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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第三章 ビギニング・ジャーニー
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#71 死掴の洞窟烏賊その一

 エンゲージフィールド踏破の旅六日目。

 そんなわけで、ようやく本格的にグラーケンを倒すために動くことになったのだが、ここで軽く奴についておさらいしておこう。


 グラーケン。エンゲージフィールドの魔物の中でも頂点に君臨するであろうイカ型の魔物。その体長はもはや測定不能なレベルの超が付く巨体。

 レルの証言だと普通のイカと同じく触手は十本。属性は光。

 つまり弱点は闇属性のはずなのだが、この洞窟居住民(アンダーグラウンダー)の居住区を守る防壁の役割を担っていた、光属性耐性を付与された闇属性の魔石の壁が突破されたことから、闇属性への耐性を身に付けている可能性もある。おそらく全く効かなくなったということはないだろうが、もしも事実ならただでさえ高い討伐難易度が更に上がることだろう。


「それで・・作戦はどうしようか?」


 ひとまず長老の間に戻り、レルが先陣を切ってグラーケン討伐会議が急遽開催される。ここを守る壁がなくなった以上、いつまでものんびりしていられない。次いつ奴がここに現れるのか分からないし、さっきのようになぜか何もせずに去っていくとも限らない。早急に手を打たなければならない。


「ふむ・・・お前さんたちにもわしらのように精霊の加護を授けてもらえれば少しは変わるじゃろうが・・・」

「え?そんなことできるんですか?」

「二度と陽光は拝めんなるな・・・」

「それはちょっと・・・」


 長老が思わぬ提案をしてきたので聞き返したのだが、あまりにもデメリットが大きすぎる。

 闇の精霊の加護。彼ら洞窟居住民(アンダーグラウンダー)の力の源となっているものである。


「そういえば長老殿、その闇の精霊の加護について、どのようなものか知りたいのですが、どうか教えて頂けませんか?」

「アリヤ、流石に夜しか活動できないのはちょっと・・・」

「別に加護を授かりたいとかじゃないわよ。私たちにはここに関する知識が少なすぎる。こういう情報は、少しでも多く知っておいた方が良いのよ。

「ふむ・・まぁえぇか・・加護がどんなもんかというとな・・・・・」


 アリヤに頼まれ、長老が闇の精霊とその加護について話し始める。その両方の内容を簡単に説明すればこうだ。


 闇の精霊

 このエンゲージフィールド内の魔物が生息しない安全な洞窟地帯で暮らしていた精霊。

 ある日、精霊たちが住むこの場所に一人の人間、つまり、今目の前にいるこの長老が現れた。

 精霊たちは彼を追い出そうと攻撃を仕掛けたが、若かりし長老はそのことごとくを相殺し、精霊には一切攻撃を与えることなくその場に居続けた。

 やがて精霊は彼を認め、長老は精霊の加護を授かった。そこから地上からの移住希望者が何人か現れ、ここへと訪れた。

 精霊は長老が認めた者には加護を与え、拒んだ者は容赦なく洞窟から追い出したという。

 闇の精霊の加護

 この地で生きる洞窟居住民(アンダーグラウンダー)は皆が受けている加護。

 この洞窟に満ちる魔力を栄養分とし、生命活動を維持することができる。常に魔力を取り込んでいる状態なので、空腹感を感じることは無いのだそう。

 その他にも、加護を受けた者はこの洞窟内に限り身体能力、魔力炉の容量、魔法の質が通常時よりも飛躍的に上昇する。洞窟居住民(アンダーグラウンダー)は洞窟内でしか活動しないので、実質永続的に発動するぶっ壊れバフのようなものだ。

 一人一人違う精霊が加護を与えており、その精霊にもランクが存在するようで、そのランクによって受けられる恩恵が変わってくる。そしてそれは、加護を受ける者の実力、才能、潜在能力の高さによって決まるのだそうだ。

 ・下位精霊の加護―――空腹感を感じなくなる。身体能力がおよそ二倍、魔力炉の容量がおよそ五割上昇。

 ・中位精霊の加護―――下位と内容は同じだが、身体能力がおよそ五倍、魔力炉の容量は二倍に上昇する。

 ・上位精霊の加護―――空腹感を感じなくなるとともに、体が相当軽くなる。身体能力は十倍以上、魔力炉の容量も五倍以上にまで跳ね上がり、魔法による魔力消費量も半減する。


