#2 冒険者の少女とリミット
とりあえず武装集団に加勢し、そこにいた全ての狼を倒したその晩、俺の近くの始まりの街と呼称していたプストルムの街でのトップギルド『アシュラ』(俺が転移してきたアリンテルド共和国とかいう国でもトップらしいが)のリーダーをやっているという大剣使い、ダリフ・ドマスレットの家に泊まらせていただいた(というか全くの初対面である俺をよく泊める気になってくれたなぁ。よほど器が広いんだろうなぁ。)のだが、未だに納得いかないことがたくさんある。というかそのたくさん全部ひっくるめて一つにしてもいい。
「あの・・・ドマスレットさん・・お聞きしたい事がございまして・・・。」
「ダリフで構わないぞ!はっはっはっは!」
気持ちいいくらいに明るく返してくれるので、こちらもこのまま他愛のない話をしたい所だがそういう訳にもいかない。
「ではダリフさん・・・率直に聞きます。・・・・・この世界って魔法あるんですか?」
「え?あるだろ?」
なんとこれまた気持ちいいほどに一瞬で答えが返ってきた。
魔法がある。ということはあのクソジジイが言ってたことはやっぱ違くて、今は普通にあると・・・。てかあいつ自分で転生案内人とか名乗ってたけど俺死んでねぇから転生じゃないじゃん。転移じゃん。つくづく適当な野郎だなぁあのヤローも…。
「なぁにブツブツ言ってんだタク?というか魔法あるかって言われてもなぁ・・・。普通の奴なら5歳くらいから魔力を感じる練習をするくらいだからなぁ。お前この世界と別の世界から来た奴なのかぁ?」
「はい。そうなんですよ。」
「え⁉︎マジ⁉︎俺冗談で言ったのに⁉︎」
この人は明るすぎて本当に言ってるのか嘘で言ってるのかさっぱり解らない……。まぁ知られたところでデメリットなんて無いから、俺は異世界転移させられた経緯をダリフに話した。
「・・・なぁタク・・・・・。アルデンってのは・・・あのアルデン様か・・・?」
「・・・あの?」
するとダリフがアルデンのことを色々話してくれた。
まず、この世界ではあのクソジジイは世界を創った崇めるべき最高神なのだと言う事・・・何ならこの世界の人間ほぼ全員があいつを信仰しているというのだ。
「あのヤロー創ったのか統括してるのかはっきりさせろよな・・・。」
とボソッと言うと、
「おいおい・・・。アルデン様をあのヤロー呼ばわりかよ・・・。後、その場合創った後継続して統括していると捉えた方が正しいんじゃないのか・・・・・?」
「あ。なるほど。」
完全に呆れているダリフのツッコミに思わず納得してしまったところでとりあえず今日のアルデンに関する話はひとまず終了した。
「とりあえず、今日は疲れただろ?明日は一日中俺の暇つb・・・プストルムの街を案内してやるからな!覚悟しとけよ〜!」
年甲斐にもなくかなりウキウキしている・・・。てか今暇つぶしって言ったよね?ギルドの仕事はどうすr
「その話はよそう。」
「真顔で何言ってるんですか。あと人の心読まないでください。」
まだ何も声に出していないのにガチトーンで牽制されてしまった。どんだけ仕事したくないんだこの人。
「お前に合わせたい奴がいるんだよ。アリヤにはもうあったよな?」
「はい。さっき少し話しました。」
完全にコミュ障発動したけど・・・。
「アイツは俺の娘同然だからな!仲良くしてやってくれ!」
アリヤとはダリフと共に前線で戦っていたロングソード使いの少女の事だ。確か戦闘の際は炎を剣に纏わせて戦っていたはずだ。
「あと俺にはお前と同い年くらいの弟子がいてな、とてつもなく珍しい武器を魔法で作れるんだ!早く合わせてぇな!」
そっちの弟子のことはよく分からないが、珍しい武器と言うのが気になる。ファンタジーの世界だから炎の弓とかかな?それとも氷の刀とかかな?などと妄想が膨らんでとても気になってきたが、明日のお楽しみにとっておくことにしよう。
急にこの世界に送り込まれて二日目。早速ダリフは街を案内してくれた。
流石のファンタジー世界。武器屋に防具屋、薬屋やクエストを受けられる酒場などもあり、ぶっちゃけめちゃくちゃテンションが上がった。しかしまだこの世界の金を持っていないので、当分はダリフの家に居候しながらクエストを受けて軍資金を貯めることになりそうだ。彼には申し訳ないが。
