第21話「サン=リュミエ学院へ」
第三章スタートです!
新しい舞台「サン=リュミエ学院」での学びの日々が始まります。
年齢差や身分差の中でも、ミュリエルは前を向いて進んでいきます――!
春の風が、ほんのりと冷たかった。
サン=リュミエ学院の門をくぐった瞬間、私はその空気の変化に気づいた。
綺麗に整備された石畳。白と金を基調にした校舎。花壇にはまだ見ぬ花が咲き誇り、魔力を通すための導管があちこちに埋め込まれているという。まるで別世界に来たみたいだった。
入学式の看板の前には、生徒たちがにぎやかに集まっていた。どの顔も若く、緊張と期待に満ちていて……そこに立つ自分が場違いに思えてしまう。
私は――二十一歳。周囲のほとんどが十六、十七。たまに見かける年上でも十八程度だ。
(やっぱり浮いてるな……)
だけど、もう引き返せない。入学金も払ったし、生活を賭けた決断だ。
掲示板に貼り出されたクラス分けの紙には、しっかりと「一般クラス一組:ミュリエル・ラングフォード」の文字があった。
この学院には大きく分けて二つのクラスがある。
一つは一般クラス。もう一つは、貴族専用の「特別クラス」。
特別クラスの生徒たちは王族、上級貴族、あるいは特別な推薦を受けた者のみが入れるとされていて、教室も校舎も別。使用人付きの寮、個別のカリキュラム、専用図書館まであるらしい。
私はもちろん、一般クラス。それでもここに入学できただけでも奇跡だと思ってる。試験に合格したときは、手が震えるほど嬉しかった。
「ねえ、あの人、ちょっと年上じゃない?」
「二十歳超えてるってほんと?信じられない……」
周囲からのささやきは、聞こえないふりをする。こんなこと、最初からわかってた。
入学式が始まり、白髪の学院長が壇上に立った。
「サン=リュミエ学院は、身分を問わず学びたい者を歓迎します。魔法、学問、礼儀、すべてにおいて――誠実に努力する者に、門は開かれています」
その言葉だけで、少しだけ救われた気がした。
式が終わると、クラスごとに教室に案内された。
私の席は一番後ろ。周囲の視線が少し痛い。
自己紹介が始まると、誰もが緊張しながらも明るく名前を口にしていった。
「ミュリエル・ラングフォードです。よろしくお願いします」
笑顔で挨拶したつもりだったけど、静まり返る空気が返ってきた。
(……まあ、そうだよね)
それでも、私は負けない。
ここで学びたいと心から思ってる。
自分の人生を、自分の手で取り戻すために――
だから私は、前を向いた。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
いよいよ学院生活が始まりました。年齢差でのギャップや偏見も、ミュリエルらしく乗り越えていってほしいですね。
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