第2話 外出
携帯がコーラに浸かり、壊れてしまった。1日でマウス、キーボードそして携帯がお釈迦になるなんて最悪の1日だ…。
どれも、古い機種だったから防水機能も付いてなかった。でも、コーラかぶっただけで壊れるか?普通。
どうしよう。携帯もPCも使えないようじゃあ、ネットで物が頼む事が出来ない。このまま、この薄暗い部屋で何もできず死ぬしか無いだろう…。
しかし、打開策はある。そう、外に出て携帯を買うのだ。
たしか、バスで少し移動した所に大型家電量販店があったはず。
行って帰ってくる時間だったら、起きていられると思う。多分。
はぁ。病院以外で外に出るのは、何年振りだろう。
外で急に意識を失ったら……と考えてしまう。気が気でない。
起きていられる時間は、あらかた決まっている。急がねば。
そうして、パパッと着替え財布を持って玄関の扉を開けた。
外に出ると久しぶりの外の明るさに頭痛がした。明るすぎて辺りが白く見える。頭が押さえつけられているような感じで痛い。しかし、その痛みも数分後には慣れた。外は寒く、上着を何枚も重ねているが寒さを感じられた。
もう、3月なのにこの寒さ。おかしい。
寒さに震えながら最寄りのバス停に向かった。最寄りのバス停は、色んな行き先のバスが出ていてここのバス停からよく行く病院だったり、町中だったりに行ける。
バスの時刻表を見るとどうやらあと3分ほどでバスが来るらしい。周りには、バス停には誰もおらず、僕一人がぽつんと一人バス停にいる状態だ。
バス停にあるイスに座りながら、行き先について考える。なにせ、久しぶりの外出だ。前回、外に出たのは、多分1ヵ月前に病院に行った以来だろう。
病院には、2.3ヶ月分の薬を貰いに行っている。1日1錠。
薬に何が入っているのか専門的な知識がないので全く分からないのだが僕の病気の症状を抑え込んでくれている大切な薬だ。薬がないと最悪、数ヵ月間寝てしまう事になるらしい、なので、薬は、忘れずに毎日服薬している。
バスがやってきた。お金を先に払って空いてる席に乗る。時間の割には、バスは、空席が目立っている。と、思ったがよく考えれば今日は平日だ。曜日感覚がズレているためよく分からなかった。バスの柔らかいイスに座りながら外を見る。だいたいここから、目的地まで10分程だ。そこまで寝ないように気をつけて行かなくては…。
バスに揺られながらボーとしているといつの間にか目的地についていた。急いで降りると、目の前には巨大な家電量販店が堂々とそびえ立っていた。
平日だからなのか、あまり人がいる雰囲気では、なかったのだが、それでも中に入るとなると緊張する。
しかし、入り口の前で長時間立っているわけにもいかない。意を決して中に入ろう。
そうして、入り口を通ろうとしたその瞬間――背後でドサッという鈍い音が響いた。反射的に振り向くと、パーカーを着た男が倒れているのが目に入った。
彼はうつ伏せのまま微動だにせず、倒れている。急いで、男に近づいた。
とりあえずうつ伏せになっている男を仰向けにして
「だ、大丈夫ですか?」
と男の体を揺すりながら意識があるのかどうかを確認した。すると、男は
「…………た。」
と小さな声で何かを言った。
「え?」
何を言ったのかわからず、耳を彼の顔に近づける。微かな息遣いとともに、男はもう一度言った。
「腹減った。」