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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第二章 エボルブ・ブルード
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#33 隠れた名店と魔石の使い道

「さて・・どうしようかな?」


 アリヤ、タクと別れた後、レリルドは一人立ち止まって何をそろえるべきかを考える。

 レリルドは周りから特殊魔法士と呼ばれているだけおり、その元が彼の魔法『武器生成』というものだ。

 剣や槍、盾、銃までもを魔力を利用して生成することができる。魔力炉に余裕があるのならば出しておける時間に制限はなく、使用者が手放している武器に他者が触れると消滅し、空気中に存在する魔力へと還元される。

 更に、二つ目、三つ目の武器を生成する際、生成する物を作るために必要な魔力が足りない場合は、前に生成した武器を魔力に戻し、足りない魔力を補う必要がある。


「僕の魔力炉はそこまで大きなものではないから、生成できるものは基本的に一つだけだし・・・どうにかして魔力炉を大きくできないかな?」


 基本的にこの世界の人間の体内に存在する魔力を貯めることのできる器官、通称魔力炉は生まれ持った容量が最大値であり、そこから増える事はない。ひょんなことから急激に増幅した者がいたという噂もあるが、それも望み薄だろう。

 そんなこんなで悩んでいると、レリルドはあることを思い出した。


「そうだ!装備!・・スキル付与(エンチャント)があった!」


 思いついたのは、この後アリヤが購入した鎧のようなスキル付与(エンチャント)付きの装備。

 何もスキル付与(エンチャント)出来るのは人間だけではない。それは武器にだって防具にだって、あらゆるものに付与できるのだ。

 付与できると言っても、それはその武装の性能にもよる。性能が高ければ高いほどより多くの、そしてランクの高いスキルを付与でき、その反対では最悪の場合一つも付与できない、ということもある。

 しかしスキル付与(エンチャント)付きの防具はあまりにも希少価値が高く、その値段は普通の防具屋のどんな最高値の装備と比べても桁が同じことはない。

 そのため、多くの冒険者がそれに憧れてはいるものの、心のどこかで諦めている者が大半を占める。

 現在のレリルドもそのうちの一人だったため、その存在すら頭から抜けていた。


「き、緊張するけど・・探してみるか・・・!」




「たしか、こっちだったかな・・・」


 レリルドは進むのは、大通りを離れた細い路地。向かっているのは、以前ダリフに連れられて行ったことのある小さな装備販売店。少し胡散臭いが、売っている装備の質や性能は大通りのどの店をも遥かに凌駕する。入り組んだ道を進みに進み、店の小さなドアの前までたどり着いたレリルドは、そのドアを軽く三回ノックする。


「・・・誰だい?」


 店の中から店主の声が聞こえてくる。


「あ、あの・・れ、レリルド・シーバレードです!装備を購入したくて伺いました!」

「レリルド・・・あぁ。アイツの弟子か。入んな。ドアは開いてるよ。」


 恐る恐るドアを開くと、以前一度見た小さな部屋。床は木材、壁はレンガでできている。辺りに広がる明かりの光源は蝋燭で、少し暗い印象を与えられる。一応カウンターのようなものはあり、何やらむすっとした表情でそこに座るのは一人の老人。ダリフ御用達のここの店主。態度はあれだが、腕は一級品だ。


「装備が欲しいって言ってたな。金はあんのかい?知っての通り、うちは相当高いよ?」

「は、はい。それなりに・・・」

「ふぅん・・まぁいい。金が用意できんのなら問題はねぇ。で、どんなもんがお望みだい?」

「自分の魔力炉の他に魔力を貯めておけるようなものが欲しいんですけど・・そういったものってありますか・・・?」


 恐る恐る聞いてみると、店主は少し無言で考えた後告げる。


「・・・それなら、ねぇこともない・・・ちょっと待ってな。」


 店主は店の奥へと向かい、約十分後に戻ってきた。


「ほらよ、結構奥に眠ってたが、お前さんが言ってたもんだ。」

「これが・・・」


 店主が出してきたのは、茶色のロングコート。少し古びているが、素材の革は特上クラスの素材でできており、サイズもレリルドにぴったりである。


「そのコートのスキル付与(エンチャント)の内容は、空気中の魔力。敵の魔法。あらゆるもんを己の魔力に変えちまう『魔力吸収(マジック・ドレイン)』。それを貯めておける『魔力貯蔵(マジック・ストレージ)』。その二つの発動条件は、コートに自身の魔力を流すことだ。簡単だろ?」

