1話「ヒーローのいない夜」
◆Scene 1:消えたヒーロー
「……え?」
朝、目覚めた零は、いつも通りフィギュアたちに挨拶するように机を見た。
けれどそこに、
最も大切にしていた一体、「雷凰ゼロ」の姿がなかった。
「……どういうこと……?」
慌てて部屋中を探す。棚の下、ベッドの裏、ゴミ箱の中まで。
だが、どこにもない。
盗まれた形跡もない。窓も鍵も閉まっている。家族もそんなことするはずがない。
違和感はそれだけじゃなかった。
“雷凰ゼロ”だけじゃない。あと二体、かつての人気機体が消えていた。
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◆Scene 2:動く影
その夜。
零は布団の中で震えていた。
自分がおかしくなったのか、それとも、誰かがこっそり――?
(いや、そんなはず……)
だが――そのとき。部屋の奥から、カチリ、カチリと機械の音。
(え?)
起き上がって目を凝らすと、棚の前で“何か”が動いていた。
暗がりの中、見覚えのない謎のフィギュアが、零の残りのヒーロー機体を抱えていたのだ。
「……なに、それ……やめて!」
思わず叫んだ。
その瞬間、謎のフィギュアたちの赤い目が、一斉にこちらを向いた。
> 「見られたぞ。マズい……この人間、回収するしかない」
「――えっ?」
次の瞬間、部屋が光に包まれる。
重力が逆さまになり、身体が浮かぶ。
「きゃああああああっ!!」
そして――
零のベッドには、空っぽのパジャマだけが残されていた。
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◆Scene 3:転送先・フィギアWORLD
目を覚ましたとき、そこは知らない世界だった。
宙に浮かぶ都市。鉄と光の塔。空を飛ぶ無人機体たち――
あらゆるフィギュアが“生きて”動いている、機械の理でできた世界。
そこにいたのは、零を見下ろす一体のロボットだった。
> 「目覚めたか、人間。お前が、新たな“リンク者”か」
それは、見覚えのある姿――
けれど、どこか違っていた。
「……ゼロ……? 雷凰ゼロなの……?」
> 「ああ、俺は雷凰ゼロ。だが、記憶の一部が……欠けている」
> 「この世界には、お前のような“想いを持つ者”しか来ることはできない。これは選ばれしリンクの証だ」
> 「ここは……《フィギアWORLD》。想いが力になる、もう一つの現実世界だ」
零の異世界での戦いが、今、始まる――。
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▶次回予告:「リンクバンド起動!」
雷凰ゼロとの本格リンク。
目の前に現れる敵機体との初戦闘!
フィギアバトルの幕が、いま上がる!