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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#97 託す未来、時を越えたエールその三

「・・・ッ!あれがタクの言っていた・・・」

「腕が触手の・・・確かに妖精の羽みたいなのが付いてるわね・・・」

「す・・凄い数なのです・・・!」


 タクがグラーケンの猛攻を受け持っている間に、グラーケンの内臓部分まで壁の足場を伝い駆け上っているレリルド、アリヤ、ムラメだったが、目指す場所、外套膜の内側から、何やら見たことのない魔物が次々と現れていることに気づいた。

 それらはタクの情報通り、妖精の羽を背に生やした赤い目の人型の魔物。その腕にあたる部分では十を超える触手がうごめいており、見る人が見れば発狂するようなビジュアルだった。

 そして何よりも注目すべきは、その個体数だ。三人はこれまでに何度も魔物の群れとの戦闘経験を積んでいるが、先の獣人戦を除けばトップレベルで数が多い。

 内側からどんどん湧いてくる魔物は、その数が留まることを知らず、百、二百、三百・・・五百を軽く超えているだろうが、それでもなお増殖が収まる気配が感じられることは無い。


『目的地にたどり着く前に、あいつらをどうにかしないといけないみたいだ。』

『どのように突破しましょうか?』

『あの数、おそらく再生能力までは有していないでしょうけど・・・いや、大本が()()だし、ありえなくはないかしら・・・?』

『とにかくやってみよう!アリヤ!ムラメちゃん!戦闘用意!!』

『『了解!!』』


 思念による意思疎通により、三人は同時に得物を手に取る。

 レリルドは『武器生成』で、ムラメは『闇影製作(エンシャドウ)』でそれぞれ片手剣を生み出し、アリヤは腰のマリアを鞘から引き抜いた。

 三人はそのまま駆け上がる勢いを上げ、個体数があまりにも多すぎるそれらを、目的の場所へと進みながら迎え撃たんとする。

 群れは三つへと分かれ、グラーケン本体へと向かう者達を全力で阻む。主を守らんと奮起するその勢いは、さながら忠実な兵士のよう。統制のとれた動きとその数の暴力で、三人へとそれぞれ襲い掛かる。

 先に動きを見せたのはレリルドを狙う群れ。腕部分から生える触手を彼へと向け、うねるそれらをまっすぐ伸ばし放つ。


「クッ!?・・ハァァァッ!!」


 それは大量の触手から、まるで槍の雨へと変貌したそれにはレリルドも驚きはしたものの、すぐさま対応せんと構え、迫りくる触手を片っ端から切り刻んでいく。

 レリルドが感じた手応えとしては、「いける。」

 触手に関しては問題なく切断できた。数はとんでもないものの、回避行動も併用すれば対応できないことは無い。

 そして何よりも救いだったのが、この名も知らぬ魔物が再生能力を有していなかったことだ。斬られた触手は元には戻らず、近づいてきた本体を真っ二つにすれば一瞬で絶命する。

 

『どうやら、再生しないみたいね。これなら何とかなるかしら?』

『いや、まだ油断はできないのです!いくら何でも、数が多すぎます!』


 そう。仮に一秒間に十体倒すことができたとしても、それを上回る個体数が次から次へとグラーケンの外套膜の内側から出てくるのだ。このまま倒していたのではまったくきりがない。


『でも・・・今のところ・・完全に足止めされているわけではないっ・・・!はあっ!!・・・何とか押しのけて一気に行きたいところだけど・・・』

『流石にそれはちょっと厳しいかしらねっ!・・・やぁっ!・・ムラメちゃん!そっちは大丈夫!?』

『ふんっ!・・・ムラメは大丈夫なのです・・・!この足場なのでっ・・上に辿り着くまで闇丸が出せないのが少し心配ですが、っと・・うわぁっ!?・・・やっぱりちょっと厳しいかもですぅ!?』


 三人は絶え間なく攻撃を続けながらも相談を進めていく。

 アリヤとレリルドは今のところは何とか凌いでいるが、余裕があるわけでもない。ムラメは対抗事態は何とかなっているものの、途中で足場が崩れてしまい、なんとか前の足場に着地できたが、今のそれはかなり危なかった。ともかく、けっこうギリギリの状態であることには変わりはない。