「凄い・・このコートにそんな力が・・・!」

「気に入るのは構わんが、着ていくなら金を置いてから行きな。」


 店主はレリルドがそれを購入するのが分かっているような口ぶりで投げかける。そしてレリルドの方も何の迷いもなくそれを購入した。店にいた時間は約十五分。ほぼ即決だった。他にも該当する商品はいくつかあったが、レリルドはほぼ直感でこれにしたのだ。


 高性能な装備により、自身の弱点を一つ克服したレリルドは、ダリフとの残り数少ない訓練を内心楽しみに思いながら、大通りへと戻ってきた。

 その後、軽量のボディアーマーと、俊敏性関連のスキル付与(エンチャント)が施されたブーツを追加で購入し、集合場所の噴水へと向かった。

 着いてもまだ誰もいなかったが、数十分後に全ての装備が一新されたタクがやってきた。


「おーっすレル!なんか雰囲気変わった?」

「あ、タク!装備が変わったからかな?それにしても、タクも随分と様になってるね。」

「ありがとな!んで、アリヤはまだか?」

「まだ来てないね。まぁ時間は指定してなかったし、気長に待ってようよ。」

「おう。」


 そうしてお互い購入した者について話していると、アリヤも無事に噴水までやって来た。身に着けている鎧とマントは見るからに高級品で、こちらもスキル付与(エンチャント)付きの装備であることは明白だった。

 そして、上機嫌で笑顔のアリヤを見たレリルドの顔が少し赤くなり、心拍数もどんどん上昇する。本人はなんとか隠すのに精いっぱいだった。


「お待たせ!結構待たせちゃったかしら?」

「ぜ、全然問題ないよ!」

「それにしても、凄い量買ってるなぁ。まぁ俺に関しては人の事言えないんだけどさ。何買ったんだ?」

「剣のメンテナンス用の道具とかその他いろいろってところかしら。もしよければタクのストレージに入れておいてほしいんだけど。構わないかしら?」

「あぁ。容量も相当余ってるようだし、別にいいぞ。」


 そうしてアリヤが購入した商品をタクはどんどん『進化之石板(アドバン・スレート)』の『アイテムストレージ』へと放り込む。


「お、そういえば、面白いもん買ったんだよ。」

「面白いもの?」

「あぁ。これだ。」


 そう言って、タクがそのまま『アイテムストレージ』から取り出したものは、少し光る石。


「これは・・・魔石かい?」

「そう。路地裏で見つけたんだ。とりあえず炎属性のやつと雷属性のやつを買ってみた。」


 この世界における魔石とは、そこら辺の石よりも多少レアな程度の物。特定の属性の力を蓄えた石で、()()()()()()()()()武器で砕いて、その力を武器に一時的に纏わせることができる。

 理論上は魔力を持たなければ何にでも纏わせることができるが、人間の場合、自身の中にある魔力と反発してしまい、魔石の中の力は消滅してしまう。

 だが、それはあくまで()()()()()人間の話なのである。


「なるほど・・・タクは魔力を一切持たないから、もしかしたら・・・」

「そう。上手くいけば、獣人と戦った時、アリヤに手伝ってもらって放った『穿焔(ウガチホムラ)』なんかも、単独で打てるようになるんじゃないかって。てなわけで明日どこかで試してみたいんだが・・二人も一緒にどうだ?」

「ごめんタク。明日は師匠と前にも言ってた新技を開発しようと思ってるんだ。」

「私も。ごめんねタク。でも代わりにそれを試すのに良い場所を教えてあげる。」

「良い場所?」


 タクがそう聞き返すと、アリヤがタクに説明を始める。


「この街を出てすぐの山のふもと辺りに、雷岩魔の洞窟っていう所があるの。体が岩でできてる魔物がたくさんいて、そいつらは魔石を自身のエネルギーとしているの。辺りにも魔石はたくさん転がっているから、雷属性限定にはなるけど、思う存分試せると思うわ。」

「よし分かった。明日行ってみる。ありがとうアリヤ。」

「タクなら心配はいらないだろうけど、一応難易度の高い場所だから気を付けてね。」


 そうして全員が装備を揃え、予定も決定したところで、三人は明日に備えるためにヴォルト城へと戻った。

ちなみにレルが買ったコートは、アリヤの鎧の倍以上の値段がするとか・・・

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