なオーラを感じる。

彼女はすっと目を開けて隣に立てかけてあったアコースティックギターを手に取った。

挿絵(By みてみん)

彼女が口を開くとどこかで聞いたことのあるメロディーと伸びやかで力強い声が響いた。

「セラ・ローレン……。」

曲はオーディション番組で歌っていた曲だ。

「おお、セラだ……。」

「まじかよ聞いてねぇよ!」

きっとそんなことを言っているのだろうみんなザワザワしている。

いつの間にか曲は2曲目。

艶やかなジャズ調のメロディー。

みんな彼女の歌に聞き入っている。

すごい。本当にセラなんだ。

曲なんてあっという間でセラはお辞儀をし裏に戻ってしまった。

「凄かった……。」

「だろ?」

さっきの店員さんがウインクをしながら言った。

「多分もう少しで……って噂をしてたら来たぜ。」

「来てくれたのね。」

隣に腰掛けてきたのはさっきの女性。

つまりセラだ。

「セラ?!」

「本物本物。」

にっこりと笑いながら彼女は言った。

ステージ上で見せる笑顔そのものだ。

「でもセラ、珍しいな来るなんて。」

「この子を迎えに来たの。」

セラは私を指さした。

「え!どんな関係なんだ!」

店員は興味津々と言うように私を見る。

「いや何も……ただ今日出会っただけだし……。」

「セラ何考えてんだよ。」

それは私が聞きたいよとセラを見つめると彼女は静かに言った。

「God……。」

「え?」

「神が言ってるから。それに、もうニュースになってると思うけど。」

そういえばさっきから店がざわざわしている気がする。

スマホを見るとそこにはニュース速報

『世界的歌姫セラ・ローレン活動休止』

「はぁ?!」

恐らく店員も見たのだろう素っ頓狂な声を上げている。

「どうして?」

私が恐る恐る聞くと

「そんな気分。」

と飄々と言われてしまった。

「また神が言ったのか?もうそんなわがままが言えるレベルじゃないってわかってるのか?」

店員が焦りながら言っているが彼女は手元のコーラを傾けている。

「大丈夫よ。戻るから。」

そう言った彼女の瞳は沈んでいるように見えた。

少しの静寂。

ど、どうしよう。

「行こう。」

彼女は席を立ちお金を置いて私のスーツケースを持った。

「でも!」

私がスーツケースを抑えると彼女はなんとも言えない苦しげな表情をしたあと真顔に戻った。

「どうして?決めたから来たんでしょ?」

「そうだけど……。」

「ならいいわ行きましょ。」

そう言って彼女はドアへ進んで行ってしまった。

「セラ!いつでも来いよ。」

店員がカウンターからそう叫んだ。

それを聞いて彼女は振り向き笑顔で

「ありがとう。」

そう言った。

少し歩いた駐車場に置いてある彼女の車へ意を決して乗り込む。

ここからどうなるのだろうか。

























なんとか完結させます。

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