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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#95 託す未来、時を越えたエールその一

お待たせいたしました!投稿再開です!

活動報告でもお伝えいたしましたが、仕事の関係で毎日投稿が難しくなりそうです。

なるべく早くお届けできるよう努力いたしますので、よろしくお願いいたします!

「・・・さぁ、もうすぐ奴と再びの御対面だ・・!」

「この七年間、ずっと修練を積んできました。今日、この日のために・・・絶対に勝ちましょう!」


 俺は再び、少し前に通った道を歩く。今度は堂々と。そして、五人で。

 今日も今日とて冷たい風が洞窟の中で優しく吹いており、そこまで湿度も高くない様子だ。非常に動きやすい絶好のコンディション。

 装備も万端。気合いも十分。戦う前の手筈は全て整えた。

 対策会議は出発のギリギリまで行われ、大まかな作戦を全員が少ない時間で無理矢理頭に叩き込んだ。そして、その通りに進むとは誰一人考えていない。実戦にイレギュラーはつきもの。油断大敵である。

 道中、辺りから湧いてくる魔物の影も見えたが、そんなやつらに構う暇も余裕もない。俺が威圧するように闘気全開で睨みつけると、そいつらは例外なく逃げ去っていった。


(今日のタク・・いつもと雰囲気が全く違う・・・これが本来のタクの集中モードなのか・・?)

(凄い気迫・・負けてられないわね・・・!)


 共にこの地へやって来た二人も、タクの様子を見て再び気合いを入れ直す。負けられない戦いは、もうすぐそこなのだ。

 緊張感で高まる心拍数を抑え込み、深く深呼吸し息を整える。随分と長く感じられた洞窟での生活の日々だったが、今は焦る時間すらただただ惜しい。この先には、避けたくても避けられない戦いが待っているのだから。


(ムラメはあの時・・動くことすらできませんでした。一人での訓練では意識することのない心の弱さが・・あの時、私の身体を固めた・・・今度はそうはいきません!闇丸と、お父さんと、そして皆さんと!ムラメは精一杯戦うだけなのです・・・!)


 よもや、このような決意を固める七歳の少女がいるとは、大抵の人間は考えることは無いだろう。だがしかし、そんな環境で、彼女は育ってきたのだ。修練を積んできたのだ。もう彼女の意思を揺るがす要因など存在しない。出来ることを、ただ全力で。この場にいる他の四人が内に秘める物を、ムラメも、この幼い少女もまた有していたのだ。


「さあ・・・随分待たせたな・・・そろそろやろうぜ・・・・・グラーケン!!!」


ギュギィィィィィィィィィィ!!!!!


 俺のその声に呼応するかのように、グラーケンは文章化できないような叫びをあげる。それは洞窟居住民アンダーグラウンダーの誰も聞いたことのない支配者の咆哮。それはこの戦いの開戦の狼煙となった。

 直後現れたのは二本の触手。向こうもまずは小手調べを試みているようだ。


「そんじゃあ作戦通り、行動開始!!」


 俺が合図を出し、とうとうこちらも本格的に戦闘態勢に突入する。そこから真っ先に動いたのはキキョウだった。


「七年間の研究の真髄・・洞窟居住民アンダーグラウンダー、いや、この世界の常識を大きく覆すことになる我が奥義、出し惜しみは無しです・・・『属性消去』!!!」


 一体どれ程の苦労があったのだろうかはかり知ることは出来ないその魔法は、闇属性を闇属性で()()()()

 長年の自身の肉体との自問自答、検証の日々は身を結び、キキョウはある一つの仮説を証明してみせた。

 それは、『洞窟居住民アンダーグラウンダーは空気中の魔力を自身の魔力炉に取り込んだ際、その時点で闇属性に変化されてしまうのではないか。』というものだった。

 様々な試行錯誤の末、それが正しいという答えに辿り着いたキキョウは、これまで培ったノウハウを活かし、その後も研究を続け、ようやく編み出した『属性を消す』というこの世界の法則すら脅かしかねない魔法。それが『属性消去』なのである。

 そして、属性が打ち消され無属性となったその『万能属性魔力』ともいえるそれは、どんな魔法にも使用できる万能性を持つ。これにより、キキョウは洞窟居住民アンダーグラウンダーでありながらも、闇属性以外の魔法を行使することに成功したのだ。


