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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第四章 怪盗は黒き骸骨と共に
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#191 月光下の決戦その二十一

「まず、お前の魂を奪うその魔法・・・半径二十五メートルの範囲にいる人間を対象としたそれ。魔法なんだから、それを発動するのに必要なのはもちろん魔力だ。そして、人の命を手を叩くだけで奪えるとかいう意味の分からん魔法・・・なんかしらの代償がある。が、お前はそれを使った後でもけろっとしてた・・・あの夜にな」


「・・・・・・・」


「つまりお前は、その代償を対象の人間に肩代わりさせて魔法を使ってる・、・・そうだろ?まぁその代償っていうのが魂なのか魔力なのかは分からんが・・・魂を”抜く”ではなく”奪う”と言ってる辺り、多分魔力の方だ。こんな周りに誰もいないような・・・ましてや魔力なんか一切持っちゃいない俺しかいないこんなところで、お前が魂を奪うなんて真似、出来っこないんだよ・・・・・!」


 俺の推理を、シムビコートはただ黙って聞いていた。肯定もせず、否定もせず・・・そして奴の口が開く前に、奴の体が勝手に動き始める


「モォォォォッ!!シネ!!シネェェェェェ!!!!!」


「癇癪起こすなよ・・!怪盗はポーカーフェイスが大切なんだぜ・・・!」


 凄まじい速さで突進してくるシムビコート。そこから放たれる突きは、『身体強化』でかなり上がっている俺の動体視力でも捉えるのが難しいほどであったが、それを俺は皮一枚で何とか回避する。


「ッぶねぇな!!」


 そこから俺も反撃開始。『ヴァリアブル』は俺自身の想像すらも超えるようなスピードを実現し、神速のラッシュがシムビコートの全身に浴びせられる。


「グゥゥゥアアアア!!!?」


「俺を攻撃する度に、お前は自分の首を絞めてんだよ・・・!」


 俺は細かく奴の周りを動き回り、全方向から攻撃を仕掛ける。奴に反撃の隙など与えない。願わくば何とかここでゼローグの肉体からこいつを引きずり出したい所ではあるが・・・・・


「ッォォォォオラアアアアアア!!!!!」


「グフッッ・・・・・ッ!!」


 渾身の右ストレートが奴の土手っ腹に突き刺さる。それによりシムビコートは呻き声を上げるが、その視線は俺は捉えられておらず、ただ・・・・・奥におり、こちらに向かってきている者に向けられていた。


「シコウノカラダ・・・メル・ハーレンツ・・・!!」


「はあっ!?なんでここに来たんだよ!?」


 確かに英鎧騎士団を包んでいた炎はとうの前に消えている。何か自分にできる事を見つけるため、俺とこいつが戦っているこの場所にへと訪れたのだろう。


「タク君・・!ボクも加勢するよ・・・!」


「駄目だ・・!!死ぬぞ・・・!!!」


「マズハ・・・キサマカラダァァアアア!!!!!」


 シムビコートは瞬時に剣を構え、メルにへと向かってしまった。


「・・・ッ!?速っ―――」


「シネェェェェェェ!!!!!」


 完全に不意を突かれてしまったメル。自分も何か役に立てればと思い駆け付けたこの二人の戦いの現場だったが、そこでようやく悟った。


 この戦いにおいて、自分は完全なる足手纏いになる程度の実力しか持ち合わせていないのだと。




 そして、メルの肩に、シムビコートの・・・団長のヴァルカヌスの剣の模造品が接触し、どんどん食い込んでいく。一瞬にも満たない時間でそれは斜めに落とされ、メルの体は―――――




「・・・・・やぁぁぁあああああっ!!!『硬直妨害(スターク・ジャミング)』!!!!!」


 そこでメルの魔法が発動。シムビコートの動きを一瞬だけ完全に停止させる。たかが一瞬。されど一瞬。その一瞬の隙は『ヴァリアブル』によって加速し続けているタクにしてみれば永久にも等しい時間であった。


「そろそろ限界だろうが!!!いい加減ゼローグからはなれろぉぉぉおおお!!!!!」


 俺は奴の側頭部をおもいっきり殴打する。普通の人間なら多分死ぬ威力だが、まぁこの国最強の騎士様だ。何とかなるだろ・・・!


「ぐあああああああ!!!!!」


 直後、ゼローグを覆っていた君の悪いオーラがようやく抜けているように見えた。そこからそれは空気中に留まり、その大きさをどんどん拡大していく。やがて人の姿となったそれはようやく重力の効果を受け始め、青スーツの魔人はその場に倒れる。


「・・・ゴフッ・・・なぜだ・・・なぜ・・斬っても死なんのだ・・・!?」


「この制服は、ちょっと特別製でね―――――」




 ―――――官邸から発つ少し前。


「団長の『ヴァルカヌスの剣』は少し特殊でね、『友に捧げる不殺の誓い(トリビュート・オース)』っていうスキル付与(エンチャント)が付いてるんだよ」


「トリビュ・・・なんて?」


「『友に捧げる不殺の誓い(トリビュート・オース)』まぁ簡単に言っちゃえば、自分の仲間と認識している相手には、己の斬撃が通ることがないってこと。そして、念には念をってことで、こっちの制服の方には、『模剣斬撃無効(ヴァルカヌ・スルー)』・・・ヴァルカヌスの剣による攻撃を一切通さない独自のオリジナルスキル付与(エンチャント)が組み込まれてるんだ」


「ほぉ・・・オリジナルのエンチャント・・・なんかロマンを感じる・・・!」


 オリジナル、ユニーク、唯一無二。オタクはそう言った言葉が大好きなのだ。自分だけの力という特別感。そしてそれが戦いにおいて輝く瞬間というものは、そう言った類の創作物を見ているこちらの胸を熱くする。


 というか、特定の武器を無効化するなど、一体どのような仕組みなのだろうか・・・?おそらく相当高度な技術か何かが必要だとは思うが・・・


「まぁ、とにかく・・・今団長の姿をしているシムビコートの斬撃は、タク君以外には効かないってことだね!」


「俺もそっちがいいんですけど・・・・・」


「まぁ・・・タクは斬られてもすぐ再生しちゃうし・・・」


「そもそも、スキル付与(エンチャント)はタクじゃ発動できないでしょ?その装備に付与したエンチャント代も馬鹿にならないんだから、その分使ってあげなくちゃ!」


「お前ら自分は斬撃が効かないからって好き勝手言いやがって・・・・・!!!」






「ほんと、キミが団長に乗り移ってくれたおかげで助かったよ・・・!普通なら、ボクとっくに死んでるだろうしね・・・!」


「いやほんと・・・心臓に悪いですよ・・・!」


「ごめんごめん・・・さて、もう何のためらいもいらないね・・・!タク君、全力でやっちゃって!!」


「了解!!」


「・・・貴様ら・・さっきから僕を差し置いて調子に乗りやがって・・・ッ!!!」


 ゼローグの身体へのダメージも少し心配だが、まずは目の前のクソガキを、心行くまでぶん殴る・・・・・!!!!!

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