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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第一章 異世界転移・獣人殲滅戦線
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#3 急展開とダリフの弟子

「ダリフ小父様!あと一年、二年とはどういう事なのですか!!」


 アリヤはダリフに怒鳴るように質問した。無理もない。嘘なんてつかない信頼できる人間に、急にあと一年で世界が滅びるなんて言われたら、普通の人間なら数秒何を言っているのか分からなくなるだろう。


「最近行われた会議といえば、二週間ほど前に行われたアリンテルドの大ギルド会議の事でしょう!?なんでそんな重要な事を黙っておられたのですか!」

「いやぁ、国の上層部から口止めされていたんだがな・・うっかり口が滑っちまった・・・。」


 こちらとしては滑らせてくれてありがたかった。なぜならついさっきまで自分を強化しながらこの世界の全てを攻略するとかいういかにもゲーマーのようなプランを今の自分は考えていたのだ。それを実行していては到底一年などで魔神は倒せないだろう。


「なんか大臣の野郎は「魔神は我らが最高神アルデン様が直々に鉄槌を下されるのじゃあ!」とか言うだけで、そのほかについては何も教えてくれなかったんだ。そのうえこの事をバラしたら打ち首って言われたんだぜ?そんな重要事項なのかよ?」

「というかダリフさん。バラしちゃったのにかなり冷静ですね?なんでです?」

「そりゃあ、上層部のジジイ共(あんなヤツら)がかき集める戦力程度に俺の首なんて()れる分けねぇからな!ハッハッハッハッハ!」


 つい聞いてしまったが流石この国のトップギルドのリーダー、相当な自信だ。てか今の話が本当なら国家レベルの軍でかかってもこのダリフには敵わないということになる。どんだけ強いのこの人・・・。

 しかしそれだけでそこまで重罪になるのは確かにおかしい。何か裏があると思って間違いないだろう。


 そんな話も一区切りついたところで、俺たちはすっかり冷めてしまった昼飯を胃に収めて酒場を後にした。


「よし。そうと決まればうかうかしてられないな。世界滅ぼされたら俺も元の世界に帰れなくなるし、異世界であったばかりとはい、え周りの奴らに死なれたら後味悪いからな。」

「ちょっと待って、あなた一人で行くつもり?」

「え?まぁ転移させられたの俺だけっぽいしなぁ・・・無責任に誰かを巻き込むのもちょっとなぁ・・・。」

「私も行く。いえ、連れて行って!」

「はぁ!?」


 おいおい何を言い出すかと思えば、即答で何言っちゃってんのこの子!?勿論魔法の使えない俺にとっては心強い助っ人だが、今日会ったばかりの女の子をいきなり魔神討伐メンバーに加えるのはいかがなものか。


「世界の命運がかかっているのなら尚更指くわえてあなたを待ってるわけにもいかないし、腕にも多少なりとも自信はあるわ。それに私だって一端の冒険者。迷う理由なんてないわ!」


 アリヤは生半可な冗談なんかで言っているわけではないだろうが、相手が相手である。正直一人じゃ苦しい部分もあるし、仲間が一人いるだけでも相当に心強い。しかし昨日会ったばかりの男の旅に迷わず着いていきたいと思うのは年頃の女の子としてはいったいどうなのか。


「・・・いや・・アリヤさん?もうちょっとよく考えてみた方が」

「連れて行きなさい!」

「あ・・・はい。」


 あぁ、とうとう気圧されてしまった・・・そんなこんなで急展開過ぎるが、アリヤが俺の魔神討伐隊(仮称)に加わることとなった・・・と、言いたいところだが・・・まだ彼女にあって間もない、いや間もなさ過ぎる俺にはまだ同行してもらう前に確かめておきたい事があった。それは・・・


「昨日短い間共闘しただけだから、俺はアリヤの実力をよく知らない。だから失礼ながらテストをやらせていただきたい!」


 テストなどと偉そうな事を言ったが、これから彼女は俺の八つ当た……魔神討伐に巻き込まれ、命を失う可能性があるという事だ。覚悟は十二分に伝わったが、魔神討伐はこの世界の命運を左右するいわばグランドクエスト。それに見合った実力が無ければ連れて行くことは出来ない。


(まぁ俺も魔神がどんだけ強いのか分かんないんだけど・・・何なら俺自身の実力も分かっていないんだけどね・・・・・)


「分かったわ・・・。臨むところよ!」

「内容は俺との模擬戦。武器や魔法の使用は自由!というわけで、今から被害が出ないような場所に・・・」

「ちょっと待ってくれ。」


 俺がアリヤに概要を説明しているところに、突然ダリフが割って入ってきた。


「タク、テストとやら・・・もう一枠追加だ。」

「え?まさかダリフさんまで・・・!?」

「いや、俺は立場上この街を離れるわけにはいかない。その代わりにそのテストを受けさせたい奴がいるんだ。」


 ダリフの言葉に、俺はなんとなく察しがついた。おそらくはダリフやアリヤレベル。この街屈指の実力者であろうその人物は、


「・・・例のお弟子さんですね?」

「あぁ。名前はレリルド・シーバレード。歳はアリヤの一つ上で17歳。魔法であらゆる武器を生み出す特殊魔法士、俺の唯一の弟子だ。」


 文面から察するに、剣や槍などを自らの手で作成して戦うと考えて間違いないだろう。そして昨日ダリフは珍しい武器が作れると言っていた。高度な魔法が組み込まれている武器なのか、はたまた想像のつかないようなものなのだろうか・・・。