 この中では今最も余裕を残しているのはアリヤだろうか。彼女はまだ戦闘スタイルを二刀流に移行しておらず、マリア一本で触手の槍の雨を切り刻み続けている。元々今回のグラーケン討伐メンバーの中では剣の扱いに一番長けている彼女は、はっきり言ってまだ全力ではない。

 全力を出していないという点では、レリルド、ムラメも同じだと言えるが、この二人はアリヤのように剣術一本で訓練してきたわけではない。

 生成したあらゆる武器を扱うため、様々な獲物で日々訓練を続ける二人は、よく言えば万能型。

 手数を多く有し、どんな場面にも応用する対応力がある。

 だが悪く言えば、突出した熟練度というものが、その得物一本で腕を磨き続ける者達と比べるとどうしても劣ってしまう。


『よし・・ここからは・・・』

『武器をチェンジだ!』『武器をチェンジです!』

 

 レリルドとムラメはお互い意識せず、だが同時に武器の変更を宣言。


『いくよ!ベレッタ!!!』

『『闇影製作(エンシャドウ)』、双短剣(ツインダガー)・・って・・・ええぇ!?レルさんのあれ、一体何なのですか!?』

『あ、そうか。ムラメちゃんは見るの初めてよね。』


 レルの手元に現れたのは、この世界では珍しいどころではない程の漆黒の銃。だがそれは、いつもレリルドが愛用している拳銃ではなかった。


『・・・ベレッタ ARX160。一分間に七百発の弾丸を放つアサルトライフルだよ。』

『べれ・・?あさ・・と・・・らい?』

『ムラメちゃん。()()について語り始めたらレルは止まらないから、あんまり気にしなくてもいいわよ。』

『?・・それにしても、七百発というのは・・・?』

『それは・・・見てたら分かるわ。』


 一メートル無い位の大きさのそれを、レリルドはしっかりと群れに向かい両手で構え、一切の容赦もなくその引き金を引く。そしてその瞬間、ムラメはこの世の物とは思えないような光景を目の当たりにする。


『んなっ・・・・・これは・・・!?』


 突然鳴り響く爆音。かすかにしか見えないベレッタから放たれた弾丸が触手妖精の身体をことごとく貫いていき、一瞬して骸となったそれらはどんどん地の底へと向かって落下していく。

 魔力によって生成されたベレッタは、リロードの必要も玉切れやオーバーヒートの心配もなく、更にレリルドはコートのスキル付与(エンチャント)により無尽蔵の魔力を行使することが可能となっている。理論上、無限に乱射できるそれは、もはやムラメにとっては目の前の妖精なんかよりもよっぽど恐ろしいものに見えた。


『なんというか・・・もはや言葉が出てこないのです・・・』

『ムラメちゃん。それが正常よ。私の仲間の二人は、いろんなネジが外れちゃってるの。』

『『ちょっと酷くない?』』

『あ・・タク、聞いてたの?まぁ別に問題はないけど・・・それより・・そっちはどう?』


 話に割り込んできたタクに、アリヤは心配はしていないものの、念のため彼へと問いかける。


『うーん・・・今六本の触手を食い止めてるんだが・・・ちょっとキツくなってきたな・・そっちは・・・残り五、六割ってとこか・・・っそういえば!あの触手妖精は大丈夫か!?』

『あ・・・はい・・レルさんが今一掃してくれてます・・・』

『・・・・・さっきから聞こえてくる銃声・・まさかとは思ったが・・・』

『うん。でも、魔力が無尽蔵とはいえ、僕の体力があまり長く持たないかもしれない・・・!何とかできるところまで減らしてみるけど、全部撃墜は無理だと思う・・!』

『レル、十分よ。随分数も減ったし、これなら少しの間は余裕ができたわ。』

『ムラメも態勢を整え直せました!ありがとうございますレルさん!』

『皆さん、ここまで良い調子です!このままいきましょう!!』

『『『『はい!!!』』』』

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