第1話 目覚め
目が覚めた。何だか体が痛い。
どうやら、床で寝ていたようだ。
––今は、一体何月何日で何曜日の何時なのだろう。
そう思い。僕は、携帯を探した。
部屋の電気をつけ、辺りを寝ていた辺りを見渡した。
すると、バッグやらリュックやらが散乱しているのがわかった。
また、倒れたか…。
バッグが落ちている箇所を見てみるとそこに携帯があった。携帯の電源をつけてみると3月10日12時34分と書かれていた。確か、ゲームのイベントの終了が3月1日の夜9時までで、イベントの終わるギリギリまでゲームをしていた記憶があるので、どうやらそこから1日ほど床で寝ていたらしい。
僕は、一度寝たら何日も寝てしまう病気である。
通常でさえ、一度寝たら最低でも12時間、ひどい時は5日間も寝ていた時もある。更にたちの悪いのが、いつ眠気が襲ってくのか分からない点だ。なので、こうやって床で寝ていたり、お風呂場でそのまま寝てしまったり、する事がある。急に意識を失うためか、何処かに体をぶつけて起きた時には、体から血が出てるみたいな事もある。そんな状態で外に出れるはずもなく家に引きこもっては、ゲームをしたりしている。
仕事もせず、自堕落な生活をしている。お金は、あるのかと言われると、親の仕送りで何とか生活している状態だ。まぁ、穀潰しという訳だ。
病院には、たまに行ってはいるが薬を貰う程度で医者が言うには、根本的な治療方法は、まだ見つかってないらしい。こんな生活になったのは、数年前からだ。ある時、急に意識を失って気がついたら病院のベッドにいた。真っ白な病室だった。医者がやってきて、自分がどのような病気なのかを説明してくれた。この病気は、その日からの付き合いだ。
まぁ、でも日々の生活がつまらないわけではない。外に出なくても娯楽はあるし、何か欲しいものがあったら、通販で配達してもらえばいい。しかし、親の仕送りだけで生活しているので罪悪感がある。どうにかして、恩返しをできないだろうか…。
そんな事を思いながら、今日も日課のゲームのデイリーミッションをやっていく。
数日寝て起きても日々変わらない生活。こうやって、何年も過ごしてきたのだが、本当にこれでいいのだろうか…。将来が不安だ。
しかし、そんな不安もゲームをやれば払拭できる。やはりゲームが生きがいである。
デイリーミッションも一段落して、冷蔵庫に向かう。冷蔵庫の中には、飲料水が大量にあった。お茶やコーラ、エナジードリンクなんかもある。何を飲むか迷ったが、甘いものが飲みたい気分だったので、コーラを飲むことにした。
コーラを飲みながら、PCを開いた。
ネットサーフィンをするためにブラウザを開く。
すると、こんな記事が目に入ってきた。
【大山組襲撃で多数死亡 抗争激化の可能性も】
記事を読んでみると、どうやら大山組と言われる暴力団が襲撃されて大勢が死亡したらしい。襲撃で大山組のトップが全員、死亡したそうだ。警察は、大山組と敵対関係にあった暴力団を調べていると記事にはある。
人が人を殺すなんて酷いことだ。どんな人間にも親やその人を大切に思っている人がいる。そんな事はお構い無しに殺してしまうこの事件を起こした人達は、人の心が無いのだろう。そんなふうに思った。
そんな事は、置いておいてネットサーフィンでもするか。ネットサーフィンをするためにマウスを動かした。
その瞬間、手に何かが当たった感覚があった。
あ…。
太ももが冷たい。ズボンに冷たい液体が広がっていく感覚がある。嫌な予感がした。手元を見るとさっきまで飲んでいたコーラのペットボトルが横になっている。
ペットボトルからどんどんと中の真っ黒な液体が出ているのがわかる。最悪な事にその真っ黒な液体は、PCのキーボードとマウスに思いっきりかかっていた。
まずい。本当に。
急いでキーボードとマウスをどけてティッシュで拭いたがそんな抵抗も虚しく、キーボードとマウスは動かなくなってしまった。PCにかからなかっただけましだったが、キーボードとマウスがお釈迦のがすごいショックだった。結構使っていて思い入れのあるものだっただけに。
仕方がない、通販で新しいマウスとキーボードを買おう。そう思い、携帯を探した。
携帯は、あった。黒い液体をかぶって。
〜〜〜〜〜〜!!!
これは、僕の最悪な日々の始まりである。