そうして街中を歩いていると、昨日見たフクシアピンク色の髪の少女の姿があった。
「あら、ダリフ小父様。それとあなたは・・・。確か昨日の・・・。」
「ど・・どうも、相澤拓と申します・・・。」
「おっと失礼しました!では私も改めて・・・ソロで冒険者をやっております、アリヤ・ノバルファーマと申します。タク、よろしくね。」
「よ、よろしく・・・。」
よく挨拶できた。偉いぞ俺。
当然のように女子となんて会話したことが無かったのでどうも心配だったが、ゲームのキャラクターだと思えば意外と大丈夫だった。とてつもなく相手に失礼だが・・・。
「まぁこんな所で立ち話もなんだし、近くの酒場で食事でもどうですか?丁度お昼時ですし。」
「おぅ、そうだな。タクも来な!全員俺の奢りだ!」
その後アリヤにも自分の経緯を話したりして彼女ともすぐに打ち解け、この世界のクエストなどの話を聞くことができた。
「ふーん。じゃあクエストには主に収集クエスト、討伐クエストの二つがあって、たまに昨日みたいな緊急クエストがあるって訳か。」
「そうそう。ていうかあなたほんとに何にも知らないのね・・・。そもそも異世界転移してきた人だなんて初めて聞いたわよ。」
「やっぱ珍しいんだなぁ。なんなら魔法も一切使えないもんなぁ。」
「「え?」」
「あれ?言ってなかったっけ?」
急に2人が立ち上がるのでちょっと戸惑ってしまった。
「ていうかダリフさんには話したと思いますけど?」
「・・・お前からは体術に関するヤバいスキルを貰ったとしか聞いてないんだが…。ん?あ。だから魔法あるか聞いてきたのか。」
「いやそれくらい把握してくださいよ・・・。」
「わかるかそんなもん。」
まぁ確かにそれなら自分の説明不足は否めないな…?と思っていたら、アリヤがふとこんな質問をしてきた。
「そういえばタク。あなた不本意に転移させられたみたいだけど、これからどうするの?」
「確かに。アルデン様に呼び出されたくらいなんだからなぁ。ずっと俺の家で暮らすわけでもないんだろ?」
「うーん・・・とりあえずクエスト受けて軍資金貯めてから、」
「ふむふむ。」
「魔神ぶっ倒して、」
「……え?」
「アルデンのクソジジイをぶん殴る。」
「「「「「・・・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!?????」」」」」
なぜかその酒場にいたダリフ以外人達全員が発狂した。全員に聞かれるほどでかい声でしゃべってたわけでもないのに。やっぱ俺珍しいからこっそり話聞いてたとか?とか思ってたら、
「・・・・・あ。」
そういえばアイツこの世界じゃ崇められてるんだった。話を急に飛躍させ過ぎた・・・。
「アンタ自分で何言ってんのか分かってんの⁉︎最高神様敵に回そうとしてんのよ⁉︎」
「別に殺すわけじゃないし・・・それにマジで急に転移させられたんだから今のところ恨みしかねえぞ?」
「そうだとしても神様に太刀打ちできるわけないでしょう⁉︎」
「まぁそこは気合いでなんとか。」
「気合いって・・・あなたねぇ・・・・・。」
なんかすごく呆れられた気がする。これも異世界ものの定めか・・・。などと完全に読者目線で納得していると、
「しかし魔神か・・アイツがもうすぐ暴れるらしいからな・・・。俺もうかうかしてられんな。」
「・・・え?・・小父様・・どういう事です・・・?」
さっきまで俺に突っ掛かってきたアリヤの意識がダリフの方へ向く。
「ん?ちょっと前に首都の方での会議で聞いたんだがな?あと一、二年内に今まで大人しくしてた魔神が、溜め込んだエネルギーを開放して暴走するって話だ。」
「・・・へ?一、二年?」
「・・・・・嘘・・・でしょ・・・。」
急なダリフによるカミングアウトで酒場の全てが静寂に包まれた。
一話に登場したフレイムスラッシュとか言ってた人はアリヤではありません。今後登場するかも・・・?
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