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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第一章 異世界転移・獣人殲滅戦線
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#8 獣人殲滅戦線そのニ

「………師匠も?……ししょ」


 ガルォォォオオオオオオオ!!!!!!


 そんなどこか子供のような寂しげのある声を漏らすレリルドの言葉を、無情にも周りの獣人が遮った。そしてそんな奴らに負けることなくダリフが説明を続ける。


「・・・あいつらは地図でいうアリンテルドの真上、ニンドっつう国に生息している準中級の魔物だ。本来そこら辺の魔物と変わらねえような奴らだし、少しばかり人間の血も混じってるから、人間側(こっち)から攻撃しない限り基本的に襲ってきたりなんかしない。現にちょっと前まで森の中以外で見かけることなんてなかったからな。」

「ちょっとってどのくらいだ?」

「確か・・・半年前くらいからよ。」


 半年前・・・と言うことは春あたりか。確かに冬も終わって生き物は活発に動き始める頃だろうが、それだけでは急に人間を襲う理由にはならない。冬季の餌不足による飢餓か、カリスマ性が高いが凶暴な種が生まれたか、はたまたそれとも・・・


「ハッキリ言ってあいつらとやりあう気なんざ全くなかったが・・・街に攻めに来るのならば話は別だし、この数でこっから更に増えんのなら尚更だ。」


 先程のダリフの言葉が本当なのだとすると、目の前の獣人たちを片っ端から倒していくというわけにもいかない。それに自然に無限湧きが起こるとは考えにくい(ゲームではあるまいし)。こういう事象には必ず裏がある。ここは魔法の世界。となれば答えはすでに一つしかない。


「森の奥まで突っ切ろう。奥にこいつらを増やしてる奴がいるはずだ。」

「タク…でもそれじゃあこの周りにいる奴らが街の方に……!」

「少しくらい後ろの味方も信用してやってもいいんじゃないか?何の為に千人以上いるのかわかんないし、何よりその言い方だとあの人達がこいつらにも勝てないって断言しているようなもんだぜ?」

「違っ・・・!私は後続の人たちを心配して・・・」

「分かってるよ。でもあの人らも生半可な気持ちで冒険者名乗ってる訳じゃないはずだ。」

「タクの言うとおりだアリヤ!全員が俺の認めた最高の仲間たちだ!何にも心配はいらねぇ!そうだろうレル!」


 そう問いを投げかけられたレリルドは、静かに、そして真剣な眼差しで頷いた。しかしダリフには、レりルドが先程の話をまだ引きずっていることが目に見えていた。


「・・・レル。今は時間が惜しい。さっきの事については後でまたゆっくり話してやろう。だから今は目の前の戦いに集中しろ。お前の魔法は特に魔力の操作が難しいんだからな。」

「・・・・・はい!」


 レりルドも気を引き締め直し、一通り会話も済んだところで、俺たちは平原地帯を抜け、森へと向かった。




「しかしやはりというかなんというか・・・」


 敵の数が多すぎる。あとさっきまで見なかった狐みたいな奴もいる。おそらくこいつが先程のバッカスさんが言ってた胡狼獣人(ジャッカルマン)とかいうのだろう。幹部レベルとか言っていたので、先程までの犬獣人(ドッグマン)よりもに強いのだろう。だが・・・


「邪魔だ。『身体能力強化』三十%!」


 もしも本当に無限湧きが起きているのならば、今はこいつらに時間を割いている余裕はない。先程までに相当数倒してきたとはいえ、それでも無視して突っ切ってきた獣人はあまりにも多すぎる。後衛の被害が出ることをを想像しているわけではないが、今もなお増え続けているのならば、大本を叩く時間を長引かせれば長引かせるほどあちらの負担がどんどん増えてしまうのだ。


 そうとなればやるべきことは一つ。速攻撃破だ。昨日この世界に来た戦ったことも無い新人(ニュービー)ですなんて言ってる場合でも、まだまだ自分は未熟者で弱いなどとほざく時間すらないのだ。目の前の獣人共(コイツら)は俺よりもはるかに弱い格下。それが今の事実だ。雑魚にかまう暇など今の俺たちにはないのだ。


「・・・ハァぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

「「「「「ぐおああぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」」」」」

「「「⁉」」」


 俺が授かった『身体能力強化』は、文字通り自身の身体能力を向上させるだけの非常にシンプルな能力。故に制御が非常に簡単であった。今日の昼頃にスキルを試している際に二時間ほどで習得できたのである。その際に分かったのが、それまでの戦闘での『身体能力強化』は()()()()()()()()()()()()()()()ということである。

 それまで百%だと思っていた『身体能力強化』を()()()に十分の一程度まで下げられるか試した際、脳内にパーセンテージのイメージが現れた。ステータスウィンドウのように可視化されたわけでも、脳内に謎の声が響いたでもない。ただ()()()のだ。そのことに気づいた俺はすぐさま百%を試したのだが、現在の肉体では耐え切れず、発動した瞬間全身の筋繊維が千切れた。『自己回復』が無ければ、今現在も誰かに発見されない限りずっとその場で悶えていただろう。

 そして、『自己回復』を常時フル活用することで、二時間の間に四十五%までなんとか制御可能になった。これはすなわちこれまでの『身体能力強化』の四・五倍。もしくはそれ以上の性能が見込めるということなのだ。

 だが、パーセンテージを上昇させるにあたって二つほど欠点がある。

 まず一つ目、能力に自分自身が対応しきれていないという点である。よく考えれば、いや、考えなくとも自分は昨日までただの一般人だったのだ。急に身体能力が上がれば誰しもが制御に苦労するだろう。

 そして二つ目。これは先ほどの通り。体への負担が大きすぎる。『自己回復』、『無限スタミナ』のおかげで何とか動けてはいるが、いくら体力があろうと肉体への反動はデカい。動くたびに筋肉痛の三倍位の痛みが襲ってくる感覚だ。『自己回復』のおかげで体が壊れるということはないが、つい先日まで平凡な一般人だった俺に常時これは精神的にキツい。

 そんな訳で現在は先程の十五%から三十%に引き上げ、近くの胡狼獣人(ジャッカルマン)犬獣人(ドッグマン)合わせて二十匹程を一瞬にも満たない速度で一掃したのだ。

 

「何・・・今の・・・・?」

「は・・速い・・・まるで稲妻のようだ・・・!」

「ほぅ、やるじゃねぇかタク!」


 元居た世界では考えられない超人的なスピードとパワー。自分でも抑えきらない優越感と興奮。だがここで自惚れてはいけない。自分たちはこれから魔神と戦うのだ。こんなところで躓いていては先が思いやられるどころではない。


「まだ森に入ったばかり。こっからが本番って訳だ。おそらくボスを潰せば無限湧きも止まる。お前ら、気合い入れ直せよ!」

「「「はい!」」」


 突っ走るダリフに続き、俺たちは森の奥へと進んでいった。

パーセンテージの概念を考えて相当立って、ふと見返してみたんですけど・・・あれ?某フルカウルじゃね?


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