「・・・はい。わかりました。」


 彼の提案に、俺は考える事もなく了承した。


「ところでタク。お前二人をテストするとか言ってるが大丈夫なのか?お前の力は昨日ちょっと見ただけだからまだよく分からんが、アリヤもレルもこの街では俺に次ぐまでとはいかないが、アリンテルドの中でもなかなかの強者(つわもの)だぞ?ヘタに舐めてかかると痛い目を見るのはお前の方だと思うんだが?」


 どうしても自分が最強だと言い張る強情さには一周回って尊敬するが、確かにダリフの言う通りだ。まだこっちもアリヤの底力は把握していない。レリルドという弟子に至ってはそもそも会ってすらいないのだ。


「まぁ偉そうにテストとは言ってますけど、端的にいえばただの模擬戦です。僕もまだ自分の能力を把握しきれていないので。」

「なるほど。だが自分の実力を把握してないんじゃあ尚更無謀だ。試合の概要は俺に決めさせてもらう。行うのは三日後!タクの言っていた通り武器や魔法の使用は自由!場所はプストルム郊外の平原地帯で行う!二人とも異論はないな?」

「「はい!」」


 俺とアリヤは揃って了承し、ここでひとまず急展開となった酒場での昼食は終わった。


「よし!じゃあ俺はレルのところに行くが、お前らも来るか?」

「えぇ。特に用事もありませんし。」

「レリルドの顔や実力も知っておきたいしな。」


 俺と同い年の強者。一体どんな奴なんだろうか・・・ダリフみたいに大柄な筋肉男だったらどうしよう・・・戦う以前に仲良くできるのだろうか?てかアリヤ歳下だったんだ・・・。しっかりしてるからてっきり同い年か少し年上くらいだと思ってたのに。

 とか思いながらダリフについて行くがままになっていると、たどり着いたのはプストルムの離れにある訓練場だった。


「今日は訓練が休みだから普通人はいないが・・・レルは真面目だからなぁ。毎日ここにいるんだよ。」

「レルは少し頑張り過ぎよ。全く・・・。」


 ダリフの言葉に対して、アリヤがどこか心配そうな顔で反応した。


 中に入って少しすると広い空間が目の前に広がり、丸太が辺りに刺さっていた。多分練習相手がいない時などにあれを敵と見据えて訓練するのだろう。乱雑に刺さっているゾーンの前に一人の青年が立っていた。


 身長も体格も自分と同じくらい。茶色の髪にコバルトブルーの瞳。どこか幼げな顔で今もなお集中しているようだった。


「タク、よく見ておけよ。」


「・・・・・ッ!!!」

「うぉっ・・・!」


 瞬間、彼の右手が光り、直後には手中に片手剣が収まっていた。


「はあああっ!!!!」


 その刹那、彼が見せたのは神速と言えるほどの剣戟。周りの丸太が次々と切り刻まれてゆく。近くの丸太をあらかた斬り終えた彼の手から片手剣が消失した。おそらく彼が自らの意思で消したのだろう。

 丸太は彼に斬られた直後緑色の光とともに消滅し、更に地面からこれまた緑色の魔法陣が浮き出てきた。

 魔法陣からはまた新たに丸太がランダムに姿を現して訓練場内に配置された。実によくできた訓練場である。そして彼は丸太が出現したタイミングを見計らったかのように止まることなく次の武器を生成した。

 ()()武器を見た俺は、一瞬で戦慄した。


「嘘・・・だろ・・・・・。」


 間違いない。あれがダリフの言っていた珍しい武器だろう。普通の武器ではない。ましてや魔法の剣や槍でもない。小さく、黒く、そして重々しい。この世界にあるとは考えてもいない。いや、考えすらもしなかったその武器は現代武器の象徴。ハンドガンだった。

 レリルドは右腕を伸ばしてその拳銃を構え、なんと走りながら丸太を撃ってのけた。流石に全弾命中とまではいかなかったが、それでも中々の命中精度だ。

 通常の拳銃より魔法で作った方が威力が高いのか、丸太は貫通する前に粉々になってしまった。

 タクは銃についてはあまり詳しくないので、実際の威力がどんなものなのかよく分からないが、この世界でもかなり強い武器であることは間違いないだろう。

 一通り丸太がなくなったので彼の動きは止まった。流石に急に動いて疲れたのだろう。レリルドがゆっくり深呼吸をしていると、


「おーいレル!ちょっといいか?」

「あ!師匠!それにアリヤも・・・あれ?君は?」

「あ・・相澤拓という者だ・・・。タクと呼んでくれ・・・。」

「よろしく、タク。で、なんでそんなにげんなりしてるんだい?」

「そりゃそうなるだろ・・・。同い年のやつが急に恐ろしいほどの剣裁き披露した上に銃まで撃ちやがったんだぜ?」


 と俺が答えると俺を除いた三人がびっくりしたような顔をする。


「え!分かるの⁉︎」

「え⁉︎あなたあれ知ってるの⁉︎」

「やっぱ不思議な奴だなぁタクは。異世界って広いんだなぁ。」


 などと二人に関心されているとレリルドが嬉しそうに話し出した。


「いい銃だろ?これはベレッタM9っていってね!クセの少ないショートリコイルのハンドガンで十五発打つことができるんだ!あとそれから・・・」

「待て待て・・・急に言われても分からん・・・・・。」


 その後、レリルドによるベレッタM9とやらの説明は1時間ほど続いた・・・・・。

なぜこの世界に銃があるのかは次回以降のお話で………。


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