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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第二章 エボルブ・ブルード
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#40 神殺しの糧その七

PV数2000、ユニーク数1000を突破いたしました。

ご覧いただきありがとうございます!

頑張って少しづつ伸ばしていきたいですね。

 だが、ダリフの刃が、五人を切断することはなかった。


「チィィッ!!!」

「グウッ・・・これがアリンテルド最強の男か・・・!」


 フレイリアを倒した男がダリフと五人組の間に乱入し、壁が崩れるほどの衝撃波が辺りを無差別に襲う。

 二人の攻防はその後も続き、両者とも一歩も引くことなく睨み合い続ける。当然、周りの者は割り入ることはできず、体を動かすことすらままならなかった。


「・・・フローガ、ダリフ・ドマスレットは決して煽るなと忠告したはずだが?」

「も、申し訳ありません・・!クルーシュス様・・・!!」


 フローガと呼ばれた赤髪の男は、先程までの態度が一変して、やけに素直にその男クルーシュスに謝罪した。この一連のやり取りだけで、クルーシュスが先程の五人よりも実力が上だという子が窺える。

 

「テメェ、クルーシュスって言ったか?なぜ城や街を襲う?」

「俺たちの悲願は、神を殺すこと。そして、モラウス・アリンテルドにはその礎となってもらう。」

「ふざけてんのか!?神殺しかなんだか知らねぇが、そんなもんが人を襲う理由になんのか!?」

「あぁ。大いにな。」

「なぜそう言える?」

「それを話せば長くなる。そして、お前がそれを知る必要はない。」

「チッ!話になんねぇな!!」


 クルーシュスの意味不明な発言に痺れを切らしたダリフは、再びクルーシュスに向かい刃を振りかざす。

 ダリフの高速の回転切りを、クルーシュスは難なくバックステップで回避するが、そこから突然クルーシュスへと向かい剣が伸びる。

 剣が伸びるというのは錯覚であり、クルーシュスがダリフの神速の突きを認識するのがコンマ一秒ほど遅れただけの事である。

 クルーシュスは紙一重でその軌道を逸らしたが、ダリフの大剣は突きの途中で突如軌道を変え、横薙ぎに切り替わった。


「チィィィッ・・・!」


 クルーシュスは回避が間に合わず、ダリフの阿修羅によって左腕を切り落とされる事になった。


「さぁ、茶番は終わりだ。言い残すことはあるか?」


 ダリフはオーラを留めることなくクルーシュスに刃を向けてそう言い放つ。

 だが、クルーシュスの表情はこの状況でも歪んでおらず、腕を切られてもなお平常心を保っているようだった。


「俺がこの世界に言い残すことなどない。もっとも、俺はこの程度では死なんがな。」


 クルーシュスの腕の断面からは一切血が漏れていない。そして、その断面から小さな雷がバチバチと弾け、たちまち欠損部位が元通りになった。

 左腕は何事もなかったかのように動いており、握りしめた手をクルーシュスが緩めると、その中では雷が先ほどのようにバチバチ音を鳴らす。


「・・・お前、ひょっとして異世界からやって来たって口か?」

「異世界?何を訳の分からんことを。」

(・・・嘘はついてねぇみてぇだな・・じゃあマジでこれがコイツの本来の力ってわけか。正直負けることは確実にねぇが、今まで戦ってきたやつの中ではかなり上位の方だ・・・だがクルーシュスなんて名前は聞いたことがねぇ。一体何者なんだ・・・?)


