表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/28

第27話「魔力のゆらめきと、新たな挑戦」

少しずつ、見える景色が変わってきました。

けれど、変わるのは自分だけじゃないようで……。

「じゃあ、見せてもらおうか」


カイルが取り出したのは、掌にすっぽりと収まるサイズの透明な魔石だった。


「これが、属性を判定するための魔石だよ。触れれば、その人に適した魔力の属性に反応する。基本的なものは七つ。火、水、風、土、光、闇、そして無属性。まれに複数に適性がある者もいるけど……君の場合は、ちょっと特殊かもしれない」


「特殊?」


「まあ、まずは触ってみてよ」


言われるまま、私はそっとその魔石に指先を添える。


瞬間――魔石がぱっと輝いた。


赤、青、緑、黄、紫、白、黒……全ての色が一瞬にして現れては、すぐに消えた。


「……えっ?」


私が思わず声を上げるのと同時に、カイルも眉をひそめた。


「やっぱりか」


「え、え、なに今の……? 全部光ったように見えたんだけど」


「正確には、“すべてに反応したが、どれにも定着しなかった”って状態だね。これは――適性がない、とは違う。むしろ、素質がありすぎて定まらない、そんなケースだ」


「そんなことあるの?」


「稀に、ね。魔力そのものは強いけど、どれにも偏ってないタイプ。ただ、稀少な反応だけど、扱いは難しい。これから訓練次第で、何かしらの属性に安定していく可能性もあるよ」


「そっか……でも、ちょっと安心した。なんか、魔法のこと、ちゃんと向き合ってみようって思えるようになってきたから」


私が笑うと、カイルはふっと目を細めた。


「いい顔になってきたね、ミュリエル」


「……ちょっと、その言い方」


「ん? どうかした?」


「年上の私をからかうなって言ってるの」


「でも、今の君、まるで新入生みたいに目を輝かせてるからさ」


「う……なんかムカつく……!」


「冗談だよ。まじめに褒めてる」


そう言いながら、彼は笑っていた。どこか柔らかく、けれどどこか影を持つその横顔に、私は少しだけ目を奪われた。


* * *


翌日。


通常授業の終わりに、教壇に立った教師が声を張り上げた。


「さて、来週から始まる“学院統一演習”について連絡がある」


教室内がざわつく。


学院統一演習――それは、全クラスが参加する学内イベントであり、魔法や学術、協働作業、さらには創造的な課題まで、幅広い分野での総合力が試される特別な期間だった。


教師は背後の黒板に棒で示しながら、演習の四つの分野について説明を始める。


「演習はクラス対抗で行う。対象は以下の四分野だ」


一、生活魔法応用課題――限られた素材を使って生活を便利にする魔法の応用実践(例:水の生成魔法を活かした炊飯装置の制作など)


二、学術討論試験――テーマに沿ってグループ討論を行い、論理的思考と発表力を評価(例:“都市と魔法の関係性”など)


三、共同課題『街づくり模擬計画』――仮想の村に必要なインフラ設計をチームで考え、発表する。創造力と協調性が求められる。


四、文化祭型展示演習――クラスで自由なテーマを設定し、来場者(教師陣)に向けて展示・発表を行う。


黒板に並ぶ文字を見つめながら、生徒たちの反応が飛び交う。


「うわ、筆記あるのか……終わった……」

「街づくりとか、建築の知識なんてないんだけど」

「討論って何を話せばいいの? 誰が仕切るの……?」


教師がそれを制しながら言葉を続けた。


「各クラスの得点は分野ごとに集計され、総合評価上位のクラスには、“特別研修”への参加資格が与えられる」


「特別研修!?」

「えっ、でもそれって、貴族クラスの生徒が受けるっていう、あの……?」


ざわつく空気の中、教師は頷く。


「その通り。君たち一般クラスから選ばれるのは稀だが、不可能ではない」


――その言葉が、生徒たちの目を変えた。


中には目を輝かせる子もいれば、不安そうに顔を伏せる子もいた。


「ミュリエル、すごいじゃん、魔法上達してきたし」

「え、いや……私は、ようやく初級魔法が安定したって程度で……」


「あーでも、フェリシアは火魔法上手いし、テオも反応速度速いから、あの二人は選抜候補かな?」

「そうだね、ノエルは筆記全部トップだし」


私は、そんなやりとりを静かに聞いていた。


確かに、最近は魔法が“使える”ようになってきた。でも、それはようやく“スタートラインに立てた”という程度で、特別視されるほどではない。


(私にできることは……あるのかな)


心のどこかで、そう自問する。


けれど、あのとき誓ったはずだ。


(私自身を、ちゃんと証明するって)


胸の奥にある、あの静かな火種は、まだ確かに燃えていた。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

読んでくださる方がいること、とても励みになっています。

もしよければ、ブクマ・評価・感想など、ぽちっとしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