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第28話「チームと役割」

今回は学院統一演習に向けてのチーム編成回です!

ミュリエルの実力や立場が少しずつ変わっていく様子を描きつつ、クラスメイトたちの個性もちらほら見えてきました。

ドキドキのリーダー選びも注目ポイントです!


演習の内容が発表された翌日、教室にはいつも以上の熱気が満ちていた。

「生活魔法応用」「学術討論」「街づくり模擬計画」「文化祭型展示」──四つの分野でのクラス対抗戦。


その初日、先生はまず選抜メンバーの発表から始めた。


「まず、魔法分野のチームから」


黒板に名前が書かれる。

フェリシア、テオ、マルタ、サリナ、ミュリエル。


その中に自分の名を見つけ、私は息を呑んだ。


(私が……選ばれた?)


「フェリシアは火属性の操作に長け、短時間で高威力の魔法を安定して発動できる。テオは判断力と反応速度に優れており、臨機応変な行動が可能だ」


二人に拍手が起こる。


「マルタは支援魔法の精度と持続力に優れ、回復系魔法も安定している。サリナは観察眼が鋭く、状況分析と敵の動きを読む力に長けている」


皆、真剣な顔で頷いた。


「ミュリエルは魔力の安定性が高く、演習を重ねるごとに着実に成長している。冷静な判断力と集中力を評価した」


正直、驚いていた。

でも、ちゃんと見ていてくれる人がいた。それだけで心がふっと軽くなる。


「では、魔法チームはこの五人。今日の放課後、リーダーを決めておくように」


そう言い残して、先生は教室を後にした。


* * *


放課後。教室の隅、魔法チームの五人が集まる。


「さて、リーダー決めかー」

真っ先に口を開いたのはフェリシア。明るく快活で、誰に対しても物怖じしない性格だ。


「正直、フェリシアが一番魔法は上手いよね。やっぱ任せるのが自然かも?」とサリナが言う。


「えー、私? でもさ、確かに火力は任せて欲しいけど、まとめ役って柄じゃないんだよね。人の意見聞かないで突っ走るタイプって自覚あるし!」


「そこまで言う!?」テオが笑いを漏らす。


「俺は……まあ、まとめるより動く方が好きかな。指示役は苦手」


「私も……支援に集中したい。誰かが考えた方針に従う方が得意」

マルタは静かに言った。彼女は普段から淡々としていて、感情をあまり表に出さないが、誠実な性格だった。


自然と、全員の視線が私に向いた。


「ミュリエルはどう思う?」


「え、私?」


思わず声が裏返る。


「冷静だし、最近魔法も安定してきたしさ。前より堂々としてるっていうか」


「でも、私はまだそんなに経験ないし……」


言いかけたところで、サリナが首をかしげた。


「でもミュリエルって、他のグループワークのときも落ち着いてて、場を回してたよね。前の討論授業のときとか」


「いやいや、でもだからってリーダーは……」


すると、フェリシアが真顔で口を開いた。


「私は反対。悪いけど、急に魔法が上達しただけでリーダー任せるのは違うと思う。魔法の安定性はあるかもしれないけど、それだけでまとめ役は務まらないよ」


空気が一瞬、ぴりついた。


「フェリシア……ちょっと言い方……」


「ごめん。でも、演習は真剣勝負でしょ? 失敗したらチーム全体に響くんだよ。だからこそ、納得して決めたいの」


彼女の言葉は厳しいが、真剣なものだった。


私は一度うつむき、息を吸ってから顔を上げた。


「……正直、私もまだ自信があるわけじゃない。でも、今回の演習で何かを変えたいって思ってる。逃げたくない」


静かに告げたその言葉に、しばし沈黙が流れる。


「なら、話し合おう。それぞれ、どんな戦術が得意かとか、役割分担も含めて。それで、リーダーにふさわしい人を決めればいい」


テオの提案に、皆が頷く。


* * *


簡単な役割分担の話し合いが進むにつれて、私は自分でも驚くほど冷静に全体を見ていた。


フェリシアの攻撃力、テオの即応性、マルタの支援力、サリナの分析力――どれもバランスが取れていた。


「じゃあ、最前線はフェリシアとテオ。マルタは後方支援。私は中衛で補助と連携。サリナには状況分析をお願いしたい」


「指示は誰が出す?」


「戦闘中に瞬時の判断が必要なら、テオに任せるのもありだけど……全体の流れは私が把握するようにする。責任は、私が持つ」


しばし沈黙。


やがて、フェリシアが息を吐いて言った。


「……あんたのその覚悟、見た。私も全力でサポートするよ」


「ありがとう」


「私も異論ない。むしろ、自然に仕切ってたしな」テオが笑う。


「よかった……なんか、まとまってきたね」

サリナもほっとしたように笑った。


「じゃあ、リーダーはミュリエルで決定」


そうして、魔法チームの役割が決まった。


(……やれる。きっと)


胸の奥に、新たな火が灯るのを感じながら、私は強く頷いた。


* * *


放課後、他のチームも次々と話し合いを進めていた。


「学術チーム、リーダーはノエルでいいよね?」

「そりゃ当然。筆記トップで理論も強いし」


ノエルはやや皮肉屋だが、頭の回転が早く頼れる存在だ。

補佐には、冷静で分析力のあるイリナ、口数は少ないが記憶力抜群のレオン、発表慣れしているジュリー、そしてノート魔と呼ばれるほど几帳面なエマ。


「街づくり模擬計画はフィリップがリーダーね。発想力が柔軟だし、まとめ役にも向いてる」

「うちのチームは……シーナ、コレット、マーク、ソフィか」


フィリップは明るくて社交的、シーナは空間設計が得意、コレットは絵が描けて視覚化が上手い、マークは経済観点で提案を出すのが得意、ソフィは細かい資料作成が得意だ。


(みんなそれぞれの強みを活かしてるんだな……)


どのチームも真剣に、自分たちの勝利を目指して動き始めていた。

お読みいただきありがとうございました!

いよいよ演習が本格始動。どの分野も見どころ満載になる予定なので、これからの展開もぜひ楽しみにしていてください。

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