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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#73 死掴の洞窟烏賊その三

「でもタクさん、具体的には一体何をするんですか?」

「何って言われてもな・・・まぁひたすらトライアンドエラーだ。獲得したストーン・アーツを発動しまくって体に染み込ませる。そしてそれを気配が完全に消せるようになるまでやる。」


 これはグラーケンの情報を探るためであり、実際の戦闘ではほとんど使うことのない技術だろう。

 つまり、ここにいつまでも時間をかけるのはまずい。とっとと習得して、次の段階へと移らなければならないのだ。

 

「そう言えば頼んどいてなんだけど、気配の察知とかって出来る?」

「まぁ、ある程度だけどね。でも、タクが後ろに回ったことには気付けなかったし、ちょっと自信無くたったわね・・・」


 『魔晶闘波(ストーン・アーツ)【闇】』を獲得した際、俺は新技『闘気之幻影(アーツ・ファントム)』を開発した。三人曰く。あの初見技でもかなり完成度が高かったらしく、その時は他の二人も気付けなかったらしい。

 しかし、グラーケンのセンサーの類は異常に発達している。

 おそらくだが、その範囲はエンゲージフィールド全域にまで及び、その精密な触覚は、どんな小さな生き物にも牙を向ける。触手だけど。


「いくら上手くいっただろうと、所詮は初見。まだどこかに必ず粗がある。一回ミスれば偵察作戦は終わりと言ってもいい。だから、できるだけ完璧な状態で臨みたいんだよな・・・」

「やっぱりそういうことだったのね。本当に危ないことをすぐ率先してやるんだから・・・」

「俺は物理攻撃じゃ死なないから。最悪触手でタコ殴りにされても生きて帰ってこれるし・・・」

「ちょっと前にも言ったでしょ!自分を大切にしなさい!自分は良いかもしれないけど、こっちが心配になるのっ!!」

「いっ!?・・・以後気を付けます・・・」


 まぁ確かに、仲間に心配させたらダメだ。逆の立場なら、俺も同じくらいひやひやするだろうからな。

 だが、これは俺にしかできないことなのだ。この役を他の奴に譲るわけにもいかないし、俺だって失敗前提でやろうとしてるわけでもない。

 俺を心配して叱責してくれたアリヤに、俺は小さく笑みを返した。


「大丈夫!絶対に成功させる!」

「当然よ!全員生きてここから出ることくらいできないと、魔神になんて絶対勝てないんだから!」

 

 さて、余計にヘマできなくなったな。『絶対』と言ってしまったのだ。更に気張らねば。

 絶対。この言葉は重い。ただでさえ現実では難しい百パーセントを必ず遂行させるという誓い。言ったからには、成功以外なんて許されないのだ。


「あの、タクさん!気配を読むことに関してであれば、お父さんに相談してみてはどうですか?」

「え?キキョウさんに?」

「はい!お父さんはムラメと他の子供たちの間で、『かくれんぼの鬼』として知られているのです!ムラメたちがどんなに頑張って気配を殺しても、すぐに見つかっちゃうのです!」

「『かくれんぼの鬼』ねぇ・・・」

「しかも、お父さんは鬼の時、いつも目隠しをしているのです!ムラメから見ても、あれはとんでもないですよ・・・!かくれんぼの時のお父さんは、本物の鬼なのです・・・!」


 しかしムラメたち、いわば超人の類の人間が可能な限り気配を消しているというのに、それを視覚なしですぐ見つけるとは・・・とても人間業ではない。その話が本当なのであれば、お願いしてみる価値はあるかもしれない。

 俺は早速ムラメに頼んで、キキョウを訓練場にまで呼び出してもらった。




「ふむ・・・気配を完全に消す修業・・・ですか?」

「はい!どうかお付き合いいただきたいのですが・・・」

「・・・分かりました。お相手いたしましょう。」

「ありがとうございます!よろしくお願いします!!」


 そうして、キキョウとの特訓が始まったのだが・・・


「全然気配が消せていない!!そんな目くらましがグラーケンに通用すると思うな!!もっと集中しろ!!!」

「は・・はいっ!!」


 勘違いしないでいただきたいのだが、俺の相手をしてくれているのは間違いなくキキョウである。

 ルールとしては、キキョウに訓練場の中心に立ってもらい、目隠しをして十秒数えてもらう。そして俺はその間に移動。十秒経ったキキョウに気づかれれば負け。その繰り返し。

 キキョウは人が変わったかのように鬼教官と化し、俺はそのスパルタ教育に全力で向かっていく。体育会系の部活もこのような感じなのだろうか?

 ちなみに現時点で、一時間分。約三百六十回連続で行っているのだが、一度も出し抜くことはできず、キキョウに寸分の狂いもなく指をさされまくっていた。


「どうした!!俺すら騙せないんなら、グラーケンになんか秒で気づかれるぞ!!気ぃ抜くんじゃねぇ!!!」

「はい!!!!!」


 だが、これだけ集中して鍛錬に励めている。遊びのように行うのではなく、こっちの方が飲み込みも上達も格段に速いだろう。これしきの事で躓くわけにはいかない。今にも出し抜いてやる!

 そんな対抗心を燃やしながら、俺はキキョウの周囲を駆け回っては気配を消し、駆け回っては消しを繰り返す。


「キキョウさん凄い・・・!タクの位置を寸分の狂いもなく当ててる・・!しかもずっと・・・!」

「あわわ・・・『かくれんぼの鬼』再降臨なのです・・・!」

「それにしても・・何であそこまで的確に、それも目隠しをしながらタクの気配を察知できるんだ・・?スキル?それとも索敵魔法か・・・?」


 レリルドは思考を巡らせるが、これだという確信が思い浮かぶことは無かった。現状では、その真実はもちろんキキョウのみぞ知るのだ。




(クソッ・・このままおんなじことやってても変わんねぇか・・・ならば・・・!)

「・・・ほぅ?」


 俺は『闘気之幻影(アーツ・ファントム)』を用いて、初回発動時のようにその場に幻影を残しながら罰の場所へと移動し、ピタリと止まる。

 だが、キキョウの指先はそちらを向くことは無く、またもやこちらの方に気づかれてしまった。


「囮を使って出し抜くパターンか・・・悪くない考えだ。だがな、それはやめといた方が良い。戦闘中なら効果はあるだろうが、これからお前がやるのは偵察だ。結局気づかれるんなら意味がねぇだろ?」

「た・・確かに・・・!」


 キキョウの言うことは確かに理に適っており、アドバイスが的確でとえも分かりやすい。

 

「だかまぁ、別の方法を試すってのは悪くない。その調子でいろいろやってみろ!」

「オッス!!!!!」


 この日、キキョウとの特訓はこの後も数時間休憩なしで続き、ここからもかなりの苦戦を強いられたのは、言うまでもないだろう。

はい。瀧原です。

魔晶闘波(ストーン・アーツ)【闇】』を獲得した時の効果に気配を完全に消す的な文面があるのを執筆してから数か月後に発見いたしました・・・ので、その点に関しては『隠密効果【大】』ということにいたしましたほんとすみません!!!

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