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プロローグ
はじめまして。
以前に書いたもので、粗いところは多々ありますが、愛着ある作品です。
短い物語ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
数年前に流行り病で亡くなった母は踊り子だった。とても妖艶で美しく、だが少女のように可憐に舞う人気の踊り子で、俺はその様を遠くから眺めることが好きだった。
父は記憶がある中でいたことはなく、母の口から何も聞いたことはない。
―――踊り子の血筋というものだろうか、俺は踊ることが好きだーーー。
「シェグレ!今日も綺麗だな!」
俺が踊れば、観衆から賛美の声が聞こえてくる。当たり前だ。母さんから教わった俺の踊りに不足はない。
シェグレは観衆の声に応えるようにウインクをした。
まだあどけなさを残したシェグレの深い空色の瞳は見る人を魅了し、褐色の程よく筋肉質な四肢は人々の欲望を掻き立てる。円を描くように舞う度に少々ガサツにまとめられた黒髪がたなびき、輝く黄金の装飾はシェグレが動くたびに力強い音をたてた。
当たり一面に砂漠の広がるこの国で17歳のシェグレはたった一人で生きている。