 ・・・・・やっば。


「じゃあやっぱり、ムラメちゃんはその上位精霊の加護を?」

「いや・・・ムラメに加護を授けたのは・・・最上位。そしてその加護を受けた者は・・・ムラメただ一人・・・!」

「私は上位精霊の説明でも相当驚いたのだけれど・・まだ上があるなんて・・・!?しかも、それを受けているのはムラメちゃんだけ!?」

「わしでさえ加護を授かったのは上位精霊・・・ムラメはよほどこの地に愛されとるようじゃな・・・」

 

 ムラメに加護を与えた最上位精霊は、その名の通り闇属性の精霊の中でも頂点に君臨する存在であり、加護を受けた者が受ける恩恵も計り知れないという。

 ただ長老が一つ言えるのは、その恩恵は上位精霊のそれを遥かに超えたものだということのみ。ムラメが七歳にしてここまでの実力を有しているのも、その加護が大きく関係していると言っていい。


「じゃが、本人も努力家で向上心も高い。わしゃあ・・最上位の精霊様が選んだのがこの子でよかったと思うとる・・・」

「長老・・・・・」


 ムラメはどこかむず痒い感覚を覚えながらも、長老が自分の事をそのように思っていることを内心で素直に嬉しく思う。認めてくれる誰かがいる。それだけでも努力を続けた甲斐があるというものだ。


「じゃが・・・精霊の加護というものは、何もメリットだけではない・・・それだけの力・・・もちろん代償が存在する。」


 長老が次に語るのは、加護を受けた際のデメリット。

 流石にあれだけの力。何の制約もなしに行使することなど不可能であるそうだ。俺が特殊過ぎる例なだけであり、この世界では、強すぎる魔法、武器を扱う際には、必ず何らかの代償が必要なのだそうな。

 それは肉体であったり、魔力炉の容量であったり、記憶であったり魂であったり・・・それは行使する者によって様々であるそうだ。

 そして、今回の闇の精霊の加護のデメリットは次の通りだ。

 一つ目、先程長老が言っていたように、陽光を浴びることができなくなる。つまり、洞窟の外へは出られなくなるということだ。

 洞窟居住民(アンダーグラウンダー)達は皆がここに永住することを選んだ者達。外に出ようと思う者は基本的には現れないが、以前二人の男がここを出ようとした際、その片方が先に日中外へと出た際に体を内側から焼かれ、まるで魔石を砕いた時のように粉々になったらしい。逃げ帰って来たもう一人も、それのせいか精霊の加護を失い、その後洞窟の中で餓死したという。

 来るもの拒まず去る者は消し炭または飢え死にさせるというかなりえげつないスタンス。今は問題ないが、この先生まれてくる子供の中からそう言った考えの者が出てこないかを長老は危惧しているそうだ。

 二つ目、闇属性以外の魔法が行使不可能となる。

 本来行使する魔法の属性は、行使する本人の才能に左右されるが、ここではそのようなものは一切関係ない。

 才があろうがなかろうが、洞窟居住民(アンダーグラウンダー)が使えるのは闇属性の魔法だけ。

 そして、移住前に違う属性の魔法を使っていたとしても、それらは使えなくなり、使えるのは闇属性のそれだけとなってしまうということだ。


「他にも細かいのはいくつかあるが・・・ひとまずはこのくらいかの・・・わしも昔は光属性魔法を扱う魔法士だったんじゃが・・・例外なく闇属性のそれしか使えんくなってしもうた。光と相反する闇の魔法。そちらも当時少しは研究しておったから助かったものの・・・かなり苦労した記憶があるのぉ・・・」

「なるほど・・・長老殿・・貴重なお話が聞けました。ありがとうございます。」

「構わんよ・・・あのイカを倒すのに役立つかは、正直分からんがな・・・」


 長老の説明はここで一旦終わり、会議は本題へと戻る。

ほとんど説明回のようになってしまいました・・・

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