表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/28

第14話 小さな成功と胸を張る夜

今日は完全に“順調モード”な回です。

少しずつ形になるって、やっぱり嬉しいよね。

数日たって、ミュリエルの作ったハーブティーは“ちょっとした話題”になりはじめていた。


 最初に買ってくれた仕立屋の女性が知人に勧めてくれたのがきっかけで、次第に口コミが広がっていった。


 宿に来たお客が「例のお茶ってどれ?」と尋ねるようになり、さらには近所の常連まで顔を出すようになった。


「これ、ほんと助かるのよ。夜よく眠れて、朝の目覚めが違うの」


「お試しでもらったティーバッグを娘が気に入っちゃって。今日は三つ買っていくわね」


 そんな声を聞くたびに、ミュリエルは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。


 ――自分が作ったものが、誰かの役に立っている。


 その事実が、これまでのどんな褒め言葉よりも、心に沁みた。



 売上は日を追うごとに伸びていた。

 一日に五瓶、六瓶と売れることも珍しくなくなり、仕入れにも工夫を凝らすようになった。


 例えば、見た目が少し悪いけれど香りのよいラベンダーを農家から直接仕入れることで、コストを下げられた。

 材料費を抑えつつ品質を保ち、ラッピングにも一工夫。簡単な紐を使った飾りが女性客に好評だった。


 ミュリエルは帳簿を開いて、こっそり数字を見つめる。


(……銀貨二十枚。すごい、すごい……)


 まだ学費に届くような額ではないけれど、それでも確実に前進している。

 しかも、誰にも頼らず、自分の手で得たお金だ。


「……やれる。やれてる」


 小さくつぶやいたその声に、ほんの少し涙が混じっていた。



 夜、仕事を終えて自室に戻ったミュリエルの元に、マルレーネが顔を出した。


「これ、売り上げのお礼。あんたのせいで、宿に寄る客もちょっと増えてる」


「わ、ありがとうございます。でも、わたしこそ……本当に、ありがとうございます」


「ま、調子に乗らなきゃ、悪くないスタートよ」


 マルレーネは、紅茶の入ったカップを置いて、そっと微笑んだ。


「商売ってのは、続けることが大事。明日もがんばりな」


「はいっ」


 その夜、ミュリエルは初めて“胸を張って”眠りについた。

読んでくださってありがとうございます!

うまくいってる今だからこそ、もっと応援したくなりますよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