 少し探りを入れたダリフだったが、結果は空振り。結局クルーシュスの素性について知ることはできなかった。

 探るのが面倒臭くなったダリフは、思ったことをそのまま聞いてみることにした。


「結局何なんだよテメェらは?近頃噂のカースウォーリアーズか?」

「カースウォーリアーズだと?俺たちをあんな下種の集団と一緒にするな。まぁ、情報収集のために潜入はしたがな。」

「潜入?」


 ダリフは意外な答えに思わず問いを続ける。


「あぁ。しかし、屑共があまりに不快すぎて、上層部と接触する前に、俺と共にアリンテルドに来たやつらは皆殺しにしてしまったので、大した情報は得られんかったがな。お前たちのよく知るカロナールも始末しておいたぞ。ありがたく思うんだな。」

「ほぅ・・アイツをね。ま、あんな奴に思い入れなんてねぇし、それとこれとは違うんでな。お前らを排除することに変わりはねぇ!!!」

「だろうな。お前ら、モラウスを探せ。見つけ次第殺して構わん。」

「「「「「ハッ!!!」」」」」


 先ほど相手していた五人が、城の中へと向かっていく。


「クソ!させるか・・ッチ!!!」

「貴様は行かさん。恨みたければ恨むがいい。その恨みさえも我が糧としてくれよう。」

「さっきから訳の分かんねぇ事ばっかり言いやがってッ!阿修羅ァアアアッ!!『破道』ォォ!!!」

「来るか・・・うわさに聞く『破道』が・・・!?」


 ダリフの雄たけびに、クルーシュスは思わず身構える。この世界の強者で、ダリフの阿修羅『破道』を知らぬものなど一人もいないのだから。


「ウォラァァアア!!!五之型ッ!!『怒り月(ルナティック)()昇斬(アッパー)ァァァ!!!」

「ぬぅぅぅ!!?」


 繰り出されるは、異様に低い姿勢からの切り上げ。

 受け止めることに必死なクルーシュスは、ダリフの思惑通り弾き飛ばされ、共に上空へと昇ってゆく。

 地上で防御結界もなしに阿修羅『破道』を使ってしまうと、周囲に甚大な被害が出る。それが分かっているダリフは、この場における最適解を即座に実行したのだ。


「クッ・・・だが空中で何ができる!?俺がこの程度の高さで死ぬとでも思ったか!?」

「このダリフ・ドマスレットを舐めんなよ。阿修羅『破道』四之型・・・」

「な、なんだと!?」

「『新たなる月(ルナティック)()暴気流(ストリーム)ゥゥゥ!!!」


 ダリフは文字通り空を蹴り、クルーシュスへ暴風のような連撃を与える。クルーシュスは四方八方からの斬撃に対応しきれず、そのまま押し切られて斬られるがままの状態となる。


(馬鹿な・・!?捉えきれん・・・なんというスピード!?)


 とうとうクルーシュスの表情が完全に歪む。夜だから捉えられなくなるほど目は悪くないクルーシュスだが、ダリフの姿は全く見えず、ただ自分が切り刻まれてゆくのみである。

 その剣技まさに新月。もはやこの空中で、クルーシュスは成すすべがなかった。

 そしてそれからどれほどの時間が過ぎただろうか。永遠にも感じる時間切り刻まれたクルーシュスは、全身から雷を放出し、先と同じように再生を試みる。

 何とか死は免れたものの、再生するのに必要な魔力を使い果たしてしまい、左腕のみ再生できずにいた。

 だがそれも束の間であった。


「・・・・・疑似長期魔力蓄積(アキュームレイト)。」


 クルーシュスは枯渇した魔力炉に再びエネルギーを送り込む。そして開始三秒後、消えていた雷が音と光を取り戻し、左腕も再生させる。


「クソッたれ・・!疑似長期魔力蓄積(アキュームレイト)の質が相当高ぇようだな・・・」

「この世界で戦うには必須の技術だ。それを磨くのは当然の事であろう。だが先ほどはかなり危なかった。こうして俺が生存出来ていることが奇跡と思えるほど。正直、今の俺では貴様には勝てそうにない。」

「ほう?だったらどうする?」

「こうさせてもらう。『稲妻限界加速(アクセラレーション)』ッ!!!」

「な・・おいコラ待ちやがれ!!!」


 クルーシュスは自身の最高速度でダリフという障壁を突破し、ヴォルト城内部へと駆け抜ける。

 思わぬクルーシュスの行動に意表を突かれたダリフは、一瞬遅れてクルーシュスを全力で追いかけた。

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