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異世界武闘譚~英雄の雛の格闘冒険録~  作者: 瀧原リュウ
第四章 怪盗は黒き骸骨と共に
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#190 月光下の決戦その二十

「・・・ナゼダ・・ナゼ傀儡魂之(ソルジャーズ・)捨駒兵(マリオネット)ガ・・・砂岩巨蛇(サンドサーペント)ガ・・・タカガニンゲンゴトキニ・・・・・!!!」

「人間様なめんじゃねぇよ、変態予備軍が・・・!!!」


 シムビコートとの激闘の最中、離れたこの場所でもよく見えていた二体の砂岩巨蛇(サンドサーペント)。そして突如として英鎧騎士団を包み込んだ謎の炎が、見たところ全て消滅していた。

 おそらく、皆が勝ったのだろう。自らの命を燃やし、戦ったのだろう。


 ならば、俺もそれに応えなくてはならない。この勝負、絶対に負けるわけにはいかなくなってしまった。


 今この瞬間も、変わらぬ連撃のぶつけ合いが続いていた。シムビコートはドーピングで得た魔力で。俺は『ヴァリアブル』の効果で共に加速を続け、威力を高め、それでもなお決着は中々つかない。


「っらあっ!!」

「フンッ!!」


 放つ拳を、堅い何かが受け止める。先ほどまでなかった感触は、奴の体でも剣でもなく―――盾。


「そういえばそんなのあったな!!」


 ゼローグの言っていた・・・たしか・・ヘファイアの盾・・だったか・・・?あんまり覚えてはいないが、そんな感じの名前だったような気がする。


 思い出した。黒鋼の骸骨騎士の盾がそれで、今目の前でシムビコートが使っているのはそのレプリカ。


 とはいっても、これも模造品とは思えないほどガードが堅い・・・!『身体強化』に加えて加速力も乗っかっているというのに、それでも凹み一つ着かないのは驚きだ。


「魔力で覆って強度を高めて、そっから更にその材質の硬度すら上げてるとか、そんな感じか・・・!」


 奴から解説をもらったわけではないので何とも言えんが、たぶんファンタジー系の漫画でそんな感じの設定割とあるしそんな感じだろ多分。


 とまぁ、随分適当に言ってみたものの、おそらく合っているはずだ。この盾自体のスキル付与(エンチャント)・・・というのもあるだろうが、シムビコートの十八番はあくまでも魔法。何もしていないはずなどない。


「お前の仲間的な奴ら全員消えたし、お前も潔くゼローグの体から消えるってのはどうだ?」


「ドコマデモワタシヲオコラセレバキガスムンダ・・・ゼッタイニコロス・・・!!!」


「殺意高ぇぞ・・・俺もだけどな・・・!」


 同情などない。ひとまずぶん殴る・・・!


「この手の奴はなぁ・・・攻撃を与え続ければ耐えきれなくなって体から出てくるもんだろ!?」


 だって、漫画で読んだからな・・・!


「うっらああああ!!!!!」


 そっから加速加速加速・・・!!!テメェなんか置き去りにしてやるよクソガキがぁ!!


 さっきの倍・・・いや三倍の速さで奴をひたすら殴り続ける。ここまで来たら俺自身への体の負担もえげつないことになっているが、今そんなことを考えても意味がない・・・!とにかく腕が引きちぎれてでも動かし続ける・・・実際に捥げても構わん!どうせ生えてくるからな!!!


「グアッ・・・チョウシニノルナアアアアアア!!!!!」


 負けじとシムビコートも剣を振り続ける。剣速も怒りなのか強化なのか次第に早くなってきており、少し骨が折れる。


「おいおいそれ以上強さを増すな・・・!俺は安全にお前に勝ちたいんだよ・・・オラァ!」


「シネェ!!!!!」


「カハァッ・・・!」


 ダメだ完全にフラグだった・・・ほんの一瞬生まれた隙に、シムビコートの刃が俺の体を捉え、俺はそのまま上半身と下半身を断ち分けられてしまう。が・・・


「ゴフッ・・・そんなもんでっ・・止まるかよぉ!!」

 

 感覚が一瞬途切れた下半身のベルトを掴み、無理矢理断面にくっつける。『自己再生』の能力も相まって、それは瞬時に繋がり、一秒程度で感覚も元に戻る。装備に付与したスキルのおかげで、破れたり切れたりした服の一部分もきれいに元通りだ・・・!


「マジで感謝しねぇと……っな!!」

「コノ・・・バケモノガ・・・!!!!!」

「お前がそれ言うかよッ!!!」


 そんなお前に良い言葉を教えてやろう。ブーメランっていうんだけどなぁ!?


 いい加減この我慢比べにも飽きてきた。そろそろ趣向を変えて叩き潰す・・・!


「『地底之大王烏賊(インバーテ・ブレイト)』!!」


 瞬時に俺の腕とリンクする闘気によって生み出された架空の触手。『ヴァリアブル』はこの触手も体の一部だと判断し、闘気を巡らせる。つまり、先ほどよりもそのスピードも破壊力も格段に上ということだ。


「ギリ自分の射程外からハメ技撃たれるのムカつくよな・・・!」


「グゥゥゥ・・・!!!」


 繰り出されるは鞭のような触手による連打の嵐。剣の射程外でありながらも、奴に歩を進める隙など一切与えない・・・!俺は体を限界以上で動かし、ただ打ち込み続けた。


「・・ッ!ナメルナヨ・・・!!!ハアッ!!」


 シムビコートが無理矢理剣を振った。それによって俺の『地底之大王烏賊(インバーテ・ブレイト)』が、なんと斬られた・・・!


「闘気って斬れんのかよ・・・!?」

「マホウガキレルノダ・・・トウゼンノコトデアロウ・・・!」

「いや理由になってねぇし。」


 魔法と闘気って似てるようで違うだろ・・・こいつ、薬のせいで少しずつ脳がやられていっているのか?


「デハ・・・ソロソロシヌガイイ・・・・・」

「ん・・・?ッ!?」


 突如その場に止まったシムビコートが、手を上に掲げ、その掌を叩く構えを取った。


 それはレリルドから聞いた、シムビコートによる人の魂を奪う魔法。その発動モーション。それにより、英鎧騎士団もかなりの人数が犠牲となってしまった。そしてそれを今、俺だけに対して使おうとしている。


 奴が一回手を叩くだけで、全てが終わってしまう。ここまで奴を追い詰めた俺の奮闘も、命を賭けて戦った皆の頑張りも・・・・・


「・・・・・ハッタリだな。」

「!?」


 俺は奴が手を叩くと同時に、奴の顔面に一発良いのを叩き込んでやった。吹っ飛んだ奴に追従するように俺自身も加速し、更に追撃を三十発ほどお見舞いしてやった。


 シムビコートはそのまま最終的に吹っ飛ばされ、ズザザァァァっと地面を滑る。やがて足場の悪い砂の地面から起き上がったシムビコートは、ただ無言でこちらを睨みつけながら立っている。それが意味するのはすなわち・・・・・完全なる図星。


「俺が何も考えずに、何の仮説も立てずにただ突っ込んでいるだけに見えたか?」

「・・・・・・・」


 まぁ、実際そうなんだけど。さぁ・・・・・


「お前・・・・・今それ使えねぇだろ。」


 奴の恐るべき魔法。その種明かしといこうか―――――

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