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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第二章 エボルブ・ブルード
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#34 神殺しの糧その一

 次の日、朝早くからライルブームを出た俺は、アリヤに教えてもらった目的地へと向かう。


「よっと、ここがそうか。」


 山のふもとには確かに穴が開いており、奥を覗くと微かだが黄色い輝きを放つ者があることが窺える。今日の目的地、雷岩魔の洞窟で間違いはなさそうだ。アリヤの言っていたことが本当なのならば、魔石を試すのにはもってこいの場所のはずである。


「とりあえず、奥に行ってみるか。」


 俺は歩いて洞窟の奥へとどんどん進んでいく。思い返せば、こうして一人で行動するのも随分と久しぶりに感じる。転移させられる前は一人の事が多かったし、この世界では新鮮なことばかりだ。少し慣れて、この状況を楽しんでいる節さえある。だが、現状の目的は元の世界に戻ること。おそらく魔神を倒せばそれで終わりなはずだ。ならばそれまで、この世界を思う存分楽しむのも悪くないかもしれない。

 そんなことを考えていると、目の前に三体ほどの魔物が現れる。


「うわっ!石が歩いてる!」


 顔や耳などはなく、体長は一メートル程で、見た目はただの岩の塊。それに四本の石の足が生えたような姿。体の所々で黄色い魔石が光っており、そこからパチパチと電気のようなものが弾けている。


「よし、試してみるとしますか!」


 俺は『アイテムストレージ』を漁り、同じく雷属性の魔石を取り出す。そしてそれを『身体強化』を用いて自身の顎で嚙み砕く。


 パキッ


 噛んだ瞬間魔石はカーンという少し幻想的な雰囲気の音と共に跡形もなく消滅した。だが次の瞬間。


「あががががっががががっ!!!!?」


 うん。現実とはうまくいかないものである。雷を纏って動きが格段に速くなったりするのを少し期待したのだが、全身が痺れて終了という結果で終わってしまった。

 しかも、体が硬直してしまい、その場で痙攣し続けることになった俺は三体の岩に容赦なく攻撃される。心なしかこの岩どもに「何やってんだコイツ」と思われた気がしてならない。


「ガガッ・・・だーークッソ!オラァ!!」


 俺は硬直が解けた瞬間に『身体強化』を発動させ、苛立ちを込めて襲ってきた岩の魔物を粉々に粉砕する。軽い八つ当たりである。


「はあっ・・うーん、思ったようにはいかなかったか・・・てことは炎の方は燃えて終わりだな多分・・・でもせっかく朝から来たしなぁ・・どうにかして動けねぇかやってみるか・・・」


 少しテンションが下がってしまったが、倒した岩から魔石を取り出し、さらに奥へと進む。

 途中現れる岩を倒して魔石を集めながら、なんとなくそれを噛み砕く。それの繰り返しをかなりの数続けていた。始めは痙攣して動けなくなって終了だったが、慣れとは恐ろしいもので、少しずつ体動かすことができるようになってきた。途中で休憩した際に『進化之石板(アドバン・スレート)』を確認すると、新しいスキル『雷撃耐性』というものを獲得していた。


『雷撃耐性』―――最大レべル99。現在レベル2。雷属性、麻痺効果を持つ魔法への抵抗力が上昇。


「百個は確実に噛み砕いたんだが・・それでもレベル2か・・・しかも確実に正攻法じゃないよなこの獲得方法・・・」


 しかし耐性が身につくと分かったのならば、やることは一つである。


「ウオラアァァァァァァ!!!!!」 


 俺は洞窟内を走り回り、片っ端から洞窟にある魔石という魔石を全て噛み砕いていく。魔石を蓄える魔物も、『身体強化』を発動させてその全てを一発で砕く。

 自分でも頭がおかしいと思うような行動だが、少しでも自信を強化することができるのならば構うまいと一心不乱に噛み続ける。それを約十時間。なかなかに狂っているが、俺の脳がこれをやりこみ要素と判断してしまった以上、もう止まることはない。現実でも体を張る。ゲーマーとは常に命がけなのだ。