「ではいきますよ・・・!『強化火(エンハンス・)力設定(レギュレーション)』ッ!!」


 まず第一、キキョウの魔法を全員に付与する。

 キキョウの『エンハンス・レギュレーション』は、最大強化を百パーセントの塊とし、それを()()して複数人に付与することのできる強化魔法。

 誰をどの程度強化するのかを自分で調節することが可能であり、今現在は俺、レル、アリヤ、ムラメに二十五パーセントずつ強化を施してもらっている。だがキキョウはこれだけでは終わらない。


「『思念共有』、『感覚遮断【()(キュウ)(チョウ)()】』、『縛りによる(ブーステッド)底上げ(・バインド)』!!!」

『・・・皆さん!聞こえますか!?』

『レリルド、聞こえてます!』

『アリヤ、問題ありません!』

『ムラメ、大丈夫です!』

『すげぇ!ほんとに全員と意思疎通が可能とは・・!あ、アイザワオッケーです!』


 俺達に強化を施しても、キキョウはまだまだ止まらない。作戦会議の際にそれぞれの魔法とスキルの概要を聞いたが、これらが中々に凄い。

 三種の中の唯一の魔法。『思念共有』。これはおそらくアリンテルドでの獣人戦の際に、『アシュラ』のバッカスが使用していたものと似たようなものだ。離れた場所にいる他の四人とも、まるでグループ通話のように思念による会話が可能だ。とはいっても、考えていることすべてが筒抜けになるわけではなく、自分が伝えたいと思ったことしか相手に伝わらないということで、普段使いでもかなり便利な魔法となっている。

 次に二つのスキル。まず『感覚遮断』。キキョウは当初の予定通り、五感の内触覚以外の全てを自ら一時的に断ち切ったようだ。これだけならただのマゾ向けスキルだが、その次に発動した『縛りによる(ブーステッド)底上げ(・バインド)』と掛け合わせることで、一気に強力なものへと早変わりする。

 そして、これこそキキョウが以前封じた感覚器官以外の性能を引き上げることができると言っていたスキルの正体だ。これにより、彼の触覚は人間のそれを遥かに凌駕する性能にまで引きあがる。

 キキョウが『思念共有』を使ったのは、遠くの仲間と連絡を取り合うのももちろんだが、『感覚遮断』を発動するからという理由も大きい。発動中のキキョウは誰の声も聞くことができず。遠くからのハンドサイン等ももちろん見ることができない。だがしかし、『思念共有』さえあればそれらの問題は全て解決する。見えなくても、聞こえなくても、思うことさえできれば相手に発さなくとも言葉は伝わる。そしてその逆も然り。

 そしてここまでの一連の流れで、一ターン目の初手、味方にバフをかけるフェイズが終了した。ここからはそれらを駆使して本格的に行動に移る。


『さぁ!駆け上ってください!!』

『『『了解!』』』


 キキョウの呼びかけに、俺以外の三人が答え、壁から突出している石の柱を先の俺のように駆けあがる。三人が目指しているのはもちろんグラーケンの内臓に届く場所。つまり俺が到達した最高地点と同じ場所だ。

 強化のおかげか、いつもよりも動きが格段に良い三人を遠くから眺めつつ、俺はキキョウの前に立ち、グラーケンの本体をまっすぐ見つめる。

 

「もう全部が終わるまで逃げねぇぞ・・!ふぅぅぅっ・・・来い!!!」


ギュギィィィェェァァアアア!!!!!


 グラーケンは俺の挑発に応じ、二本の触手を俺へと突き放つ。

 ここで『身体強化』を発動させ、勢いのまま迫りくるその先端の側面を殴る。触手の軌道は俺の拳を境に狙いが逸れ、壁に片方の触手が勢いよく突き刺さった。

 そしてもう片方は、スレスレで回避。矛先がキキョウへと向かったその直後に触手の側方から思いっきり蹴り上げる。大したダメージはないだろうが、弾き飛ばされたその触手は、キキョウへ牙をむくことは無かった。


『キキョウさん。俺が何があってもヘイト集め兼盾として守るんで、しっかり魔法に専念してください!』

『ありがとうございます!お願いします!』


 戦いはまだ始まったばかり。幸先がいいのかどうかは分からないが、好調なスタートを切ったと言ってもいいのではないだろうか。

今後の励みや参考となりますので、よろしければ評価等もよろしくお願いいたします!

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