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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第一章 異世界転移・獣人殲滅戦線
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#5 レリルドと幼き日の夢

 今日はなんという素晴らしい日であろうか。


 この僕、レリルド・シーバレードにとって、それは運命的な出会いであった。


 日々の日課である剣術と射撃の鍛錬に、今日も変わらず励んでいた。このプストルム訓練場は、昔に現在も管理人をしている人が、樹木自動生成魔法陣なるものを開発し、それがこの訓練場の地面に組み込まれ、丸太から大木までを切られた瞬間から生やす事ができる、というものだ。


 ここの管理人さんと訓練場には十年以上お世話になっており、現在までほぼ休むことなく特訓に明け暮れていた。


「せいッ!!」


 昨日は最大サイズの大木を相手に自身の最大出力をぶつけ続ける威力メインの訓練だったため、今日は乱雑に立てられた大量の丸太を走りながら武器を生成して斬る、撃つを続ける持久力を養う訓練だ。  

 

 自分としてはパワーメインで強引に突破口を開く師匠、ダリフ・ドマスレットが得意とする戦法よりも、こうやって走りながら相手を翻弄して削り続ける戦法の方が得意で、好みでもあったりする。しかし、いつも師匠と手合わせをするときに、「威力が足らねェなァ!」とか言われながらボコボコにされるので、もし回復魔法が無い世界があったら絶対に行きたくないなぁと考えながら武器に威力を乗せる訓練も怠らないようにしている。


「はああぁぁッ!!!」


 今日はいつもよりも調子が良い。武器の生成ミスもないし、過剰に息が上がる事もない。丸太の斬り残しも無いし、弾丸はいつもよりも多く対象を貫いている。調子が良過ぎるくらいに。


「おーいレル!」


 そう言って近づいてくるのは、週に1回稽古をつけてくれる師匠ダリフと、幼馴染のアリヤ・ノバルファーマ。それに・・・見た事のない黒髪の青年。歳は僕と同じくらいだろうか?黒い服にズボン。街の人の服装というよりは機能性重視の装備のようだ。いずれにせよ、どこか僕らとは違う雰囲気を纏った男だった。アリヤと一緒にいたので多少不満げな顔をしてしまったが、その数秒後に早とちりだと気付いた。それどころか、僕の人生を変えるような奇跡の出逢いであったのだ。


 その男の名はアイザワ・タク。アイザワはファミリーネームでタクの方が名前らしい。驚くことに、なんと彼は異世界からあのアルデン様に転移させられたらしい。だがそれよりも驚愕した事は、彼が銃について知っていたことだ。なんでも自分が幼い頃に発見した魔導書に記されていた武器が生まれたのが彼の住んでいた世界だという。魔法が無いので、こういった武器や兵器が進歩したのだそうだ。ぜひ行ってみたいなぁと思ったが、残念ながらその世界では銃を持つだけでケイサツという衛兵に捕まってしまうとの事らしい。


「けどこれからタクはどうするんだい?異世界から来たってことは、家とかお金も無いんだよね?」

「その辺は心配ないさ。昨日は犬獣人(ドッグマン)の大群をぶちのめした後で夜遅かったからうちに泊めたが、うちのギルドの本部にたしか空き部屋があったから当分はそこを使えばいい。俺が言えばみんな大歓迎だろうからな!」

「ダリフさん、ありがとうございま・・・え?あれ犬なんですか?狼じゃないんですか?」

「違うわよ。あいつらのボスは狼獣人(ウルフマン)っていう奴だけど。」


 どうやらタクの世界の犬はもっと小さいらしい。


「それでだレル・・・いやレリルド。初対面で悪いが頼みがあるんだ。」

「どうしたんだいタク?急に改まっちゃって?」


 ここからがタクの本題だった。お話でしか知らないあの魔神が、なんと後一年ほどで顕現し、この世界を滅ぼしてしまうらしい。彼はその魔神を討伐するためにアルデン様が呼び寄せた男なのだそうだ。それでアリヤもタクの魔神討伐に志願したらしい。


「それで・・・お前の力を借りたいんだ。良かったら魔神討伐に協力してくれないか?」

「分かった。力を貸すよ。」

「無理にじゃないんだ。ゆっくり考えてもらって・・・・・いいのかよ!!!!!」

「アリヤも志願したんだろ?僕も世界が滅びるのをただ待つのは嫌だし、何よりその間に別の国にだって行けるんだろ?断る理由が無いよ!」


 この世界では国外へ足を運ぶ事は許されていない。その国の民はその国の発展に力を注ぎ、その国と共に生きよというのがアルデン教の教えの一つだ、各国のやりとりも思念魔法で行っていると聞くし、交易も転送魔法でやってるから他の国へ行く必要がないのだ。他国へ足を運ぶのはそもそも死刑レベルの重罪だし、教えを破るような馬鹿なことをする者はいない。


 でも僕はどうしても気になるのだ。幼い子供の頃から。いつかいろんな国を渡って、世界をこの目で見るのが叶わぬ自分の夢だった。

 

 誰しもがアルデンを崇拝しているこの世界では、その教えに反する行為、それに準ずる思想を持つ者は異端の者とされ、忌み嫌われるのだ。とある山村では、ある子供がふと他の国に興味を持ち、異端だと判断された瞬間に村人総出で惨殺処刑されたとの噂もある。


 ある日アリヤに、「何か夢はある?」と聞かれたことがあった。僕はその際に口を滑らしてしまい、その時はどんなに軽蔑されるだろうと息を呑んだが、むしろ逆だった。アリヤはその夢を肯定してくれた。私も見てみたいと言った。それから僕の叶わぬ夢は、アリヤとの二人の叶わぬ願いとなったのだ。

 彼女が彼の夢を理解してくれた、彼にとって世界でたった一人の同志となったのだ。




「タク、言い忘れてたがこの世界では国を跨ぐのは超がつくほどの重罪だ。レルとアリヤは分かってるだろうけどな。最悪死刑にもなるし、それ相応の覚悟が必要だ。」

「言い忘れるような事じゃないだろそれ!・・・じゃあバレたら最悪お尋ね者って訳か・・・だが迷っていても仕方ないからな。俺は行くよ。」

「僕とアリヤも覚悟の上です。そうだよね!」

「えぇ!勿論よ!」

「お前ら・・・いい面構えしてんな!いいだろう!俺は口を瞑っておこう!仲間にも俺から伝えておく!」

「伝える時点で早速瞑って無ぇじゃねぇか!」


 それから師匠によると出発する前にタクとの模擬戦を行うらしい。タクが自分の能力を把握していないから、師匠は三日後に行うと言っていたが、いち早く出発したいので無理を言ったところ、タクが明日までには間に合わせてくれるらしく、明日の昼前にテストという名の模擬戦を行い、その次の日にプストルムから出発する事になった。


 解散後、僕はいつもどおり剣術と射撃の特訓に入った。魔神を倒すためには、もっと強くならなくちゃいけないし、魔神がどれほどの強さかは分からないが、今の状態では絶対に奴には敵わないだろう。それに、アルデン様に呼ばれるくらいなのだから、タクも相当な実力者なのだろう。だから強くならなきゃいけない。彼と対等に戦えるように。この先何かあったら、アリヤをこの手で守れるようになるために。

 

皆様、明けましておめでとうございます。

投稿が超スローペースだったり文章の度重なる修正だったりと割とグダグダなこの作品ですが、今年はいろんな方に閲覧していただくために少しずつ頑張っていこうと思います。

まだ序盤すら書き終えていませんが、もしいいなと思っていただけましたら、ブックマーク、いいね等よろしくお願い致します。

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