第23話「最初の味方、最初の一歩」
少しずつ始まる学院生活。
ミュリエルが初めて“味方”を見つけるきっかけの回です。
数日が経った。
学院での生活には、まだ慣れきれていない。
教室に入れば、小さな笑い声やひそひそ話が耳に入る。
気にしないようにしていても、どうしても心がザラつく。
相変わらずミレーヌはちょこちょこと嫌味を言ってくる。
昨日は「お肌の手入れって、年上の人ほど大事ですわよね~」なんて言われた。
その言葉にサリナが笑い、ノエルはそっと視線を逸らした。
(誰も庇わない、か。まあ……別に期待してたわけじゃないけど)
そんなふうに思っていた、ちょうどそのときだった。
「ねえ、今日のお昼、一緒に食べない?」
不意に話しかけられて、思わず顔を上げる。
そこにいたのは、金髪の三つ編みを揺らすフェリシアだった。
いつも明るくて、少し騒がしい彼女。でも、悪気のないタイプなのは初日から何となく伝わっていた。
「えっと……私と?」
「そう! だって、いつもひとりで食べてるし。あたし、ひとりご飯苦手なの! だから一緒にどうかなって思って」
あっけらかんとした笑顔に、なんだか拍子抜けしてしまった。
でも、どこか嬉しかった。
「……うん、いいよ。ありがとう」
食堂でフェリシアと並んでご飯を食べる。
最初は何を話せばいいかわからなかったけど、彼女がどんどん喋ってくれるから、気まずさはすぐになくなった。
「ミュリエルって、前にどこか別の場所で勉強してたの?」
「うん。家庭教師について、基本的なことは教えてもらってたよ」
「へえー。なんか、ちょっと雰囲気大人っぽいし、頼れそうだなって思ってさ」
そう言われて、少しだけ胸があたたかくなった。
昼休みのあと、教室に戻るとミレーヌがニヤリと笑っていた。
「あら、今度はお友達ごっこですの?」
ミュリエルが何かを言い返す前に、フェリシアがすっと前に出た。
「ミレーヌって、ほんと嫌味っぽいよね。そういうとこ、モテない原因だと思うけど?」
あっさりと言ってのけるフェリシアに、教室の空気が一瞬静まった。
ミレーヌは顔を引きつらせながら、何も言わずに席に戻っていった。
……びっくりした。でも、少しだけ心強かった。
「これで、ミュリエルぼっち卒業ね!」
フェリシアがニッと笑った。
私は、うん、と微笑み返した。
(ここで、本当にやっていけるかもしれない)
そんな風に思えたのは、この学院に来て初めてのことだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
ほんのちょっとした勇気や優しさで、世界が変わることもある。
フェリシアの明るさに救われたミュリエルが、少しずつ歩き出します。
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次回もぜひ読んでくださいね✨