 パキッ・・ペキッ・・パキッ・・・フゥォン。


「ん?」

 

 もはや静電気並みの威力も感じなくなった頃、『進化之石板(アドバン・スレート)』の表示に変化が起こる。


 『雷撃耐性』から『雷撃無効』へと進化可能です。

 スキルポイントを 1000 使用し、該当スキルを進化させますか? YES/NO


 『雷撃無効』―――雷属性、麻痺効果を持つ魔法を無効化する。


「へぇ・・・魔石食ってただけで!?相当強くないか!?」


 雷系の魔法を使ってる奴はまだ見たことはないが(初日のアックス・オブ・サンダーとか叫んでた人なんて知らない。)、それらの攻撃が一切効かなくなるということだ。岩の魔物を相当数倒したことでスキルポイントも増えていたので、俺は達成感に浸りながら迷わずYESを押した。しかし・・・


 進化できませんでした。


「・・・・・は?」


 え?できないとかあんの?ポイント払ったんですけど!?

 あまりにも予想だにしていない急な表示により、怒りよりも驚愕が勝ってしまった。だが『進化之石板(アドバン・スレート)』はそんなことお構いなしに新しい表示を出す。


 特定の条件をクリアしていたので、分岐進化先を『雷撃無効』から『魔晶闘波(ストーン・アーツ)【雷】』へと変更します。


「ストーン・アーツ?・・・って・・な、なんか増えてる・・・」


 『魔晶闘波(ストーン・アーツ)【雷】』の効果の説明欄にはこのようにあった。

 ・雷属性、麻痺効果を持つ魔法を無効化する。

 ・自分以外の生物の感情、思考の脳波を感じ取ることができる。

 ・肉体を流れる魔力を失い無属性となった魔石のエネルギーの残滓を永久に増幅させ、闘気へと変換する。


「あのジジイがくれたスキルよりチートっぽいんだが・・・無限に増幅するエネルギーだと・・?闘気っていうのは・・えーと・・・」


 確か武器屋のガスターも言っていたような気もする。『身体強化』を発動させると出てくるものなのだろうか?帰ったらダリフ辺りにでも聞いてみよう。


「というか、特定の条件てのは何だったんだ?えーと・・あ、これか。なになに・・・半日以内に致死量の千倍以上の雷属性の魔石のエネルギーを体内に取り込む・・・千倍!?てか致死量あんのかよ!?」


 タクは気付いていなかったが、実際『自己再生』が無ければとっくに死ぬレベルの量の魔石を『雷撃耐性』レベル2までのお試し程度で取り込んでいたのだ。それを十時間。取得方法は正攻法だったが、常人には絶対に取得不可能なスキルと言っていいだろう。

 ちなみに、この世界の人間は魔石のエネルギーを取り込めないので、そもそも取得は不可能なのである。


「ちょっと試してみるか。もっと進めば、ここらのより強いやつもいるだろ。」


 この雷岩魔の洞窟はかなり広いが、相当早い時間に潜ったので、時間はまだまだある。新たなスキルを試すために、俺は更に奥へと進む。

よく分かる『魔晶闘波【雷】』の分岐進化条件

その一。スキル『雷撃耐性』のレベルが最大であること。

その二。半日以内に致死量の千倍以上の雷属性の魔石のエネルギーを体内に取り込む。取り込み方は、拳で割る、噛み砕く、踏み砕く。とにかく自身で魔石を破壊してそのエネルギーを一時的に纏わなければならない。

その三。規定量の闘気を生成、保有、行使できること。タクはスキル『身体強化』によりそれが可能なため、条件を知らない間にクリアしていた。


ちなみに、『魔晶闘波』は他の属性の魔石でも獲得できるとかできないとか・・・

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