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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#94 死掴の洞窟烏賊その二十四

「・・さて、あの巨体に私たちの技が通用するのかしら・・・」

「そういえば今更だけど、アリヤが模擬戦で使ってた・・えーと・・・『危機離脱の陽炎(フレイムエスケープ)』・・だったか?あれって結局何なんだ?」


 作戦会議も終盤、ちょっとした雑談が会話内に入り混じってき始めた頃、俺はアリヤにずっと疑問だった問いを投げかける。

 ムラメと闇丸の回避不可能の挟み撃ちから脱出してのけたあの技。ずっと聞きたかったのだが、どうにもタイミングが合わずに聞きそびれていたのだ。


「あぁ、あれね。あれはラザール通りのスキル付与士(エンチャンター)の所で買ったの。ものすごく高かったけど・・・」

「スキル付与士(エンチャンター)・・・・・そうだった!!行こうとしてたのに完全に忘れてたぁぁあ!!!」


 そういえばあの時そんな会話をしたような記憶が今頃になって脳裏にフラッシュバックする。装備を揃えた後に感じた何かを忘れているような感覚の正体はそれだったか・・・!!


「スキル付与士(エンチャンター)ならルクシアにもいるだろうし、その時にいろいろ見てみれば良いんじゃないかな?」

「アマテラスにもそういった者はおりましたよ。もしも行く機会があれば、ご覧になってはどうですか?」

「うーん・・・じゃ、今後の楽しみにしとくよ・・・」


 しかし、技術(スキル)というくらいなのだから、本来自力で習得するものなのではないのだろうか?いや、だがまぁここは異世界。現代人の一般常識に囚われないのが良いこと、魅力であるのだ。無理にいちゃもんを付ける意味はないだろう。


「さて、と。それで、作戦決行はいつにしましょう?私はいつでも行けます。」

「ムラメも覚悟は出来ています!」

「僕たちも準備は万端だよ。」

「リーダーはあなたなんだから、それに従うわ。」

「いつからリーダーなんぞになったんだ俺は・・・」


 俺は人の上に立つっていう柄ではないのだが・・・まぁいいか。


「・・・・・決行は明日。このグラーケン討伐作戦はいわば、出題範囲が分からずに予習復習ができないテストみたいなもんだ。ぶっつけ本番になるし、待っていても相手の弱点なんて誰も教えてくれない。なのでとっととケリをつける。今日の所は明日に備えてゆっくり休むもよし。ある程度体を動かしておいてもよし。イメトレをするもよしだ。とにかく、万全の状態で戦える準備をしてくれ・・・皆、絶対に倒すぞ!!!!!」

「「「「おう!!!!!」」」」


 俺の呼びかけに対して、四人は何の文句も言わずに応じてくれる。この世界の人達は、本当にどこまでも素直で優しい人達ばかりだ。だからこそ、そんな人たちに害を及ぼすのであれば、俺は迷うことなくこの拳を存分に振るおう。

 正直、グラーケンに個人的な恨みはあまり持ち合わせてはいないが、強制断食生活を行う羽目になった分、そしてあの不味すぎる味の分の八つ当たりくらいはしても誰も文句は言うまい。

 最終的に結果がどう転んだとしても、それを死に物狂いでやったのであれば、きっと後悔も無い。俺たちはただ、やれることをやるだけだ。

 



 その後、アリヤはムラメと稽古で最後の仕上げ。レルは旅に持ってきた本を読み知識を蓄え、キキョウは事が上手くいきますようにと精霊の湖に祈りに行った。

 そして俺は、ただ静かに眠る。

 昨日は一晩中偵察で動いていたため、ろくに睡眠が取れていなかった。睡眠不足によるパフォーマンスの低下は避けなければなるまい。

 とはいっても、そこまで熟睡できるわけではなかった。理由は簡単。この空腹状態である。

 無理もないだろう。ここ数日間、ろくに食事が取れていないのだ。この洞窟に落ちてから口に入れた固形物を強いて上げるなら、あの魔石くらいなのだ。三大欲求の一つを強制的に絶たれてからというものの、悲鳴を上げる胃袋に鞭を打って活動していたが、そろそろ限界にも感じていた。

 グラーケンを倒さなければ、待っているのは餓死または洞窟居住民アンダーグラウンダーとしての余生という究極の二択である。

 前者を選べばもちろん俺は死に、この世界も魔神に滅ぼされて終わり。後者では俺たちが洞窟に出られず、こちらも魔神を倒しに行けずに終わりだ。

 であるため必須条件なのだ。グラーケンを倒すことは。

 魔物たちには悪いが、グラーケンが死んだことによりエンゲージフィールドの生態系に影響があったとしても、頑張れとしか言いようがない。別に言うつもりもないが。

 

「さぁ、腹括れよ俺・・・!」


 この世界の常識はずれの強者たちでさえ化け物と畏怖するやつとこれから戦うのだ。正直言って俺も怖い。

 元の世界にいた時は、アニメの登場人物のように、強大な敵に向かって行きたいと心から思っていた。しかし、いざ実際にその状況に陥れば、これが中々に恐怖心と緊張感が襲ってくる。偵察の時も、何度それを味わったことか。

 だが、あれだけ啖呵を切ったのだ。やり通さねばなるまい。

 

「洞窟から出られたら、何食おうかな?」




 そこから時間はあっという間に流れ、翌日はすぐに訪れた。各々が気合いを入れ直し、準備は万端だ。

 エンゲージフィールド踏破の旅八日目。ついにボスへと挑む。


「お前ら、一応言っとくけど、いのちだいじに、だからな。やばくなったら、最悪撤退も考えてくれ。」

「今更何言ってんのよ?どうせそんな事言って、最後自分は残るんでしょ。」

「悪いけど、僕らも引くつもりはないよ。」


 まったく・・俺はなんとかなるが、二人は万が一潰れでもしたらおしまいなんだからな・・・


「タクさん。私に何かあったら、ムラメをお願いします。」

「いや、何かある前に撤退を・・・」

「ムラメは逃げないのです!最後まで戦います!」

「だからいのちだいじにって言ってるでしょうが!?」


 どいつもこいつも・・・少しくらい自分たちの心配をしてほしいものだ。まぁ、俺も人のことは言えんが、俺はいいんだよ。『自己再生』あるから。


「というか、あなたこそ自分の心配をすべきでしょ?一番危険な役割に回るんだから。」

「一番かどうかは分からんがな・・・あの触手妖精数百体の方がやばそうな気もするが・・・」

「タクさん、お気をつけて!」

「俺も武運を祈ってるよ。よし、行くか!」


 そうして俺たちは、洞窟居住民アンダーグラウンダーの居住エリアを後にする。

 時は満ちた。ここからは落ち着く暇などない激闘になるだろう。負けるつもりは毛頭ない。ただひたすら()りにいく。


 さぁ、イカ狩りの時間だ。

活動報告の方に投稿するよりも見ていただけるであろうこちらでも少しお知らせを。

この約2ヶ月間毎日投稿を続けておりましたが、日に日に余裕がなくなり、あまり構想できていないまま執筆を行なっておりました。

このままでは、作品のストーリー自体が崩壊してしまうという恐れを感じてしまいました。

つきましては、少しお休みをいただきまして、自分の作品に向き合うお時間をいただきたいと思います。

期間は約1週間と考えておりますが、変動する可能性もございます。

ご迷惑をおかけしますが、今後もこの作品をお楽しみいただけたら幸いです。

よければ評価も是非。これからも、よろしくお願いします。

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